◆前号のブログの冒頭に「2019年5月19日、」と書きましたが、「2019年5月15日、」の誤りでした。訂正いたします。
今日は2019年6月3日、あと2日で24節季の「芒種(ぼうしゅ)」(雑穀の種まきの時期。梅雨め。)」。そしてあと1日で 中国で「中国の運命を左右した歴史的大事件」が起きて30年が経過することとなる。そして、それは現代中国において「最大のタブー」とされ、多くの中国国民はその歴史的事実を知らされることもない。まさに、政治権力によって「闇に葬られた歴史的出来事」となっており、今日 その日の日付さえ口にすることさえ「タブー」となっている。中国の大学生たちの多くも、この事件を知らない。
30周年を前にして、アメリカ政府がこの事件について中国政府を最近は強く批判していることもあり、1か月前あたりから中国政府は「この事件に関する厳戒」をひいており、もちろんブログなどでそのことに触れるのも危険だ。その日が近くなり、中国の鉄道列車番号で「D〇9〇4号」という列車の運休が急きょ決定したとも伝えられる。
中国北京の特派員として家族と共に赴任していたNHK特派員が、昨日のNHK番組「これでわかった 世界の今」に解説者として出演していて、「私の小学6年生の娘が 北京にある日本人学校に行っていて、最近、北京の"〇〇門広場"周辺に遠足に行きました。引率していた担任の日本人教員は、児童の先頭にたち"学年と組"を表す「6-〇」というプラカードを掲げていたら、公安警備にしよっぴかれて取り調べを受けました。解放されるのに時間がかかったため、クラスの集合写真には間に合わなかったということがありました。」と語っていた。
最近の中国の状況から考えて、この事件に関するブログ記事を中国国内で書くことは危険だ。だが「民主主義」というものが必要なのかどうか!?を考えるひとつとして次の中国と日本での できごとのことを記したい。
日本のテレビの報道番組で「学校給食で"カビ食材"」というニュースが伝えられたのは3月中旬だった。報道によると、学校の給食で使われていたのは、カビだらけの食材。中国四川省成都市の小中一貫校で、抗議する保護者たち。そして、警察が来て、保護者12人が逮捕拘束されるといった記事だった。問題となった学校は、四川省の省都・成都市の市直轄の第七実験中学小学校。全寮制のため(週末には自宅に帰る人が多い)、食事は3食とも給食となっていたようだった。
テレビ報道で「カビだらけ食材に保護者怒り!—食の安全強化のはずが」「私たちの子供は、5・6年間もこんなものを食べていたんだ!」「私の娘はこの前 学校で吐いたのよ!うちの母が連れて帰ったの。何度も吐いたの!」「今月12日、中学校食堂で保護者が腐った食材を発見」「ネットで拡散」「警察が出動、一部の保護者が殴られもした、一体どうゆうこと!」「今必要なのは謝罪だ!」「当局はこのネットを即削除、なぜ削除」「一時保護者12人連行される」などのテレップが流されていた。また、その報道では、「お粥の中にたくさん腐った肉が入っていた。ゾンビ肉だよ、食べたい?」という生徒の映像と話もテレップで流されていた。
事件の発端は3月12日に中国のSNS「微博」に投稿されたカビの生えた食材の写真とコメントだった。コメントには「成都市の直轄学校だろう。成都市は学校の食材を調べてくれ」「前学期から子供たちは不調を訴えていたのに学校は改善してくれなかった」などと書かれていた。このSNSは保護者たちに広まり、多くの保護者が集まり抗議行動となっていった。投稿されたSNSは当局から即座に削除されたようだが。
そして、市や政府判断により駆けつけた警察隊は唐辛子スプレーでデモを鎮圧した。抗議を行っていた保護者のうちの12人が逮捕拘束される事態となったが、その後 長期勾留とはならず解放されたのかと思う。この事件は、中国では当初は全くインターネット記事でも報道されなかった。もちろんテレビ報道も。
しかしその後、このSNSでの告発は「フェイクニュース」であり、デマを拡散した容疑者を逮捕したとして、初めて当局は報道各局に報道を行わせた。そしてこの事件は「フェイクニュースにだまされた保護者たち」という印象操作を当局が行って幕引きがおこなわれたようだ。多く保護者たちは、「デマ犯の自供は、警察権力の厳しい尋問などにより、あの手この手で嘘の自供をさせたもの」と思っているとも伝えられていた。
この学校は、2003年に「冠城集団(グループ)」の出資によって創立された私立学校で、年間学費はかなり高額で、小中一貫のエリート学校とされる。この集団と成都市共産党委員会は利害関係があり、学校側と市側が共謀して事実隠蔽や「フェイニュース捏造」をしているのではないかとの疑いは消えないようだ。
日本のテレビ報道番組ではこの事件について、「3月5日から開催の中国全国人民代表者会」「李克強首相—食品・医薬品の安全監督管理を強化と報告」「(全人代の)期間中に食品の安全に関わる問題がクローズアップされることを防ぐ」「そうすると特に全人代とかあるいは党の大きな会議の期間中は」などのテレップ。報道では、笹川平和財団の小原凡司上席研究員が、「中国では政府の権威を失墜されることになりかねない"社会問題化しそうな問題"はすぐに当局によって削除される」とコメントしていた。
このような社会問題が起きた場合、新聞社やテレビ報道局などの報道機関は「社会の木鐸(ぼくたく)」としての機能を果たすべきものだが、中国ではほぼ100%「木鐸」機能はなく、あらゆることが政府への「許可」「忖度(そんたく)」を求められていてる。また、2015年には人権派弁護士300人に上る拘束事件がおき、弁護士資格剥奪処置なども行われた中国。このような社会問題にかかわろうとする弁護士も限りなく少なくなった。
私がこの6年間で教えた実数1000人あまりの学生たちは、「選挙」というものの経験は皆無だ。大学の学級委員の選挙もなく、学級委員は大学側から指名される。いわゆる選挙などにより「社会や身近な場所におけるさまざまなことに、意志や思いを表現する方法としての選挙権という概念」すら学生には育っていない中国。
「民主主義」といういうものは必要なのだろう!?「民主主義」、国民による選挙によって指導者を選ぶ大統領制」や「議院内閣制」は人々の生活にとって必要なのだろうか!? 中国のような「一党支配」の方が国の方針の一貫性や国の発展のためには有効なのではないかと考えさせられることも多い昨今の世界。EU離脱を巡るイギリス政治の長期混乱、ヨーロッパでのポピュリズム政党の台頭、衆愚政治ともいえる状況が「民主主義政治国家」では頻発している。このような「民主主義政治」の国々の政治的混乱状況は、中国のテレビ報道では頻繁に繰り返し報道されている。しかし、‥‥‥。
2019年4月12日付の日本のインターネット記事に「元中国人・李小牧さんは日本の民主主義に夢を見る―歌舞伎町案内人が2度目の選挙に挑む理由」と題された記事があった。その記事の概要は次のようだった。
李小牧さんは、幼いころからバレーダンサーとして頭角を現したが、父親の政治活動が批判対象となり、名門ダンサーの登龍門「北京舞踏学院」への入学・入団が立ち消えになるなど、共産党政治に翻弄される人生を歩んできた。
当時の最先端のファッションなどを学ぶために1988年に留学生として来日した李さん。片言の日本語でなんとか見つけたアルバイトが、東京新宿歌舞伎町のラブホテルの清掃だった。ここから歌舞伎町とのつながりが生まれる。テッシュ配りのバイトのかたわら、中華圏の観光客にストリップ劇場や「夜の店」などを案内する仕事も始めた。李さんが案内するのは、自腹をきって「ぼったくり」がないことを確認した店。その後 多くの観光客から優良ガイドと認められ「歌舞伎町案内人」の地位を確立した人で、新宿では有名な中国人となった。
年月を経て、歌舞伎町での食堂(レストラン)の開業にこぎつけるなど、日本で安定した生活基盤を築き、胸に湧きあがったのは、一党支配の中国にはない「民主主義」への憧れだった。「中国では選挙なんてなかったです。やはり投票をしたいですし、選挙に出てみたかったんです。歌舞伎町案内人として、風俗や歓楽街の街で働いていた人間が政治の道を志せるのは何よりも素晴らしいこと。人口14億人の"選挙のない国"へのメッセージを送ることにもなります」と李さんは語る。
李さんは2015年2月に、祖国・中国から日本に帰化。名前は李小牧(リ・シャオム)から李小牧(り・こまき)に変えた。2カ月後の統一地方選、新宿区議会議員選挙にチャレンジした。1018票を獲得したが、当選ラインには400票ほど届かず落選した。あれから4年、この春、李さんは再び民主主義のステージに立つ。新宿区議選に2度目の立候補をすることを決めたのだ。この区議選は4月14日告示、21日に投開票される。
「元中国人」が民主主義に参加することが、ひとつのメッセージになると考えている李さんだ。
※記事の概要はこのような内容だった。2015年の9月から、中国国内では「Yahoo Japan!」の「検索機能」がブロック(閉鎖)されて使えなくなった。最近では、世界的な検索会社「ウッディベキア」の検索も中国ではブロックされた。このため、李さんの選挙結果がどうなったのかを中国で調べることができず、私は結果をまだ知らない。当選していればいいのだがと思う。
「民主主義」とは人間生活にとって重要なものなのかどうか?いろいろな考えはあるだろう。「腐肉給食事件の顛末」と「区議選に立候補した李さんのこと」は、中国という国の現在について色々なことを考えさせられる出来事であり、また 一人の人である。
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