お知らせ
■来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。
■『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。
■『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。
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Facebookはこちらです。
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■東京は初雪が降り寒い一日でした。明日は会津若松まで行くことになってしまった。
■おしらせをいくつか。
2005年にInterpretation: Techniques and Exercisesという本を出したJames Nolanさんから、おたくの学会の会員にいかがですかというメールが来た。この本についてはすでにお薦めの本として紹介している。添付文書には本の紹介の他に書評や世界各国の取り扱い書店のリストが載っているが、このリストは何かと便利かも知れない。あと、ご本人の写真も。
■Medical Translation Blog を始めましたという連絡。これはForeignExchange Translations, Inc.という、たぶん翻訳会社から。いろいろな実務的情報を提供しているようだ。
■7月にメルボルンで開催されるIATIS (International Association for Translation and Intercultural Studies)からCall for Proposalというから、何かと思えば、2012年に開催予定の第4回大会に立候補しませんかという内容であった。まだわが学会にはきついな。会場だけでも400人収容の大教室とパラレス・セッション用の50-100人が入れる教室少なくとも5つ必要とのこと。
■そのIATISの第3回大会は今年の7月8-10日に開催されるが、前月の6月8日-10日にはAlternative Spacesという会議がコペンハーゲンで行われる。目的は翻訳通訳研究プロパーではなく、to explore the potentials of 'alternative spaces' as a prism for understanding different forms of social activism and cultural awareness in the new world order.というもの。Keynote speakerにはMona BakerやSusan Bassnett, Spivakなどの名前が見える。
■古い話になるが、東大出版会のPR誌『UP』の昨年の2月号に、亀山郁夫の新訳『カラマーゾフの兄弟』に触れた沼野充義の文章が掲載されていたようだ(「薄餅とクレープはどちらが美味しいか?-翻訳について」)。これについてはいろんな人が言及しているので詳しくはそちら(mmpoloの日記、お楽しみはこれから!、横浜逍遙亭など)を見てほしい。同じロシア文学で、それぞれの主張をぶつけ合った1970年代の「原=北御門論争」とは違い、沼野は亀山訳をはっきりと批判しているわけではない。そのことは毎日新聞に載った沼野の書評でもわかる。そして「原=北御門論争」とは論点が異なっているとはいえ、沼野が言っていることには特に新味があるわけでもない。しいて新しい論点といえば「異化的」foreignizingな翻訳でも、「同化(馴化)的」domesticatingな翻訳でもない、「媒介的な」タイプの翻訳を提案していることだろう。その部分だけ引用しておく。
「第三の「媒介的」なタイプは、翻訳者の母語と外国語の間を媒介し、そこにいわば第三の言語を作ろうとするものだ。無論、この第三の言語とはユートピア的なもので、現実にはベンヤミンのいう「純粋言語」同様、存在しないのかも知れないが、私はその媒介的な場で展開するものこそが「世界文学」と呼ばれるに相応しいと考えている。」
しかしこれでは何のことかさっぱり分からない。もっとはっきり書くべきだし、書けないなら最初から書かないほうがいい。(ついでにベンヤミンをこういう風に使うのはいいかげんやめたらどうか。)「同化」と「異化」にしても、もはやVenutiやBermanが問題にした規範や言語の政治学や翻訳者の倫理を抜きにしては語れないだろう。沼野は『罪と罰』の新訳を出すそうだから、おそらくそこに第三の「媒介的」翻訳の実例が見られるのかもしれないが。なお沼野は毎日新聞の書評で、Richard PevearとLarissa Volokhonsky夫妻の「カラマゾフ」の新英訳に言及しているが、その2人のインタビューが面白い(これはトルストイの時のだが)。OEDに基づく歴史的翻訳原則だそうで、「翻訳賞味期限論」もかたなしである。
■学会のサイトでも紹介したが、4月2-6日にカリフォルニアのMIISで、通訳翻訳教育における評価をテーマとしたFORUM 2009という会議が行われる。 その暫定的な内容が固まった。Franz PöchhackerやChristiane Nordをはじめ、錚々たる陣容。武田さんのブログでは、日本からもぜひ参加を、と呼びかけている。
■翻訳研究のウェブジャーナルRevista Tradumàticaの最新号は、Terminologia i Traduccio (Terminology and Translatio)の特集。英語の論文も数本ある。
■戦争直後に外務省通訳養成所というのがあって、「日米会話講座」という出版物を編纂して出していたことは知っていた。(7,8年前だったか、その講座が揃いで安く売りに出ていたのだが買いそびれてしまった。ただ、今でもバラでなら古書店に出ている。)「外務省通訳養成所編/外務省終戦連絡中央事務局監修」、「担当講師:熊谷政喜/アイナ・メイ・クマガヒ」などとある。サブタイトルからするとどうやらテーマや場面別の会話の本のようだ。気になったのは「外務省通訳養成所」の方だったのだが、ネットでその経緯の一端がわかった。海軍経理学校同期のHPを作っている山田さんという方が書いている「築地本校戦後の軌跡」の中に「外務省通訳養成所(Interpreter Training School 略称ITS)の発足」という項目がある。それによると、「占領軍と支障なく会話のできる警察官を養成する必要に迫られ、外務省と警視庁によって昭和21年8月に急遽設立された」ようだ。担当講師になっている熊谷政喜氏は代々木八幡ペテル教会の牧師で、アイナ・メイさんはその夫人とのことである。
■警察官ということで、はたと気がついたのが原田弘(1994)『MPのジープから見た占領下の東京』(草思社)という本である。「通訳警察官」としての経験を綴ったものなので、何か関係があるのではないかと見てみた。果たして「念願のPITスクールに合格」という項があり、PITというのはポリス・インタープリター・トレーニングスクールの略称で、昭和21年に外務省と警視庁によって急遽設立されたとある。講師の顔ぶれも熊谷夫妻をはじめとして、山田さんの記述と符合する。つまりITSとPITは同じものなのである。(山田さんの記載によると昭和23年からは警視庁単独の運営となり、それにともない改称されたことになる。)原田さんの本には養成所での特訓の様子も詳しく描かれている。戦争直後で食料も十分ではなく、鰯を電熱器で焼いて弁当のおかずにしたため、そのにおいが午後の教室に残って困ったという。受講生の平均年齢は22-3歳で、40人の受講生の中に婦警も3人いた。写真は原田さんの本から。右が原田さんで左がメイ・アイナ夫人。というわけで、長年気になっていた件が解決したのであった。
■15日の講演会は予想以上にたくさんの人が来てくれた。史上最低記録を作るのではないかと恐れていたが、通訳・翻訳「理論」(だけ)の話にもかかわらず、通訳学会の例会より多かった(というか例会が少なすぎるのだが)。友人、知人の皆さん、立教の院生の皆さん、通訳をしてくれた外語の院生の皆さん、どうもありがとうございました。学内での懇親会の後は近くのイタリア料理店での内輪の打ち上げで盛り上がる。
■同時通訳の説明にPPTのアニメーション機能を初めて使ってみたのだが、今日になって効果(開始、終了など)を「同時」に設定できることに気づいた。gifアニメなど使わなくても、工夫すればもうちょっといいものが作れるかも知れない。
■『日本の科学者』と言う雑誌(出している日本科学者会議というのは共産党系の団体らしい)の1983年12月号に、「文学研究と翻訳の諸問題」という小特集がある。2本の論文のうちひとつは文学の読みを扱っているので、実際には八木浩「翻訳・通訳学の確立のために」という論文1本だけ。もっぱらKapp, Vokler (1974) Probleme von Theorie und Praxis in der Ausbildung zum Ubersetzer und Dolmetscher (Quelle & Meyer)を種本にして、主にドイツ語圏の研究を紹介している。中心になっているのは通訳の方である。(この本は編著で、セレスコビッチなども寄稿しているようだが、ドイツ語文献の引用が多いPochhacker (2004)にも引用されていない。)論文の内容は資料的価値しかないが、当時大阪外国語大学で同時通訳研究会をやっていたらしい。内容的には、逐次通訳を逐語訳、同時通訳を即時通訳と言ってみたり、時代を考えてもちょっと首をひねるような表現もある。というのも、浅野・福井の本や『通訳』(日本放送出版協会)、西山千さんの『通訳術』などはすでにあったし、この論文の2年前の1981年にはアルクから『通訳事典』が、翌1982年には『通訳事典2』が、1983年には『通訳事典3』が刊行されているからだ。しかし1983年にこういう文章が書かれていたことは記憶に留めておいていいだろう。筆者の八木浩さんは当時大阪外国語大学教授で、1986年に若くして亡くなっている。
■『通訳事典』の発行年度を調べるために国会図書館で検索したら、国会図書館には『通訳事典2002』しかないことが判明した。これはまずかろう。僕のところには一応全部そろっていると思うが、今となっては貴重な資料になってしまった。国会図書館検索の副産物として、榎本淳一(2008)『唐王朝と古代日本』(吉川弘文館)という本に「遣唐使と通訳」という章があることがわかった。
■異常気象か、窓を開けていても部屋が暑いぐらいなので、近くの公園まで散歩。河津桜というそうであるが、濃いピンクの桜が満開である。
■明日の講演会の準備を進める。骨子がA4で36枚、パワーポイントが112枚というとんでもない分量になってしまった。一部アニメーションを使ったほうがいいところもあるのだが、遅くなるので全部取り払った。大幅にはしょることになります。通訳研究と翻訳研究のおおざっぱな流れを理解してもらい、何かヒントを得てもらえればいいんじゃないでしょうか。講演会は午後1時半から。日英同時通訳がつきます。
■これはValentin Garcia Yebra (1982) Teoria y Practica de la Taduccion (Editorial Gredos)という本で、MundayのIntroducing Translation Studiesに出てくる。対照言語学的アプローチで翻訳による変化の分類と翻訳手順を説明したVinay and Darbelnetの本に影響されて、いろいろな国で似たような本が出たようだ。これはフランス語とスペイン語のペアを扱っている。大部分が例示による翻訳の「変化」の説明で、理論的な記述はごく少ない(ようだ)。スペイン語なので読む気がしない、というか読めないのだが。全2巻で900ページある。
■『招待』3号を編集中。思ったより時間がかかるが、収録予定の論文はそれぞれに面白く、つい読みふけってしまう。B先生へのインタビューあり。