MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

Facebookはこちらです。

関東支部例会他

2019年06月05日 | 通訳・翻訳研究

6月中の学会関連の催しについてお知らせです。

(1) 日本通訳翻訳学会 関東支部第52回例会
【日時】 2019年6月8日(土)14:00~17:00
【場所】東京女子大学 本館0101
〒167-8585 東京都杉並区善福寺2-6-1
アクセス:http://www.twcu.ac.jp/univ/access/
キャンパスマップ:http://www.twcu.ac.jp/univ/about/campus/map/
(正門をはいってまっすぐ正面つきあたりの建物)
【タイトル】パネルディスカッション 「通訳教育の現状と課題」
【発表者】蜂屋美季子(サイマル・アカデミー)西畑香里(東京外国語大学)大竹純子(日本会議通訳者協会)鶴田知佳子(東京女子大学)
【参加費】会員:無料 非会員:1000円(学生500円)
【出席のご連絡・お問い合わせ】鶴田知佳子(ctsuruta@lab.twcu.ac.jp)まで。


(2)「通訳翻訳研究における会話・談話分析の可能性プロジェクト」ワークショップ
日時:2019年6月14日(金)13時-15時
会場:立教大学池袋キャンパスセントポールズ会館2階 芙蓉の間
〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1
https://koyu.rikkyo.ac.jp/service/stpauls/map/index.html
講師 Dr. Eva Ng, Assistant Professor of the Translation Programme in the School of Chinese, The University of Hong Kong
題目:Jury comprehension: English trials heard by Chinese jurors

(3) 関西英語教育学会(KELES)2019 年度(第24回)研究大会6月15日(土)16日(日)。
プログラムはこちら
16日には石塚さんが発表します。

(4)TILT研究プロジェクト第7回会合
日時:6月30日(日)13:00~16:00
会場:名古屋市立向陽高等学校
名古屋駅から地下鉄桜通線で「桜山」駅下車、徒歩10分程度です。
http://www.koyo-h.nagoya-c.ed.jp/1_access.html
参加費:不要(JAITS会員・非会員にかかわらず)
プログラムはこちら


Forum 最新号

2010年03月08日 | 通訳・翻訳研究



しばらく前にKSCIのForum, Vol. 7 No.2 (2009)が着いていたのだった。この号は翻訳の比率が大きくなっている。タイトルを見る限りではいくつか読んでみたいものがある。
Sommaire/Contents
Nizar Qabbani's "Balquis": Translation into English with an introduction (Yasser K. R. Aman)
Globalization and Boudaries in Translators' and Interpreters' Professional Organizations (Graciela Calderon)
Numbers in Simultaneous Interpreting: An experimental study (Andrew Kay-fan Cheung)
Translation in Enhancing National Brand (Choi Jungwha)
Cinquante ans d'interpretation parlementaire (Jean Delisle)
Les enjeux du debat sur l'(in)traduisibilite de la metaphore (Kim Hyeon-ju)
Revisng the Target Text Independently of the Source Text (Kim Ryonhee)
The Impact of Non-native English on Information Transfer in Simultaneous intepretation (Ingrid kurz & Elvira Basel)
Style Shift in Korean Teledramas: A case for the careful consideration of speech style in translation (Jeansue Mueller, Charles Mueller)
Trajectory of Vladimir Nabokov's Literary Translation Practices (Zhanna Yablokova)
Influence of Ideology, Poetics, Patronage and the Prodessional on Rewriting Vanity Fair into Chinese Terms (Yand Shizhuo, Yang Wenrui)

写真はニコライ堂つながりで、昔のニコライ堂の遠望。お分かりでしょうか。九段坂の上から神保町を見下ろし、彼方に駿河台の森とニコライ堂が見えます。


グループメソッド

2010年02月24日 | 通訳・翻訳研究

日スーパーで買い物をして小石川の商店街を歩いていたら、どこかで見たような人が歩いてくる。似てるけど違うよな、などと思っていたら(マスクをしていたにもかかわらず)向こうが気づいた。卒業した院生のSさんなのだが、やはりもと院生のWさんと電話の最中で、僕まで電話にでるはめになったのだった。



保町のあるビルの中に倉庫のような古書店があり、そこで、浦口文治(1927)『グループ メソッド:外国文学研究の近道』(文化生活研究会)という本を500円で入手した。英語教育史では有名な本で、復刻版も出ているが1万円を超す。古書も通常それぐらいはする。いわゆる「直読直解」法の流れをくむ方法であり、普通の訳読とは違って、英語の語順(句順、節順)通りに訳す点が特徴なのだ。同時通訳の「順送りの訳」とも似ているので以前から関心はあった。まあ、主眼は理解の方法なのだろうと思っていたのだが、実際に見てみると、読み方(ポーズの入れ方)、理解の仕方に加えて、翻訳の方法でもあるという。俄然おもしろいことになるわけだが、実例を見て、これはだめだと思った。浦口はたとえば、次のような原文について、グループメソッドによる翻訳とそれ以外の方法による翻訳を比較している。

Krogstat: The law takes no account of motives.
Nora: Then it must be a very bad law.
Krogstat: Bad or not, if I produce this document in court, you will be condemned according to law.

実際はもっと続くのだが、ここまでにする。以下、グループメソッドによる訳とそれ以外の訳を並べてみる。

(グループ式訳)
「今の法律が頓着しないのは動機ですよ。」
「それぢやきつとひどい悪法律ですわね。」
「わるからうとなからうと、もし私が此書類提出を法廷でやれば、あなたの処罰される標準は法律ですよ。」

(島村抱月訳)
「何のためだらうが、そんな事は法律は関係しません。」
「それぢや其の法律は大間違の法律です。」
「間違つて居やうが居まいが、此証書を裁判所へ持ち出せば、あなたは法律の罪人におなんなさらなくちやならない。」

(森鴎外訳)
「いや、法律は動機を問はないものです。」
「そんな法律なら極悪い法律ですわ。」
「悪い法律だらうが、好い法律だらうが、わたしがこの一枚の証書を法廷に出せば、あなたが法律に依つて処分せられますよ。」

以下、あと3人の訳例が続くがいずれも似たようなものなので省略する。言うまでもないと思うが、抱月と鴎外の訳の方が優れている。浦口はグループ式訳がいかに優れているかをさまざまな理由(背景とか主張が鮮明になるとか)を挙げて力説しているが、すでに当時から批判はあったようで、その辺りは現在の視点から見た批判も含めて、庭野吉弘(2008)『日本英学史叙説』(研究社)に詳しい。しかし、困ったことに現在の批判もあまり理論的なものではないのだ。第一に指摘すべきなのは、グループメソッドによる訳が、情報構造(焦点など)を無視していることだろう。抱月や鴎外の訳は無意識のうちに原文の情報構造を歪曲しないような訳になっているのだ。


いろんな雑誌の最新号など

2010年02月14日 | 通訳・翻訳研究
紹介していきます。
Translation & Interpreting
これはウェブジャーナルで無料。
Trnalsation Studies
Routledgeから出ている雑誌。ポストコロニアル系かと思えばキケロとか芥川龍之介がでてきたり。あとはやはり「文化(の)翻訳」がForumで取り上げられている。
The Interpreter and Translator Trainer (ITT)
これはSt. Jeromeから出ているもの。通訳教育にStorytellingを使うとか、なんだかなあという感じもするが、読んでないのでわからぬ。

<法と言語 学会設立総会>のお知らせ

2009年05月03日 | 通訳・翻訳研究
法と言語 学会設立総会>のお知らせです。

とき: 2009年5月17日(日)10:00-12:00
場所: 明治大学リバティータワー23階 岸本辰雄記念ホール

プログラム
1. 開会宣言
2. 会長の挨拶
3. 学会設立の趣旨
4. 基調講演
  西シドニー大学/元国際法言語学会会長・John Gibbons
5. 設立記念パネル・ディスカッション
  「司法にとって言語とは何か」
  <パネリスト>
  酒井幸(弁護士、日本弁護士連合会裁判員裁判実施本部副本部長)
  渡辺修(甲南大学法科大学院長、弁護士)
  大河原眞美(本会会長、高崎経済大学教授)
  水野真木子(本会副会長、金城学院大学教授)
6. 会則制定・決議
7. 設立宣言
8. 閉会宣言

参加費は無料です。
当日は学会への入会申し込みも受け付ける予定です。
(年会費 正会員5,000円、学生会員3,000円、賛助会員10,000円)
総会に参加を希望される方は、事務局の堀田まで事前にご連絡ください。

法と言語 学会事務局 〒168-8555 
東京都杉並区永福1-9-1 
明治大学法学部 堀田秀吾研究室内
電話・FAX 03-5300-1383
Email
hotta@kisc.meiji.ac.jp
堀田秀吾

CETRA Target 20周年記念国際会議

2009年04月23日 | 通訳・翻訳研究
The Known Unknowns of Translation Studies:  International Conference in Honour of the Twentieth Anniversary of CETRA and Target (1989-2009) という会議が8月28、29日の両日、ベルギーのLeuvenで開催される。Keynote speakersは、Hans J. Vermeer, Susan Bassnett, Daniel Gile, Mary Snell-Hornby, Anthony Pym, Yves Gambier, Andrew Chesterman, Christiane Nord, Maria Tymoczko, Michael Cronin, Harish Trivedi, Miriam Shlesinger, Kirsten Malmkjaerと、翻訳研究のWho's Whoのようである。abstractsも大体出来ている。ただ、プログラムを見るとパラレルセッションでやるために、半分しか聞けないようだ。発表する会議ではないが、初めて国際会議に参加する人にはいいのでは。私は行きませんけど。

日本通訳翻訳学会第10回年次大会ポスター

2009年04月20日 | 通訳・翻訳研究

やっと作りました。こちらをごらん下さい。最近はhtmlをいじることはまずないので、手順をほとんど忘れてしまい、えらい苦労しました。(去年作ったはずなのにjpeg画像の作り方を忘れて茫然としてしまった。誰かやってくんないかな。)発表申込み締切は8月1日。厳守のこと。ついでに学会誌の投稿しめきりも同じ日です。

生田長江に『英語独習法』(明治43年、新潮社)という著書があって、その中の「直訳と意訳」という項目でこんなことを言っている。

「例へば、The man who met your father in Asakusa yesterday, was my brother's employee till last month.と云ふ原文を、近頃の普通に行はれる意訳でやると「昨日浅草にて汝の父に出逢ひし所の人は、先月まで我が兄弟の傭人なりき」となる。成るほど斯う訳しても大体の意味は通ずる。しかし文法上の構造は無視せられ、原文特有の味は解らなくなつて仕舞ふ。それではどうしたらばよいかと云ふに、気が利かないやうだけれど、矢張り従来の直訳で行くより外はない。即ちwhoはThe manとmet your father in Asakusa yesterdayとを結付ける関係代名詞故、原文の文脈を尊重しようとするのには、どうしても「人その人は昨日浅草にて汝の父に出逢ひし所の人は、先月まで我が兄弟の傭人なりき」と訳して見なければなりますまい。」

現在では異様に見えるが、かつてはこういうものを英語学習上の「直訳」と言っていたのである。もちろん長江は、学習者はさらに「意訳」に進み、「意訳の訳読をも或る時期に達すればやめるのです。つまり訳読をしないで書物を読むやうにならなければなりませぬ」とも言っている。
面白いのは、「漢文和訓の次第次第の容易に且つ手際よくなり来つた歴史を見ると、今日の欧文直訳も、追々上手になつて行くに違ない。また一方では其直訳文の影響を受けて、日本語日本文が一歩一歩欧文脈に接近して行く、それ故、現在の直訳に多少の弊害があるとしても、全然これを排斥し去ると云ふやうな無謀な議論は通るべきものでない」と論じていることだ。生田長江の翻訳論は『サラムボウ』序文しか知らなかったが、ここにも彼の翻訳に対する意識が伺える。ただし『サラムボウ』訳については辰野隆が「むしろ創造的でない名訳が欲しいと思うほど読みにくい訳文であった」と言っている。


日本ワーキングメモリ学会など

2009年03月04日 | 通訳・翻訳研究

3月7日は第6回日本ワーキングメモリ学会。以前は京都大学の院生がほとんどだったが、今回は発表者の顔ぶれも多様になり、語学関連の発表も入っている。特別講演はRobert Logie。もう少し理論的な発表も欲しい気がする。いずれにせよ7日は学会の理事会なので行けないのだが。

John Benjaminsの新刊、Agents of Translation。出版社とか代理人の話かと思ったらそうではなくて、「目標文化に影響を及ぼし、文学的、政治的、個人的関心を推し進めるための手段となった翻訳」に関する13のケーススタディを収めている。詳しい内容はこちら。これなら面白いし、翻訳研究の王道だと思う。Queensland大学の内山さんが福沢諭吉の翻訳について書いている。アメリカの地理の教科書を翻案してアジア近隣諸国に対する日本の優越意識を強化した、ということは「西洋事情」ではなくて「世界国尽」のことか。現物を見ないと分かりません。


お知らせ2件

2009年02月19日 | 通訳・翻訳研究

学会のサイトでも紹介したが、4月2-6日にカリフォルニアのMIISで、通訳翻訳教育における評価をテーマとしたFORUM 2009という会議が行われるその暫定的な内容が固まった。Franz PöchhackerやChristiane Nordをはじめ、錚々たる陣容。武田さんのブログでは、日本からもぜひ参加を、と呼びかけている。

翻訳研究のウェブジャーナルRevista Tradumàticaの最新号は、Terminologia i Traduccio (Terminology and Translatio)の特集。英語の論文も数本ある。


講演会終わる

2009年02月16日 | 通訳・翻訳研究

15日の講演会は予想以上にたくさんの人が来てくれた。史上最低記録を作るのではないかと恐れていたが、通訳・翻訳「理論」(だけ)の話にもかかわらず、通訳学会の例会より多かった(というか例会が少なすぎるのだが)。友人、知人の皆さん、立教の院生の皆さん、通訳をしてくれた外語の院生の皆さん、どうもありがとうございました。学内での懇親会の後は近くのイタリア料理店での内輪の打ち上げで盛り上がる。

同時通訳の説明にPPTのアニメーション機能を初めて使ってみたのだが、今日になって効果(開始、終了など)を「同時」に設定できることに気づいた。gifアニメなど使わなくても、工夫すればもうちょっといいものが作れるかも知れない。

『日本の科学者』と言う雑誌(出している日本科学者会議というのは共産党系の団体らしい)の1983年12月号に、「文学研究と翻訳の諸問題」という小特集がある。2本の論文のうちひとつは文学の読みを扱っているので、実際には八木浩「翻訳・通訳学の確立のために」という論文1本だけ。もっぱらKapp, Vokler (1974) Probleme von Theorie und Praxis in der Ausbildung zum Ubersetzer und Dolmetscher (Quelle & Meyer)を種本にして、主にドイツ語圏の研究を紹介している。中心になっているのは通訳の方である。(この本は編著で、セレスコビッチなども寄稿しているようだが、ドイツ語文献の引用が多いPochhacker (2004)にも引用されていない。)論文の内容は資料的価値しかないが、当時大阪外国語大学で同時通訳研究会をやっていたらしい。内容的には、逐次通訳を逐語訳、同時通訳を即時通訳と言ってみたり、時代を考えてもちょっと首をひねるような表現もある。というのも、浅野・福井の本や『通訳』(日本放送出版協会)、西山千さんの『通訳術』などはすでにあったし、この論文の2年前の1981年にはアルクから『通訳事典』が、翌1982年には『通訳事典2』が、1983年には『通訳事典3』が刊行されているからだ。しかし1983年にこういう文章が書かれていたことは記憶に留めておいていいだろう。筆者の八木浩さんは当時大阪外国語大学教授で、1986年に若くして亡くなっている。

『通訳事典』の発行年度を調べるために国会図書館で検索したら、国会図書館には『通訳事典2002』しかないことが判明した。これはまずかろう。僕のところには一応全部そろっていると思うが、今となっては貴重な資料になってしまった。国会図書館検索の副産物として、榎本淳一(2008)『唐王朝と古代日本』(吉川弘文館)という本に「遣唐使と通訳」という章があることがわかった。