MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

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翻訳研究分科会in神戸女学院

2008年08月31日 | 催し

昨日は神戸女学院大学で翻訳研究分科会。神戸女学院主催の講演会とのジョイント企画である。その前に11時から立教グループが勉強会をやるというのでできるだけ早く出発しようと努力したのだが、前夜一晩中雷が鳴り響いてよく眠れず、結局8時の「のぞみ」になり、さらに新大阪→大阪→阪急梅田の乗り換えに時間がかかって、到着は12時になってしまった。幸い心配だったお天気もなんとか持ち直し、参加者40名という盛況でした。藤濤先生の発表と会場の様子(2枚)と講演会の前の時間を利用しての施設ツアーのひとびと(2枚)、宿泊したケンウッド館の部屋(レトロです)と隣接するベランダからの眺め。


GuttとCultural Literacy

2008年08月28日 | 翻訳研究

夏風邪をひいたらしくここ2週間体調が思わしくなく、大会準備のための細々した作業もあるため、このブログも途切れ途切れですがご了解を。

30日(土)は神戸女学院大学で翻訳研究分科会をやるが、同時に東森勲先生の「翻訳と関連性理論について:漫画翻訳からジョーク翻訳まで」と題した講演会も開催される。翻訳と関連性理論といえばErnst August Guttだが、最近(といっても2006年)聖書翻訳のウェブジャーナルであるJournal of Translationに'Aspect of 'Cultural Literacy' Relevant to Bible Translation'という論考を寄せている。(cultural literacyはE.D.Hirshが提唱した概念。)Guttはすでに、聖書のようなテキストを現代の読者にとって関連性のあるものにするためには、背景知識(付加的情報)を与えるとか、オリジナルの文脈へのアクセス可能性を高めるなどの方法が必要であることを指摘しているから、彼の理論とcultural literacyの概念が結びつくのはごく自然なことである。(今更という感じはあるが)この展開は歓迎していいと思う。また最近(2004)では、Wilson (2000)による関連性理論の新展開に沿う形で、言語のmetarepresentational useとしての翻訳という考えを打ち出している。これは一言で言うと、'a group of translation phenomena that do rely on resemblance relations to another text but not (necessarily) on resemblance in interpretation'ということのようだ。Wilson (2000)のmetarepresentationという用語自体はすでに2002年に南津君が『通訳研究』に書いた「同時通訳における照応関係の構築」という優れた論文で使っているが、Guttの使い方はいまひとつよくわからない。

Guttの関連性理論を使った翻訳理論については批判も多い。僕自身の疑問としては、まずいったいこの理論の何が新しいのか、ということである。Guttの取り上げるような論点はこれまでの翻訳理論でも十分説明できる。また中心的概念である「解釈的類似」interpretive resemblanceの実現は不可能であると思う。Guttの記述は整合性に欠けているというか、個々の論点が論理的につながらないケースが多いと思うのだが、その最たる例は「翻訳は、オリジナルが伝えようとした表意と推意のすべて、そしてそれだけを目標言語の読者に伝えることである」という言明だろう。これがおかしいことは明らかだ。文脈と推論のあり方が違えば、表意と推意がそのまま伝えられるはずがない。デフォルトの推論(Levinson)だってあるのだ。Guttは関連性理論による説明があれば、翻訳理論は特に必要ないと豪語した。しかし理論の価値、あるいは優劣が、それが様々な現象をどれだけ統一的、整合的、かつ経済的に説明できるかにあるとすれば、Guttの理論はせいぜい様々な翻訳理論のone of themなのである。


『コミュニティ通訳入門』

2008年08月24日 | 
コミュニティ通訳に携わっている人、これから勉強しようと考えている人にとっては待望の書といえる。水野真木子(2008)『コミュニティー通訳入門:多言語社会を迎えて言葉の壁にどう向き合うか…暮らしの中の通訳』(大阪教育図書)が出版された。まだネットには書名も書影も見あたらないが近日中に出そろうものと思われる。(その時点でリンクを張ります。)2部12章という構成で、第1部:在日外国人とコミュニティー通訳 I.在日外国人の現状と「言葉の壁」 II.コミュニティー通訳とは III.コミュニティー通訳者の仕事と意義 IV.コミュニティー通訳者の資質と能力 V.コミュニティ通訳者を使うには VI.コミュニティ通訳者のためのトレーニング VII.コミュニティ通訳と手話通訳 第2部:各分野の通訳 I.司法通訳 II.医療通訳 III.学校通訳 IV.行政通訳 V.その他の通訳分野、となっている。つまり第一部は総論で、第二部では各分野の通訳の特徴と注意すべき点を述べている。通訳者(あるいはその志望者)だけでなく、コミュニティ通訳者を使うユーザーをも意識した内容になっている。包括的なコミュニティ通訳入門書という性格上、技術的な面ではあまりつっこんだ記述はできないが、それでも理論に裏打ちされた最低限の内容は盛り込まれている。コミュニティ通訳者とそのユーザーにとって得難い指針を提供することになるだろう。なお本書では外国籍通訳者の利用も考え、初出の漢字と難しい漢字にはふりがなが振ってある。

Mundayの『翻訳研究入門』第2版

2008年08月18日 | 

Jeremy Munday (2008) Introducing Translation Studies: Theories and Applications, 2nd ed. (Routledge)がようやく届いた。Amazon Japanではいまだに10/14発売、予約受付中になっていますが嘘です。急ぐ人はRoutledgeに直接注文のこと。
初版が2001年だから7年ぶりの改訂になるが何が変わったかというと、…あまり変わっていない。強いて言えば最終章にaudiovisual translation, globalization/localization, コーパス研究を入れたこと。もちろん各章で細かい改訂はしている。たとえば認知的翻訳理論、関連性理論、翻訳の歴史と社会学、翻訳とイデオロギーなどのテーマを含めている。(初版ではGuttが本筋では扱われていないのが意外だった。)あとは当然ながら文献などが刷新されている。分量は全体で14ページの増加。もとよりこれだけの分量ですべてを十分に扱うことなどできないから、要はバランスの問題になる。その点では未だに手にしうる最良の翻訳研究入門書という評価は揺るがないだろう。しかし、ここはあえて弱点を指摘しておく。認知的翻訳理論といっても取り上げているのがパリ学派の解釈理論やRoger Bellというのはどういうわけか。こんなものはなくていいから認知言語学的翻訳理論や作動記憶理論をベースにした翻訳理論などを挙げるべきだろう。認知的翻訳理論と言えば当然そうなる。FSPの扱いも小さすぎる。語用論ではRobinsonによる新展開を考慮していない。また総じてそれぞれの理論の説明が浅すぎる。それは入門書には避けられないことかもしれないし、研究の入り口を指し示せばそれでよいという考え方もあるだろうが、
もう少しつっこんだ議論が欲しい。否定的なことばかり言ったようだが、先にも述べてあるように、これ一冊でTranslation Studiesの基本的な領域をほぼ鳥瞰できるという意味では、今のところこれ以上のものはない。


宿泊情報など

2008年08月14日 | 催し

大会に参加で宿泊する方のために宿泊情報と詳しい交通案内のページを作った。ポスターから入れます。なお発表スケジュール要旨集がほぼ固まりました。

僕のところにも航空会社を装ったウィルスメールが来た。実際航空券を購入した人はだまされそうだし、実際だまされた知り合いもいる。送信者名の航空会社は様々だが、たぶんticket.zipというファイルが添付されているので、これを開かなければ大丈夫らしい。皆様ご注意を。それにしてもSo-netとMcAfeeで二重に防御しているのに、いまだに除去できないのはどういうわけか。


雑司ヶ谷墓地

2008年08月13日 | 雑想

一昨日は体がなまるのを防ぐため、暑い日にもかかわらず茗荷谷駅から雑司ヶ谷墓地経由で池袋まで歩く。近辺の道はもうほとんど歩き尽くしてつまらないのだが、このルートはこれで2回目。大塚三丁目交差点を左折し、護国寺前を通って高速道路下から墓地に入る。墓地入り口にある生花屋は昭和のたたずまいを残している。見上げた空の雲。墓地の中も木立の陰は涼しい。おまけは東池袋四丁目の都電の駅の風景。

   


大会プログラムと発表要旨集ができました

2008年08月10日 | 催し

昨日ははじめて獨協大学へ。改札口を出て駅前に出ると近藤先生がうろうろしていた。年次大会の会場となる天野貞祐記念館というドーム状の建物で理事会。天野貞祐は確か『純粋理性批判』の初の日本語訳をした人だ。獨協大学は広くてきれいなキャンパスです。松原団地駅からキャンパスに入る前のスクランブル交差点のところに大きな電光掲示板があり、大会当日はそこに「日本通訳学会第9回年次大会」という掲示が流れるそうです。乗り換えを間違えて遠回りして理事会から帰ると、採択された発表者に採択のメールを30数通出し、発表申込み未着事故の処理などで力尽きる。
今日は朝からほぼ一日がかりで大会プログラム発表要旨集を作った。まだ暫定的なものですがごらん下さい。柳父先生の基調講演以外に模擬法廷とシンポジウム、30件の発表という、通訳学会としては空前の規模になります。ごらんになればわかりますが面白い発表が目白押しですので、お誘い合わせの上是非ご参加下さい。


夏休みに入る

2008年08月08日 | 雑想

実は今日から夏休みである。会社勤めなので10日しかないが、それでも夏休みには違いない。小学一年生から数えて何十回目の夏休みになるのだろうか。来年からは永遠の日曜日だからこれが最後の夏休みということになる。初日の今日は明日の理事会の準備に終始した。ところが、必要な文書をプリントし始めたらトナーがなくなってしまった。トナーの入ったプリンタはもうひとつあるのだが、PCの方がUSB接続しかないために使えず、炎天下、日陰を選んで久しぶりに秋葉原まで買い出し。Laoxがなくなってしまったので、トナーを売っている店を探すのに一苦労した。秋葉原はこういうところはだめだな。こんなことなら池袋に行けばよかった。

来年の10月、プラハでTranslating Beyond East and West: The 11th Prague International Conference in Translation and Interpreting Studies という会議がある。わりと有名な国際会議だったはず。詳細はここにおいておきます。


大会準備など

2008年08月06日 | 雑想

9月の大会まであとひと月ちょっとしかない。さしあたり週末の理事会の準備で忙しい。発表申込みは一段落したようだが、すでに昨年の申込み件数を超えている。今年はアメリカ、カナダ、イギリス、スイス、韓国からの申込みもある。来年の話をするのはまだ早すぎるのだが、次の大会の開催地はおそらく関東でも関西でもない地区になりそう。

「リトル・チャロ」の柴原さん、よかったです。シャドーイングの認知度がさらに高まったかな。ふつうは実物より横に広がって映ると言われますが、実にスマートに映っていました。再放送があと3回あるようですので、見逃した方は是非ご覧下さい。

今日、上海では理事の皆さんによる発表があったはず。うまくいっただろうか。