tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

雲見 唐人お吉

2008-11-07 23:43:00 | プチ放浪 海沿い編

 

先日の田子でのダイビング2日目。欲張って4本潜ったぼくは、すでにダイビングを終えてクラブに戻ったゲストたちとは別に、一緒に潜ってくれたイントラと2人で下田に帰ることになった。
あたりには夕闇が迫り、昼間はあんなに賑わいを見せた田子の港には、もう、ほとんど人影が失せて閑散としていた。秋の風に吹かれて、港に係留された漁船が波間に静かに揺れていた。
イントラの彼女は、ダブルキャブトラックの長いホイールベースが苦手と言いながら、器用に車を運転していく。連休中日の日曜日の夕刻。下田に向かう136号線。家路を急ぐ車が時折、猛スピードでぼくらの乗ったダブルキャブを追い越していった。
ワインディングロードのカーブから、夜の帳に包まれた断崖と海が見える。眼下に白い波と群青色の海が広がっていた。

彼女は、例によって好きな音楽カセットがあったらどうぞと勧めてくれる。この時間、このシチュエーションでJAZZというのは反則技なのだが、以前、トシ君の運転で聞いたテープを選び出す。ダブルキャブの室内に、静かに流れ出す心地よいコンテンポラリージャズの曲。誰の演奏かはわからないが、スタンダードの名曲、フライミー・トゥ・ザ・ムーンだ。空には、新月を経て細く輝く三日月。
空腹でも口数が多くなるという、いつもおしゃべりな彼女が、音楽に耳を傾けて沈黙しがちになる。これで、ぼくが車を運転していたのなら、ぼくは間違いなく確信犯だ。

松崎街道を右折して414号線。下田湾に注ぐ稲生沢川沿に走る道路。その途中にお吉ケ淵がある。下田奉行の命により米総領事ハリスの元に奉公に出て、恐ろしい人喰い赤鬼の妾ということで、生涯、ラシャメンとさげすまれた薄幸の美女のゆかりの場所だ。

「唐人お吉って知ってます?」
ジャズの調べに乗せて、ぼくは彼女にたずねた。
「トウジン?オキチ?」
「そう、下田にハリスが来たでしょ。そのころの話」
「江戸時代の末期ね」
「っていうか、明治時代の初め・・・・・・」
「・・・・・・」
「<必ず戻ってくるから>と甘い約束をして、ハリスはお吉の元を去ったけど、もちろん、帰ってくる気などさらさらなかったんだ。
その約束を信じるお吉さん。彼女のおなかには、ハリスの子どもが宿っていた。
って、あれ?なんか話が違うくね?」
「・・・・・・」
「最後は、お吉は身投げして死んじゃうんだけど、ハリスがオーストラリアに遺灰を持っていて・・・・・・」
「それって、セカチュウじゃないですか?見てないけど」
「そう、松崎町でロケがあったんだよね?」

ということで、春には桜並木がきれいという陽が落ちた松崎街道を、心地よいジャズの調べを聴きながらのドライブ。
唐人お吉のちゃんとした話は、次回のドライブまでの宿題ということで、下田に到着。
・・・・・・ちゃんとした唐人お吉の記事は明日へ続く。


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