tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

風の記憶:北アルプスの風(2)

2008-09-27 22:32:27 | プチ放浪 山道編

 
 

【撮影地】富山県中新川郡立山町立山峰1(室堂平)(2008.9月撮影)
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室堂平の日の出は遅い。山小屋の人によれば、この日の富山の日の出は5時30分なのだが、山荘の東にそびえる立山連峰に隠れて、実際に太陽が顔を出すのは6時30分ごろとのこと。
5時ごろ、隣の男性の立てる物音で目をさました私は、布団から抜け出して窓の外を見た。空は白み始めていた。だが、山は雲に隠れていて、天気は予報どおり悪いようだ。同室のもう一人の方を起こさないように布団をたたんでいたら、寝ていた彼も起き出して互いに挨拶をかわした。とりあえずパジャマがわりのジャージを着替えて、6時からの朝食前に山小屋の近くを散歩することに。
室堂山荘の外に出ると、朝の空気が冷たかった。あたりはすっかり明るくなっていて、もうすでに何人もの登山客たちが立山連峰縦走を目指して登山道に出ていた。立山連峰の中腹あたりの稜線が影のように見えて、そしてその稜線を這うように、浄土山方面から富士の折立、大汝山(おおなんじ)、雄山(おやま)方面へ雲が流れていく。かろうじて、室堂山の頂が見えて、そこに朝日が弱く反射していた。
<山の中腹まで登ってみよう>山の稜線から日の出を見ることができるかもしれないと、私はだれもいない室堂山への登山道を登り始めた。立山連峰につながる雄山方面へのメインの登山道と違って、こちらに向かう人はだれもいない。

室堂山へ向かうゆるやかな道をのんびり散歩していると、山の中腹辺りで登山道を降りてきた若い女性とすれ違った。まだ10代であろう彼女は、ペパーミントグリーンのトレーナーを着て、手にはペットボトル、そしてヘッドフォンをつけていた。いたって、軽装。
「おはようございます」
彼女の弾んだ声に、妖精と出会ったような気がして私はうれしくなった。彼女も朝日に誘われて、この道を散策していたのだろう。
その後、だれともすれ違うことなく、室堂山への登山道をひとりでしばらく歩く。朝の至福のひととき。限りなく静かで、本場アルプスの高原のような贅沢な空間を独り占め。
やがて、平坦地になって室堂が隠れると、整備された遊歩道はいきなり山道らしくなり、あたりは険しい高山の雰囲気。この景観の激変に戸惑う。ただし、ここまでの室堂平への展望は圧巻だった。緑のじゅうたんに被われた立山カルデラが眼下に広がり、見飽きることがなかった。ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイ、シナノキンバイ、チングルマ、コイワカガミ、ツガザクラなどがところどころに咲いていた。


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