MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

日本語は効率的な言語か

2009年01月22日 | Weblog
■「日本語の語順は、人間が全体として事態を理解する過程における高い効率性を実現するものだと言うことができます。」「日本語とは、結局のところ、音、文字、単語、文法、語順というすべての側面について、「効率的な」言語なのだと考えることができるでしょう。」「あらゆる側面で現実に効率性を実現している日本語は、人間の言語がもつ本質を追究する上での、一つの重要なモデルとなりうるものではないかと思います。」
…というようなところを立ち読みしたので、町田健『日本語の正体』(研究社)を買ってみた。期待はしていなかったが、予想通りというか、予想以上だった。たとえば次のような記述を理解できる人がいるだろうか。
「関係代名詞を使う英語のような言語で、関係節が名詞に後続する規則が選択されているのは、それが理解の過程における効率性を高めるからだとかんがえることができます。
 日本語には、英語のような関係代名詞がありません。関係代名詞がない言語の場合には、関係代名詞をもつ言語とは逆に、関係節が名詞に先行する方が理解の効率性が高いのではないかとかんがえられます。」(p.176)
語順の(理解の上での)効率性と言えば、普通は実証データを期待するがそれはなく、理論的な解明を進めようとしているようだ。しかしそれにしては上に挙げたように論理的な説得力に著しく欠ける。(もっと挙げてもいいのだが必要ないだろう。)巻末にある参考文献でこの問題に直接関係すると思われるのはHawkins, J. A. (1994) A performace theory of order and consituency (Cambridge Universiry Press)のみ。それも本文中に指示はない。普通の叙述であれば先行研究を批判的に検討して自説を位置づけるという作業があるはずだが、それもない。まさか主要部駆動型parsingと漸進的parsingの理論的対立を知らないはずはないと思うが。

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