tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ドイツ、ルフトハンザ航空でストライキか?

2022年07月27日 20時59分52秒 | 労働問題
ヨーロッパでは最も労使関係が安定していて、失業率は低く、インフレ率も低いドイツで、ルフトハンザ航空の地上職員の組合が、27日、28日とストに入ると発表したというニュースをネットで見てビックリしました。

結果についての状況はまだ何も入って来てはいませんが、余りこじれずに解決してほしいものだと思っています。

ヨーロッパも昔とは変わったのかもしれませんし、ロシアのウクライナ侵攻問題、関連してエネルギー確保の問題などいろいろあるのかもしれませんが、どんなことが直接の原因になっているのか拾ってみました。

その結果、今、アメリカやヨーロッパで、日本では起きないような高いインフレが起きるのかという事がよく解るような状況がそのまま報道されていますので、このブログでも書いてきた「こうなるとインフレが高くなる」という事の具体的な説明にもなるかと思い、取り上げてみることにしました。

報道によると労使交渉がストライキ宣言に発展した経緯はこんな感じです。
問題の焦点はユーロ圏における物価上昇に対して労働側が賃金引き上げを要求しているというのが原点のようです。

インフレ進行の中で、ルフトハンザ・グループの経営側の賃上げ提示は、基本給上昇で、この7月1日から150ユーロ、さらに来年1月から100ユーロの上昇、加えて、来年7月から、事業の発展に応じて2%の上昇を追加するというところまで回答しているとのことです。

この合計で、今年の7月からの1年間で、基本給が10~11%の上昇になるというかなり高い引き上げ率になるとのことです。

一方、5月のドイツの物価上昇率は8.7%という事で、追加の2%をどう判断するかですが、物価上昇率をカバーするかどうかは微妙なところでしょう。

組合サイドから見れば、物価上昇分はカバーしてほしいし、生産性向上分あるいは実質経済成長分は賃上げしてほしいという事でしょう。

経営側とすれば、生産性向上分あるいは実質経済成長分は賃上げするとして、物価上昇分は、今迄の物価上昇分の中には賃金上昇によるコストアップ分もあるのだから、ある程度面倒は見ても全部カバーする事は合理的でないという論理でしょう。

こうしたせめぎ合いの中で、物価上昇の大部分をカバーするような賃上げをすれば、経済成長率が低い現状では、賃上げの多くの部分が賃金コストアップになってさらに物価を押し上げ、翌年は賃金コストアップ分で起きたインフレを、また賃上げでカバーせよという賃上げ要求になって、結果は賃金・物価のスパイラルになり、インフレは止まらなくなるというのが経済理論です。

そのインフレを金融引き締めで止めようとすれば、それは実質経済成長率を押し下げ、それでインフレは加速するという「低成長下でインフレ昂進」の状態になるのが経済の原則です。

ご存知のように、この現象が「スタグフレーション」で、嘗て、1970年代のオイルショックが原因で欧米先進国を一様に苦しめることになって先進国病とも言われた現象です。

今、アメリカでは、パウエルFRB議長が、金融引き締めで急激なインフレを抑えようとしているのですが、当然「スタグフレーション招来」を危惧する声が起きています。

今回の原油価格上昇で、嘗ての石油危機とまた同じことを繰り返す愚は避けるべきと思いますが、ルフトハンザの労使交渉も、これが他地域、他産業に波及すれば、その可能性はないとは言えません。

アメリカ、ヨーロッパの労使関係からは当分目が離せないような気がします。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。