MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

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センター試験英語リスニング対策

2005年02月28日 | 大学院
大学院入試の口頭試問終了。ところで日経新聞が先週の金曜日から大学院の問題点についてのシリーズを連載しているので読んでみた。理系のことはよくわからないので触れないが、法科大学院ではバブルが崩壊、公共政策系なども厳しいようで、国立でも二次募集を余儀なくされているところがあるという。このシリーズ、今後は社会人のための大学院や専門職大学院も扱うと思うので注目している。

同僚のAdair Linn Nagata先生から IHI Bulletin Vol. 24 No.2 (2004)を頂く。この号には Edward Seidensticker の On Translation という昨年10月に行われた講演の記録が掲載されている。この雑誌は国際文化会館が発行しているもので、入手可能です。

『英語教育』3月号が「リスニング力をつけよう!」という特集なので買ってみた。玉井さんも「シャドーイングは万能薬なのか」という論考を寄せていて、全文が「英語教育ニュース」のサイトで読める。この号には田中さんの『英語リスニングの「基礎トレ」』(講談社インターナショナル)の紹介文もある。

センター試験のリスニング問題への対策の記事もあるのだが、その内容には少し疑問がある。dictation, mumbling, shadowing,音に全神経を集中させ10回、20回と聞かせる、英語の文字や日本語訳に頼らず英語の音とリズムをそのまま感じとらせる、メモをとる、推測しながら能動的に聴く、というものだが、総花的で具体性に欠けると思う。ここではメモ取りだけを取り上げるが、メモを取ると言っても実際に試行テストを聴いてみれば分かるが、最後の問題はスピードも結構あるので平均的な受験生にただメモを取れというだけでは効果はないのではないか。先日の講演では実際に第4問Bを流して通訳ノートの形式でノートテイキングをやってみたが、僕でもあまりノートが取れなかったぐらいだ。まして受験生が「聞きながら」+「メモを取る」という二重作業をマスターできるかどうかは疑わしい。メモ取りに気を取られて聴く方がおろそかになってしまわないか。講演では僕は「これは使えないので、数字や重要だと思う言葉だけメモするように」と薦めた。ともあれ、センター試験にリスニングが導入されることになって英語教育の世界でもようやくリスニングへの取り組みが始まったのはいいことなのだろう。

Hirschの読解力向上論

2005年02月27日 | Weblog
面接試験(口頭試問)の最中なのだが、なぜか時間ができたので書いておきます。

あのE.D. Hirsch, Jr.が面白いエッセーを書いている。
Reading Comprehension Requires Knowledge - of Words and the World (American Educators, Spring 2003)
アメリカではthe Fourth-Grade Slumpという現象があるという。これは3年生から4年生になると、低所得層の生徒の読解力が急に低下することをいう。Hirschはこの問題に対応するためにはこれまでのようなformal comprehension strategies、つまり予想したり、分類したり、メインアイディアを探すといった方略では不十分であり、語彙と(背景)知識の増強をとりいれるべきだと主張している。これは有名なCultural Literacy以来の主張だが、面白いのはその裏付けのために援用されている認知心理学的な議論だ。

 彼は生徒たちの読解力を向上させるためには少なくとも3つの原則があると言う。一つは「流暢さ」fluencyである。(読みが)流暢であれば生徒は理解に集中できる。第二は「幅広い語彙力」。語彙力は理解を促進しさらなる学習を容易にする。第三は「ある分野の知識」domain knowledgeである。これが流暢さを向上させ、語彙を拡張し、より深い理解を可能にする。結局三番目のdomain knowledgeが論理的にも時間的にも最初に来ることになる。もちろんいきなり知識を与えるわけではなく、initial decoding instruction(文法的説明のことだろう)が必要になる。

 彼のこの議論の基礎になっている主要な概念はワーキング・メモリと「自動化」である。知識→語彙→流暢さという流れで、最後の流暢さとは「自動化」とほぼ同義になっている。玉井さんのシャドーイング研究のキーである構音速度仮説も一種の自動化と考えられなくもないから、このあたりに何か面白い可能性があるような気がする。

 Hirschの議論に問題がないわけではない。一つは読解と聴解の関係がよく分からないこと、もう一つは依拠している知見がやや古い(たとえばMillerのMagincal Number Sevenなどをまだ使っている)ことである。しかしこれは大きな瑕疵とは言えない。このエッセーはもちろんアメリカの小学生のことを書いているのだが、第二言語習得にも参考になると思う。

翻訳論の新刊が出るようだ。
安西徹雄・井上健・小林章夫(編)『翻訳を学ぶ人のために』(世界思想社)
柳父章も1章書いている。

Monterey国際会議 It's deja vu all over again.

2005年02月22日 | Weblog
今年の9月9日から11日までMIIS創立50周年(翻訳通訳大学院創設35周年)記念の国際会議があります。大要は以下の通り。

INTERNATIONAL CONFERENCE ON TRANSLATION AND INTERPRETATION
In celebration of the 50th Anniversary of the Monterey Institute of International Studies and 35th Anniversary of the Graduate School of Translation and Interpretation

THEME: Professional Education of 21st Century Translators and Interpreters

TOPICS INCLUDE:
Literary translation
Technical translation
Legal translation and court interpreting
Conference interpretation
Community interpretation
Technologies in translation
Academic and professional theory
Challenges faced by T&I consumers
The role of professional organizations
Challenges for translators and interpreters in today's world
Innovations in translation and interpretation practice
Innovations in teaching translation and interpretation

PLENARY SPEAKERS:
Daniel Gile, Universite Lumiere, Lyon, France
Theo Hermans, University College London, UK
Barbara Moser-Mercer, University of Geneva, Switzerland
Anthony Pym, Universitat Rovira i Virgili in Tarragona, Spain
Marilyn Gaddis Rose, State University of New York at Binghamton
Lawrence Venuti, Temple University, USA

REGISTRATION FEE:
Registration at door: $250
Early registration: $200

If you plan to submit a paper, please send a 200-word abstract to the Conference Organizing Committee before June 30th, 2005.
For conference information and registration form, please contact Organizing Committee Graduate School of Translation and Interpretation Monterey Institute of International Studies
460 Pierce Street, Monterey CA 93940
Phone: 831-647-4170 Fax: 831-647-3560
Email: 50YearConference@miis.edu

実はスピーカーとして来ないかとお誘いがあったのだが、大会を控えているので断りました。しかしこの顔ぶれと一緒ではとてもとても・・・。正解であったなと。

18日にお知らせした相澤さんの件に追加。今発売中の『NHKテレビドイツ語会話』3月号に逐次通訳のノートテーキングの話とかが載ってます。

たまたま見つけて「えええ!」と驚いて買ったのがこの本。

Brown, A. S. (2004) The Deja Vu Experience: Essays in Cognitive Psychology. Hove: Psychology Press.

まさか既視感を認知科学で研究しているとは思わなかった。誰もが経験する不思議な現象だが、これまであまり納得のいく説明を聞いたことがない。この本は様々な分野からかなり徹底的に事例を集め、多様な角度から検討している。10章などはParapsychological Interpretationで、超常現象としての解釈(予知、テレパシー、生まれ変わり(遺伝的伝達)まで扱っている。科学的説明としてはdual processing(例えば感覚が劣化して記憶のように現れる)、神経学的(例えば遅延した神経メッセージが古い刺激と解釈される)、記憶研究(これにはいろいろあって児童期健忘、夢や文学やメディアからの情報を混同したりなど)、double perception(現在の認識が2つに分裂する、身体的エネルギーの低下が最初の感覚を取り逃がす)などがある。日本では少なくともこれだけまとまった研究はない、はず。ところで16章のタイトルにもなっている'It's deja vu all over again.'は、もちろんヨギ・ベラの名言。

通訳者のブログ

2005年02月21日 | Weblog
先週の金曜日は郷里の県立高校で講演。来年からセンター試験にリスニングが導入されるのでリスニングの話が中心。いやあそれにしても寒かった。東京も寒かったようですが。大学院の入試用書類審査も終り、あと大学院の重要なスケジュールとしてはは土日の試験と面接を残すのみとなった。
いろいろお知らせやら何やらあるのですが、それは明日以降にします。
知らない間に通訳者(+途上の人)のブログがずいぶん増えました。興味のある人は自分で探してね。ひとつだけ紹介します。知人ですが、認知言語学者であり大学の先生であり通訳者であり通訳学会の会員でもある鍋島弘治朗さんのサイトブログ。ブログはできたてで、見逃したR-1グランプリを紹介してますが、ちゃんと言語学になっているのがすばらしい。サイトのほうでは「うらぐらいす」が笑えます。

久しぶりに各種お知らせなど

2005年02月18日 | Weblog
会社(学校)を無断で休んで、出て行きにくくなり、また1日休んでしまってなおさら出にくくなるという悪循環を思い出しました。2週にわたった修士論文の口頭試問を終え、気がゆるんだんでしょうか。皆様ごぶさたいたしました。週明けには春期入試のための書類(研究計画書)の評価。修士論文を読むよりは楽ですが、何十人分もあります。今日はこれからいわき市は平にある県立高校に講演に行ってきます。小学校から高校まで一緒だった同級生が先生をしているので、呼ばれました。というわけで時間がないので今日は最低限のお知らせのみ。

玉井健さんが『リスニング指導法としてのシャドーイングの効果に関する研究』(風間書房)を出版した。同名の博士論文を本にしたもの。ハードカバー、箱入りの立派な本で、普通の本よりは高いが、関心のある人が比較的簡単に入手できるようになったのは嬉しい。

以前おしらせした5月29日(日)の公開ワークショップでのLawrence Venutiのトークのタイトルが決まりました。Exploring the relations between translation theory and practice: equivalence, norms, and ethicsです。

相澤啓一さんがやっているNHKテレビのドイツ語会話の番組で、3月にBettina Ortmannさん(Antje Witzelさんにイギリスで通訳を習ったという)をゲストに招いて、2度にわたって「日独通訳の世界」をテーマに取り上げるそうです。特にドイツ語系の院生は見るべし。

「医療通訳って何?病院でぶつかるコトバの壁」

2005年02月03日 | 通訳研究
お知らせです。
12月30日にも紹介しましたが、昨年4月18日に大阪国際会議場で開催された「医療通訳って何?病院でぶつかるコトバの壁」講演会・シンポジウムプロシーディング、入手可能だそうです。ご希望の方には、お送りするそうですので下記までご連絡下さい。一冊 1000円(送料別)です。

問い合わせ先: みのお英語医療通訳研究会 西野かおるさん
mi_taskforce@ yahoo.com

目次を再掲します。

<基調講演>
米国における医療通訳の展望-新時代の挑戦 (Patrica D. Borgman)
<シンポジウム>
医療におけるコミュニケーション(中村安秀)
日本における医療通訳の現状と問題点(村松紀子)
研究会一年の歩みと今後の課題(西野かおる)
公共通訳制度の意義と展望-オーストラリア・モデルを中心に(水野真木子)
追加発言と質疑(伊藤守・連利博・林田雅至)