tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融業と付加価値:2 マネー経済の行方は?

2021年03月01日 17時31分01秒 | 経済
金融業と付加価値:2 マネー経済の行方は?
 例えば戦後の日本を考えてみましょう。あらゆる物資が足りなくて、その生産が必要でした。多くの人が中小企業を起こし、銀行から金を借りて設備を整え、生産を始めました。10年後には「もはや戦後ではない」という言葉が流行り、日本は戦後の高成長の時代に入りました。

 技術革新に乗って、家庭電化製品から自動車まで、需要に追いつく生産のために企業は銀行から金を借り生産設備を増強してきました。製品の多くは輸出もされました。
 
 しかし次第に製品も飽和状態になり、輸出には海外の圧力もあり、安定成長時代に入ると生産増強のための資金需要は減り、企業は余裕資金を持つようになり、銀行から金を借りる必要は減少、資本蓄積が進み、カネ余りの時代に入ります。

 金融界のスローガンは「銀行よさようなら、証券よこんにちは」といったものになってきました。

 この辺りから、金融業界の変質が始まるのです。
 銀行が生産設備に融資し、生産が増え、経済(GDP)が成長し、経済成長の成果から金利を払い利益を出し、賃金を引き上げるという、実体経済の成長、付加価値の増加がみんなの収入の原資となる段階でした。
 銀行が融資という活動で付加価値生産増(経済成長)に貢献した段階です。

 ところが融資の対象が減り、おカネは証券会社や投資銀行に流れ、金融業自体も、また融資先も、実体経済の生産活動ではなく、証券投資で利ザヤを稼ぐような活動が多くなります。
 そして金融業の資金活用は キャピタルゲイン目指すことに変わってくるのです。

 こうして金融業は付加価値生産から離れて、お金の移動(富の異動)が主な仕事になるのです。此の段階が金融資本主義とかマネー経済とか言われる段階で、金融業は付加価値を作らなくなるのです。

 世界の現実の動きを見て来ますと、こうした動きをリードしたのはアメリカで、実体経済の弱体化で貿易収支が赤字になり、その赤字をマネー収支(資本収支)で埋めようとして金融工学などを発達させました。

 例えば、信用力の弱い証券を高い価格で海外に売り、結局その価格が暴落して、それを買った世界中の金融機関や個人が大損をするというリーマンショックが起きました。
 その結果、世界の実体経済は深刻な影響を受け、実体経済(GDP)はマイナスになりました。 

 金融業は金融工学の失敗で、実体経済の付加価値生産のシステムを壊し世界経済をマイナス成長に追い込むような事もしてきたのです。

 それが世界恐慌につながるのを防止しようとする政策がアメリカのゼロ金利政策、日本の異次元金融緩和政策です。
 然しそれは更なるマネー過剰を齎し、先日のアメリカのロビンフッド事件の様なマネーの異常な活動につながっているのでしょう。

 歴史的に見れば、貨幣を発明し、金融業を作り上げ、人類社会の豊かさ、快適さの実現に多大な貢献をしてきた人類は、蓄積したおカネ、それを扱う金融業が付加価値生産から離れていくのに従って、おカネというものをどう活用して行ったら良いか迷ってしまっているという事になってしまったようです。

 こうした金融業の在り方の変化(進化?劣化?暴走?)をどうコントロールするかは、これからの人類社会に与えられた「大きな課題」ではないかという感じがするところです。
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追記:マネーの活動、金融業の活動を、実体経済に即したものだけに限定していくという考え方は、G7、G20などでも、特にリーマンショック以降、いつも出されているところですが。
さて・・・