tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

小さい秋を見つけに(4)

2008-09-09 22:01:15 | プチ放浪 山道編

 
 

【撮影地】静岡県富士宮市粟倉地先(富士山)(2008.8月撮影)
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初めて登った富士山。ぼくはその頂上で超常現象を体験した。

河口湖駅19時45分発、五合目20時40分着の登山バス。バス停で、大きなリュックを抱えた大勢の外国人旅行者がバスを待っていた。防寒のためレインウェアーに着替えたぼくは、外国人たちとバスに乗り込む。1時間弱のバスの車内には、いろいろな国の言葉が聞こえてくる。たぶん、すぐ後ろの若い女性二人連れはフランスからなのだろう。まったく言葉がわからない。富士山は、ある意味でバベルの塔のようだ。
終点に到着し、ワンマンバスの料金を払う際に、目の前のドイツの夫婦が困った様子を見せた。
どうやら2人で往復チケットを購入した際に4000円払ったにもかかわらず、一人分の往復切符(2000円)しか発行してもらえなかったらしい。
一生懸命、事情を説明するドイツ人の男の英語がわからずに、バスの運転手がぼくに助けを求めてきた。そこで、ドイツの男の言い分を翻訳してあげる。しかし、列の後ろのせっかちな日本人登山者が、料金を払うのにつかえているから早くしろとブーイング。結局、ドイツ人夫婦とともにバスを飛び降りて、一目散に逃避。こうして、とりあえずは、彼らのトラブルを回避。しかし、気の毒だが、彼らの手にはあと1枚の復路のチケットしか残っておらず、帰りにはドライバーとまたひと悶着起こすのは必須。だが、たぶん、バスの運転手は英語が苦手のようだから、外国語でまくし立てればなんとかなりそうな気がする。

まるで都会の歓楽街のように灯りが輝く5合目のみやげ物店をあとにして、ぼくは漆黒の闇の中、樹海の中にあるはずの登山道に向かって一人で歩き出した。本当は、どっちの方角に進んでいいものやら、まったくわからなかったのだが、みやげ物を物色している大勢の外国人たちに聞くのも日本人としてプライドが許さない。
「ヘイ、そこの外人。・・・・・・富士山ってどっちっすか?」なんて聞けるわけない。
目の前の暗闇の中を、4つの人影が歩いている。道はジャリ道だが、車がすれ違えるほどの広さで、傾斜も小さい。しかも、この歩き始めにはだらだらの下り坂が続く。これでぼくは、富士山なんて楽勝だと、日本一の山をなめてしまったのだった。
2つのライトをつけている前の4人組との距離を詰めたら、なんと彼らは急に止まって振り返る。彼らと挨拶をかわしたら、「先にどうぞ」と道を譲られた。どうやら、彼らもこの道が果たして富士山の山頂に続いているのか不安のようだった。
東京から来たという、20代のカップル2組。男は石井君と北尾君。市場に勤めているということなのだが、なかなかの好青年たちだった。全員が、富士山河口湖ルートは始めてということで、一緒に登ることに。振り返ると、はるかかなたに、ちらほらと登山者のランプが揺れて見える。どうやら、道は間違っていないようだ。
「山は良く登るんですか?」
と聞いてきた北尾君の彼女。
「気圧になれるため、今朝、八方に行ってきますた!」
どうやら、ぼくのこの返事が彼らに変な誤解を招いたようだ。富士山に登る、その前に、八方で体を慣らしてる・・・・・・すげーベテラン。
こう思ったかどうかは知らないが。
30分ほど歩いて、ぼくは彼らこそがとんでもない山のベテランなんじゃないかと思い始めていた。というのも、装備もそれなりに立派で、歩くペースが結構速いのだ。<こいつら、普段、山を駆け足で登っているグループか?>
1時間ほど歩いて、かなり高かったテンションが落ちはじめた最初の休憩で、この誤解は解けた。どうやら、彼らは山道を歩くペースがわからないらしい。


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