司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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合併による移転登記がされている根抵当権に共同担保の追加設定をする場合の根抵当権者の表示について(2)

2014-06-11 13:07:36 | 不動産登記法その他
登記研究第794号(平成26年4月号)に,質疑応答「合併による移転登記がされている根抵当権に共同担保の追加設定をする場合の根抵当権者の表示について」がある。

【要旨】
 株式会社A銀行が株式会社B銀行を吸収合併し,株式会社B銀行が有していた根抵当権について合併による根抵当権の移転の登記をした後に,同一の被担保債権の範囲で他の不動産について当該根抵当権の追加担保設定の登記をする場合の根抵当権者の表示は,「(何市何町何番地株式会社B銀行(平成○○年○○月○○日合併)の承継会社)何市何町何番地株式会社A銀行」とするのが適当である。


 追加設定の必要があるのであれば,その時点における被担保債権の範囲を「債権の範囲」の部分に明示すべきであろう。

【合併前】
銀行取引,手形債権,小切手債権

【合併後】
平成○○年○○月○○日合併により株式会社B銀行から承継した債権
平成○○年○○月○○日以後の銀行取引,手形債権,小切手債権

 実体上,被担保債権の範囲が上記のように変容しているのであれば,追加設定の際には,形式的ではあるが,原物件についてそのように債権の範囲の変更契約及びその登記をした上で,追加設定物件について追加設定契約及びその登記をすべきであろう。

 変更契約をするのであるから,ニーズに応じて,「平成○○年○○月○○日以後の銀行取引,手形債権,小切手債権」の部分は,単に「銀行取引,手形債権,小切手債権」として,合併前に発生していた株式会社A銀行の債務者に対する債権も担保されるようにすることも可能である。

 追加設定&抹消が繰り返される場合もあり,根抵当権の表示において原根抵当権が株式会社B銀行から承継されたものであることを明示する意味はなく,被担保債権の範囲が明らかにされるのが理に適った取扱いであるはずである。
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