MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

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Missing Link

2010年07月29日 | 通訳研究
金山宣夫(1964)『英語通訳ハンドブック』(原書房)を入手した。その存在はおぼろげに承知していたが、現物を手に取るのは初めて。この本の意義は同時通訳の訳出手法としての「順送りの訳」を、おそらくは最も早い時期に説明している点だろう。1961年に福井治弘・浅野輔の『英語通訳の実際』(研究社)が出ているが、そこには直読直解や順送りの訳についての言及はない。もっとも、金山の本でも、「順送りの訳」という言葉は使われず、「あわびとり訳」と「かたっぱしから訳」として同時通訳の訳出手法が説明され、同時通訳用構文という言葉が使われているに過ぎない。事例に即した説明があるが、まだ理論的な説明はない。(「あわびとり訳」というのは、じっと我慢して、充分に待ってから訳出することを言う。「かたっぱしから訳」が「順送りの訳」に相当する。

不思議なことに金山の本には、3年前に出ている福井・浅野の本への言及はない。ともあれこの本は、自分にとっては福井・浅野の本と、國弘正雄・西山千・金山宣夫(1969)『通訳』(日本放送出版協会)、西山千(1970)『通訳術』(実業の日本社)を結ぶMissing Linkだったのである。

English Express 300号

2010年07月09日 | 雑想
朝日出版社から出ている雑誌English Expressが300号を迎えたという。1987年5月号が創刊号だから、もう24年続いていることになる。『時事英語研究』(Current English)や『英語青年』のような雑誌が消えていく中で、またいろいろな英語学習の競合誌が登場する中で、ほとんどCNNに特化した趣の雑誌として持続しているのはちょっと驚異的だ。この雑誌には創刊号からお世話になっている。初期には掲載するCNNニュースの翻訳をしたり、文法解説の記事を連載したり、その他いくつか記事を書かせてもらった。バックナンバーはたぶんすべて揃っていると思う。最近はいただくばかりで、どうもありがとうございます。

今月はEnglish Journalもいただいた。特集記事の監修をしている小坂さんが送ってくれたものだ。小坂さん、ありがとうございました。こちらは1975年の創刊なので、35年続いていることになる。購読を始めたのは通訳の勉強を始めた1982年ごろだと思うが、今は定期購読はしていない。初期は横長の小さな判型で、数十頁のものだったようだ。一連の『通訳事典』を別冊として刊行した功績は大きいと思う。EJも『Business View』や『商業英語』、『工業英語』などが消えていく中で生き残ってきた。

雑誌『地上』と東京裁判

2010年07月06日 | 通訳研究
『地上』という雑誌の1948年(昭和23年)4月号を入手した。この雑誌は家の光協会の発行で昭和22年創刊である。『家の光』が家庭雑誌であるのに対して、『地上』は農業総合雑誌という位置づけのようだ。この号にヘンリー島内の「法廷通訳の手記・東京裁判」という2頁ほどの記事が載っている。主に通訳が困難だった日本語の問題を取り上げている。(具体的には、「皇道」「八紘一宇」「ハラ」「内奏」「よく記憶しません」。)ちょっと不思議なのは、この時期はまだ最終弁論が続いていることだ。島内は通訳回数が最も多かったとされているが、書き方を見るともう仕事は終わったような印象を受ける。
この号には「ナタネの一生」「肥料はどうなるか」といった農業関連の記事と一緒に、弁護人の戒能通孝「戦争裁判は何を教えるか」や丸山真男「明治の悲劇」、真下信一「欺かれた世代」、長谷川如是閑「職能社会の文化と道徳」のような論文が掲載されている。