お知らせ
■来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。
■『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。
■『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。
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■小学校の英語教育について、日教組の教研集会で議論があったようだ。リンクしても程なく消えてしまう可能性が大きいので引用しておく。それにしてもこれが失敗した場合(その可能性はきわめて大きいと思うが)、一体誰が責任をとるのだろうか。
小学校の英語教育、教研集会でも賛否両論
小学校での英語教育は是か非か――。三重県で行われている日本教職員組合(日教組)の教育研究全国集会の外国語教育分科会では、中央教育審議会で検討中の小学校への英語教育の導入を巡り、現場の教師から賛否の声が上がっている。
富山県氷見市立海峰小の表克昌教諭(40)は27日午後、織田信長と豊臣秀吉らを例に、「どちらが偉いと思うか」と6年生の児童たちに英語で討論させた実践例を報告する。表教諭は「慣れない英語で自分の考えを相手に伝えようとする努力は、コミュニケーション能力を高める」と肯定的だ。
大阪市立鯰江(なまずえ)中の酒井聖教諭(51)も、大阪府内の9割以上の小学校が英語をとり入れている実態を報告する。酒井教諭は「小学校英語は定着しており、是非を議論する段階はもう過ぎている」と話す。
これに対し、金沢市立港中の七田桂子教諭(48)は26日の分科会で、全小学校で英語の授業を行っている同市の状況を踏まえた上で、「教師にも生徒にも負担が大きく、双方とも疲れ切っている」と指摘した。
同市は昨年度から英語教育の構造改革特区に認定されたが、石川県教組金沢支部のアンケートでは、「英語を教える補助教員との打ち合わせ時間がない」「評価が難しい」などの声が目立ち、七田教諭は「十分な授業が出来ない」と効果に懐疑的だ。
分科会に参加した別の教員からは、「中学入学時点で既に英語が嫌いという子どもが増えた」との意見もあった。
(2006年2月27日13時16分 読売新聞)
■さて、ラムラー氏講演会や翻訳研究分科会の報告をしないといけないわけだが、実はあまり得意ではない。困っていたらありがたいことにQianChongさんのサイトに詳しい報告があった。こちらをごらん下さい。QianChongさんて永田さんたちと一緒にいた方かな。どうもありがとうございます。
しかしまあラムラー氏のお話はは80代とはとても思えないしっかりした構成で、とても聞きやすい(通訳者にとっては訳しやすい)ものでした。通訳を担当した外語の院生2人もよくやっていたと思います。渡部さんの質問は、極東軍事裁判(東京裁判)とニュルンベルク裁判での「モニター」の役割に関するもので、あのやりとりは予備知識がないとちょっとわかりにくかったかもしれません。ようするに東京裁判では帰米二世が敗戦国民である日本人通訳者の通訳をモニターして、積極的に関与したのですが、ニュルンベルク裁判では同僚の通訳や議事進行を円滑に進めるための単なるコーディネーターといってよかったわけです。この講演会、当初は集まりが悪いのではないかと心配していたのですが、各方面の協力もあって、蓋を開けてみれば大きな会場がほぼ満員に近い状況でした。翌日の神戸女学院大学での講演にも多くの人が参加したという報告が来ています。こちらの通訳は神戸女学院の院生―実はプロ通訳者が担当したとのことです。
一方Minako O'Haganさんをむかえての翻訳研究分科会は20人が参加。O'Haganさんは、いつもは使わないであろう日本語版のPower Point原稿をわざわざ作ってくれたようで、世界の翻訳研究の水準と広がりが実感できるとてもいい内容だったと思います。翻訳研究は様々な概念を駆使して、古典や現代の文学の翻訳やいわゆる実務翻訳(技術、特許、ウェブ、メディア・・・)に限らず、字幕、吹き替え、ドラマ、ミュージカル、音楽、ゲーム、マンガなどの分野も包括する大きな学問(+実務)分野になる可能性があります。世界的に見ると通訳研究も翻訳研究に包摂されます。
■そうそう、今日は他に、「無実のゴビンダさんを支える会」の学習会もあります。これは午後2時から。
■それから異文化コミュニケーション研究科リサーチワークショップ運営機構主催の池上嘉彦先生の講演会が午後4時から、立教大学池袋キャンパス7号館7101教室であります。演題は「日本語と日本語らしさ-外からの視点・内からの視点」。
これから外語に向かい、その後立教に移動します。
■今日はNurremberg Trialの通訳者だったSiegfried Ramlerさんご夫妻を囲んで内輪の懇親会。Ramlerさんは1924年生まれだから裁判の当時は20代だった。裁判の後期にはモニターも務めたというので、ほぼ最年少の彼がモニターをするとき、同僚の通訳者との関係はどうだったのか、一応聞いてみた。やはり極東軍事裁判のモニターとはかなり役割が違い、発言者の発言のスピード調整などが主な任務だったようで、Framcesca GaibaがThe Origins of Simultaneous Interpretation: The Nuremberg Trialで書いていることが裏づけられた。
■明日は東京外国語大学の府中キャンパスでRamlerさんの講演会があります。当日直接会場に来られてもかまいませんので、ぜひご参加下さい。明日の講演は英語で行われますが院生による同時通訳(しかも原稿なし)がつきますので、Nuremberg裁判(の通訳)に興味のある人だけでなく、通訳自体に興味のある人にもお薦めです。詳しくは日本通訳学会のサイトか東京外国語大学のお知らせのページをごらん下さい。
■翌18日には神戸女学院大学で講演会。やはり日本通訳学会のサイトに案内があります。この日、東京では「翻訳研究分科会」があり、Dublin City UniversityのMinako O'Haganさんの「翻訳研究としてのテレビゲーム」という発表があります。僕はすでにパワポ原稿を見ましたが、これは面白そうです。詳しくはやはり日本通訳学会のサイトで。
■ホミ・K・バーバ『文化の場所:ポストコロニアリズムの位相』(法政大学出版会)
一応翻訳についての言及もあるので。「多文化主義のエキゾチズムでも複数文化の多様性でもない」文化の混淆性Hybridityというアプローチは見るべきものがありそうだが、政治的にはナイーブにすぎるかもしれない。
■管啓次郎『コヨーテ読書:翻訳・放浪・批評』(青土社)
多くの移民・亡命者文学の翻訳を手がけている著者のエッセイ集。3部構成で、第1部が「翻訳という手仕事」で翻訳にまつわる8編のエッセイを収録している。
■鈴木宏昭『類似と思考(認知科学モノグラフ1)』(共立出版)
キース・J・ホリオーク/ポール・サガード『アナロジーの力:認知科学の新しい探求』(新曜社)
汎用思考ルール(推論規則)の限界から新しい思考の基盤としてのアナロジーへ。アナロジーは新しい知識の発見や仮説形成、批判などに有効だが、翻訳の分析にも役に立つのではないかと思い始めた。たとえばGuttは関連性理論を援用して「解釈的類似」という概念を翻訳に適用したが、その場合の類似は目標言語が同様の「文脈効果」をもたらすということにすぎず、テキストとしてのAとBが類似するとはどういうことなのかについては何も言っていない。「似る」とか「類似する」の中身がない限り、「等価」を言葉だけで置き換えただけにすぎないことにならないか。
■今日は暖かかったので大学に行って入試関連書類(研究計画書)をもらい、研究室の引っ越しのために少し片づけをする。できるだけ身軽でいたいのでモノを置かないようにしている。途中でビックカメラに寄り、無線LAN用の新しいルーターを買う。NTTの売り込みについに根負けして先日光にしたのである。光といっても体感としてはほとんど変わらない。まあ光にしたのはADSLがあまりに不安定だったという理由が大きいので、速度はどうでもいいのだ。
■『通訳者翻訳者になる本2007』(イカロス出版)のグラビアページに柴原さん(男性のほう)が載っている。
■最近買った日本語の本から少し紹介。といってもあまりお薦めはありません。
『座談会 昭和文学史5』(岩波書店)
これは「翻訳文学」の章があるため。清水徹・柴田元幸・井上ひさし・小森陽一が参加しているが、資料的な価値はない。値段高すぎ。
楠本君恵『翻訳の国の「アリス」-ルイス・キャロル翻訳史・翻訳論』(未知谷)
Translation Studiesの枠組みではないが、これはまあいいんじゃないでしょうか。
亀井俊介・沓掛良彦『名詩名訳ものがたり-異郷の調べ』(岩波書店)
これも枠組みは比較文学ですが、導入用にはいいかなというところ。
明日に続く(かもしれない)。