MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

Facebookはこちらです。

日本人理系学生(院生)の発音の問題点は何か

2009年12月18日 | 

愛知学院大学の中村幸子さんから、Hoffmann, T. and Siebers, L. (Eds.) World Englishes - Problems, Properties and Prospects (Varieties of English Around the World G4) (John Benjamins)という本をいただいた。この本は2007年に行われたInternational Association for World Englishesの第13回大会での100編以上の発表論文の中から22編を選んで収録した大部なものだ。この中に、Masako Tsuzuki and Sachiko Nakamura: Intelligibility assessment of Japanese accents: A phonological study of science major students' speechという中村さんたちの論文がある。これは名大の理系の学部生と院生21人にNew York Times やTime等から選んだ14-25ワードからなる文を読んでもらい、その発音のintelligibilityを11人の英語のネイティブスピーカーが判断するというもの。こうして日本人学生の英語の発音の問題点を明らかにしようというわけだ。結論だけを言えば (1)Intelligibilityの点では超分節音素よりも分節音素の誤りの方が重要で、分節音素の中では母音よりも子音の影響の方が大きい (2)子音の誤りの中では破裂音とr/lの区別が最も大きな問題である (3)(二重母音、長母音、短母音などの)母音の長さの交代 (4)ストレスの欠如あるいは誤り、という結果である。ここから教育上の含意を引き出しているのだが、面白いのは、「発音の誤りがintelligibilityに影響しないならば、それは発音の誤りではなくEFLのヴァリアントとみなす」という主張である。
 発音など細かなことを言わずに、要するに通じればいいのではないかという主張もあるかも知れないし、ネイティブスピーカーの発音に限りなく近づく必要もないとは思うが、適切な指導と少しの工夫でintelligibilityが向上するならば、努力する価値はある。これは英語教育にとどまらず、通訳教育でも大事なことだろう。関心のある人には是非読んでいただきたいのだが、ちょっと高いか。
 話はずれるかも知れないが、以前衛星放送で、アメリカで収録した某NHKアメリカ総局長(だったかな)によるアメリカ人ゲストのインタビューを定期的に通訳したことがあった。毎回アメリカにいるスタッフがインタビューをわざわざ全部書き起こして、ファックスで送ってくれたのだが、総局長の発言の中に(inaudible)(聴取不可能)という語がひんぱんに差し挟まれていた。これは何だろうと実際に聴いてみると、われわれにはちゃんと聴ける(intelligible)のであった。


やっと入稿

2009年12月11日 | 雑想

ここのところ学会誌の編集作業にかかり切りになっていたが、今日ようやく入稿した。最後の最後でレイアウトの不備が見つかったり、誤変換が残っていたり、キリがないのであるが、本当はもうちょっと余裕をみて、いろいろチェックしたほうがいいのだろうな。ともあれ、去年は1月になってからの入稿だったから、何とか挽回したわけです。ただし発送は1月になります。

それにしてもMS WordとAcrobatには手を焼かされる。まあこちらの勉強不足もあるのだが、ちょっと信じられないようなことが起きるのである。前回は罫線の処理で懲りたので、今回はできるだけ使わないようにした。それでもどうしても消せない罫線が一本残ったのでテキストファイルに落として再構成し、どうしても縮小できない図はスキャンしてjpegにして貼り付けるという「荒技」で切り抜けた。それから、修正しようとすると二重取消線がかかり、フォントの「文字飾り」のチェックを外しても直らないという、驚くべき書式があった。あと、余白や文字数、行数など同じなのにどうしても詰まって見える原稿とか…。どうぞ皆様、ふつうに書いて下さい。

この作業と並行して大学の授業の準備をしながら、一月の立命館の国際会議の原稿も書いていたのであった。今回の会議には同時通訳がつくので、通訳者のための原稿である。しかしいくら原稿をもらっても、この内容では通訳者の方では大変だろう。どのみち全部は話せないから、短くやさしいバージョンを作る必要がある。(さらにPPT)も準備しないといけない。その他年末までに書かなければならない原稿がある。

というわけで、中村さん、メルドラムさん、すみません。もう少しお待ち下さい。