MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

Facebookはこちらです。

「象徴主義の文学運動」の新訳

2006年04月28日 | 翻訳研究
アーサー・シモンズ(山形和美訳)『象徴主義の文学運動』(平凡社ライブラリー)が今年の3月に出ていた。たしか6冊目の邦訳になる。帯には「初の完訳決定版!!」とあるが、実際はユイスマンスのところが少し増えただけで、それを除くと新訳を出した理由がいまひとつはっきりしない。また日本への受容の問題や既存の翻訳についてはほとんど何も言っていない。あるテキストの翻訳の数が増えることは一般に歓迎すべきことだ(ソローの『ウォールデン』などは絵本を入れると20点を超える)。しかし何か差別化すべきではないのか。翻訳については次のような記述がある。
「平坦で読みやすい日本語訳というのが立派な翻訳であるということが通り相場になっているようだが、一種難解なこのようなシモンズの英語原文をどうして<平坦な>日本語に反訳しえようか。平易な訳文だけが立派な翻訳ではない。私がそのような思いに捉えられて久しくなる。この度も、シモンズの息遣いをひしひしと感じながら、原文の陰影と重みをできるだけ読み取れるような日本語に移そうと努めたつもりである。」現行ノームへの異議申し立てである。

第1回学生通訳コンテスト

2006年04月25日 | 通訳研究
東京外国語大学の学生たちが面白いことを始めた。学生たちによる「通訳研究会」主催で7月1日に学生通訳コンテストを開催する。学生通訳コンテストは名古屋外国語大学専修大学でも行われているが、「通訳研究会」としてはもっと幅広い参加者を望んでいるようだ。われこそは、という学生の皆さんはぜひ力試しを。詳しい内容や募集要項は日本通訳学会のサイトのイベント欄を参照して下さい。
実は1983年7月に、大阪で「第1回世界学生通訳コンテスト」が行われている。この催しは世界コミュニケーション年を記念して、世界コミュニケーション年国内委員会と日本通訳協会が主催したもので、235人の応募があったという。応募資格は大学、短大、高専、各種学校、高校に在学する者で、年齢制限はなかった。別枠で外国人も少数参加している。司会にはマーシャ・クラッカワーさんもいて、スピーチは元文部大臣の永井道雄氏だった。このコンテストの模様は『通訳事典No.3』(1983)(裏表紙にインターグループの宣伝があり、若き日の船山さんが写っている)にカラーページと本文レポートで詳しく紹介されている。参加者の中に今NHKでキャスターをしている○村さんの姿もある。(カナダ大使館賞受賞)この「世界大会」は1回だけで後が続かなかったようだ。外語の学生さんたちは頑張って続けて下さい。

最近買った本4

2006年04月20日 | 翻訳研究

昨日は大東文化大学大学院の卒業生の同窓会に参加。外国に行っている人もいるが、かなりの参加比率だった。みなさん着実にキャリアを築いているようで何よりです。

ナニワ太郎&大阪弁訳聖書推進委員会『コテコテ大阪弁訳聖書(愛蔵版)』(データハウス)一部だけ引くと、
★エジプトに逃げなあかんの巻
星占いのおっちゃんらが帰ってしまうと、神はんの使いがヨセフはんに現れて、こう言うたそうや。「起きんかい!子供と嫁はんを連れて、はようエジプトちゅうとこへ逃げてこませ。ほいでわてが教えるまで、そこにおれ。」
原文:Now when they were departed, behold, an angel of the Lord appeareth to Joseph in a dream, saying, Arise and take the young child and his mother, and flee into Egypt, and be thou there until I thell thee:
「彼らが帰って行ったのち、見よ、主の使が夢でヨセフに現れて言った。「立って、幼な子とその母を連れて、エジプトに逃げなさい。そして、あなたに知らせるまで、そこにとどまっていなさい。」という標準訳よりはずっといいと思うのだが、いかが?ただ、「一丁大阪弁で読んでみたろ」という以外に訳した理由がわからないし、その意義もいまひとつ。

Budick, S. & Iser, W. (1996) The Translatability of Cultures: Figurations of the Space Between. Stanford: Stanford University Press.
タイトルを見ただけでもそのセンス(問題意識)の古さはある程度わかるし、サブタイトルで「おっ」と思ってインデックスを見ても、BermanもBhabhaもSpivakもVenutiも見あたらない。おまけにLudwig Pfeifferという人が日本について書いているのだが、そのタイトルがThe Black Hole of Cultureというんだから・・・。分野としてはTranslation Studiesではなく、Critical Theory/ Cultural Studiesになっている。


CETRAほか

2006年04月15日 | 翻訳研究

まずCETRAのサマーセッションのお知らせ

CETRA
Leuven Research Center for Translation, Communication and Cultures
Leuvens Studiecentrum voor Vertaling, Communicatie en Culturen
Centre d'Etudes sur la Traduction, la communication et les cultures

18th CETRA Summer Session
2006 CETRA Professor: H. Trivedi (University of Delhi)
4 - 16 September 2006
Misano Adriatico (Italy)
 
In 1989 CETRA has initiated an international PhD and post-PhD programme for scholars in Translation & Intercultural Studies. CETRA has alumni on 5 continents. Many among them play an active role in the discipline.
The list of CETRA Professors is the richest repertoire of scholars in the field that can be provided, from Gideon Toury, Susan Bassnett, Andre Lefevere, Anthony Pym…to Lawrence Venuti and Mary Tymoczko. The 2006 CETRA Professor is Harish TRIVEDI (University of Delhi). He will be surrounded by the CETRA staff which is another collection of highly ranked scholars such as Jose Lambert, Yves Gambier, Andrew Chesterman, Christina Schaffner…
The 18th session functions as a combination of the traditional summer programmes with an Intensive Programme of the European Union (IP 27945-IC-1-2004-1-BE-ERASMUS-IPUC-4) in which a selection of universities from the new member states are integrated into the planning of their PhD curricula in Translation Studies.
 
Interactive e-Learning support is part of the planning before, during and after the two-weeks-sessions.
 
Participation in CETRA provides international ECTS credits on the basis of ERASMUS EU traditions.
Enrolments possible for the 2 weeks Summer Programme (Full Board
included): 1250 EURO.
 
Further info and applications: See http://fuzzy.arts.kuleuven.be/cetra/

立教大学院今期最初の授業は「リサーチワークショップ(通訳翻訳)1」。12-3人も受講者がいた(正確にはうち4人は受講者ではなく聴講なのだが)。大変嬉しい。今日はこれをやってみました。そのあと、「異文化コミュニケーション研究」を6時まで。6時半から新入生歓迎会で盛り上がる。

同僚の内山先生から新刊を頂く。
内山節『「創造的である」ということ(上)農の営みから』(農文協)
内山節『「創造的である」ということ(下)地域の作法から』(農文協)
いったいいつ書いているのかと不思議に思うほどです。読んだら感想を書きます。


最近買った本3

2006年04月14日 | 翻訳研究

白石静子(監修)『図録新資料でみる森田思軒とその交友:龍渓・蘇峰・鴎外・天心・涙香』(松柏社)
未公開の新資料(図版)を中心にまとめてある。すでに伝記は出ているが、こういう資料も楽しい。

柴田元幸『翻訳教室』(新書館)
大学の学部の翻訳演習を元にした本。短い課題文を与えて訳させ、それについて論評、討論するという形式。

翻訳通訳に関する国際会議やセミナーの案内がたくさん来ていますが、そのうち重要なものを明日にも紹介します。


お知らせ2件

2006年04月12日 | 翻訳研究

日本通訳学会翻訳研究分科会第3回会合のお知らせです。

翻訳研究分科会の第3回会合を以下の要領で開催します。今回は長沼美香子さんの発表です。また短時間ですが、国際交流基金のプロジェクトで来日中の松本Sturt洋子さん (Lecturer, Edinburgh University)からEdinburgh大学での取り組みを紹介していただきます。

[日時]: 4月23日(日) 時間: 午後1:00 - 3:30
[場所]: 立教大学 (池袋キャンパス) 12号館地階第2会議室
[演題]: 「SFL理論における翻訳研究: 日英語間での翻訳と文法的比喩」
[発表者]: 長沼美香子さん(通訳・翻訳者、大学講師)
[概要]: 選択機能言語学 (Systemic Functional Linguistics: SFL)と翻訳研究という大きな枠組みの中から、具体的なテクスト分析で文法的比喩を論ずる。Malinowski や Firth の流れをくむロンドン言語学派の Halliday を中心とする SFL 理論では、「言語は意味の体系」であり、「選択される意味を具現する形式」を探究する。この具現される意味と具現する形式とのずれが文法的比喩であり、本発表では名詞化に焦点を当ててSLとTLを分析、検討する。

[ゲスト] 松本Sturt洋子さん (Lecturer, Edinburgh University,)

[参加費] 会員: 無料   非会員:1,000円  ・定員は38名です。
・会場への行き方:JR池袋駅西口を直進、丸井を過ぎて立教通りに入る。
・アクセス地図、申込方法は学会HPを参照して下さい。URLは以下の通りです。http://wwwsoc.nii.ac.jp/jais/index.html

フリーセミナーのお知らせです。
The Intercultural Studies Group at the Universitat Rovira i Virgili in Tarragona, Spain, offers free seminars for training researchers in Translation Studies.
The seminars are as follows:
 
RESEARCHING TRANSLATOR TRAINING
Dorothy Kelly (Universidad de Granada)
28 - 31 May 2006
 
ANALYSIS OF AUDIOVISUAL TRANSLATION
Yves Gambier (University of Turku)
1 - 3 June 2006
 
TRANSLATION AND HUMAN-LANGUAGE TECHNOLOGIES
Belinda Maia (University of Porto)
1 - 3 June 2006
 
RESEARCH ON INTERPRETING
Miriam Shlesinger (Bar-Ilan University)
Franz Pochhacker (University of Vienna)
5 - 7 June 2006
 
All seminars are in English. Candidates may attend one or several of the seminars. 
Candidates should be able to show that they are carrying our research in the area of the seminar, or that they intend to do so. They would normally be enrolled in a PhD program.
 
Further information here: http://isg.urv.es/publicity/doctorate/open_seminars.htm
Please send a letter of intention (outlining your background, CV and proposed research project) to.
alexander.perekrestenko@estudiants.urv.cat
Deadline: 30 April 2006


最近買った本2

2006年04月07日 | 

軽いものから片づけていきます。画像とリンクはなしね。

伊藤ゆかり『専業主婦からかけ出し通訳へ』(新風舎)
タイトル通りの本。帯の文句は「語学留学はしない」「英会話学校に通わない」「節約」をモットーに素人から通訳デビューを果たした"40代現役主婦"の情熱溢れる奮戦記!社内通訳の人には役に立つかも知れない。

石原千秋『学生と読む「三四郎」』(新潮選書)
帯に「S大学での授業を再現した、最良のテクスト読解入門」とあるので、その筋の解説書かと思ってしまうが、実はそうではなく、文科系大学生の勉強の仕方と大学教員入門と言った方がいい。タイトルに偽りありなのだが、いい方に裏切っていて面白い。新米の大学教員は読むべし。

斉藤兆史『日本人に一番合った英語学習法』(祥伝社黄金文庫)
3年前に出た本だがこんど文庫になったので一応紹介しておこう。
「かつて日本人は、英文法を知っていても英語が話せないと言われた。現在はどうか。少なくとも、過去20年以上大学で英語を教えてきた経験から言えば、いまの学生は文法も知らなければ話せもしない。
 文部科学省が早くその英語教育の方針を修正しないかぎり、これからますます日本人の英語はおかしくなっていく。おそらくは、見切り発車的に導入した小学校の英語教育なども、まったく効果を現さないであろう。」
というような現状認識はいいのだが、では日本人に一番合った英語学習法は何かと言えば、「何と言っても素読、暗誦、文法学習、そして多読」+(筆写)だと言う。そこから先が問題だと思うのだが。

国立国語研究所編『国語シリーズ別冊4 日本語と日本語教育-文字・表現編』(大蔵省印刷局)
この中に、春名万紀子「翻訳論」という論文が収録されている。何しろ1976年出版の本なので、理論レベルがCatford, Savory, Nidaなのは仕方がない。他にも日西、日朝比較表現論とか、「ナル」表現と「スル」表現(寺村秀夫)、日本の象徴詩などの論考を含む。資料的価値はある。


「団塊ひとりぼっち」など

2006年04月04日 | 雑想

山口文憲『団塊ひとりぼっち』(文春新書)
類書は多くあるが、これは比較的よかった。団塊以外の世代の人にも面白く読めると思う。何よりも団塊の世代=全共闘世代という等式を数字を挙げて否定しているところがいい。以前にも言ったと思うが、1966年の大学進学率は四大・短大合わせて16%にしかすぎないし、民青系や体育会系、ノンポリ(一般学生と言ったものである)の方が多数派のところも多かったはずだから、5%に満たない可能性もある。もちろん高校全共闘というのもあるにはあったが。
山口は同世代の体験を幅広くすくい上げており、変に自虐的にもならずお笑い調で語っている。別にこの世代を特別視、特権視する必要はぜんぜんないんだよ、と言っているようで好ましい。帯には「団塊の先行きに不安材料なし。あるのは語りたくない過去だけ。」とあるが、何か社会科学的分析があるわけではなく、団塊はしぶといから当分死なないし、出生率減で人口が減り始めるから総人口に占める比率はさらに高くなり、今後はもっとでかい顔ができる(数は力)というだけの話。付録に「団塊世代の主な著名人」のリストがあるので、自分にいちばん誕生日が近いのは誰かなと見たら、江畑謙介、桝添要一、谷村新司、村上春樹、武田鉄矢…。

■「ちびまるこちゃん」実写版のサイトができていた。みぎわさんと永沢君が何とも…。


最近買った本1

2006年04月02日 | 

Skehan, Peter (1998) A Cognitive Approach to Language Leaning (Oxford University Press)
言語学習(修得)の言語心理学と認知的側面に焦点を合わせたOxford Applied Linguisticsシリーズの一冊。言語学と社会言語学を、第二言語修得理論から言語心理学への関心を遠ざけてしまったと批判しているのはいいのだが、肝心の中身の方がこれでいいのかなという感想をぬぐい去ることができない。working memoryへの着目はいいとしても、論拠につかっているのがGathercole & Baddeley一冊で、突っ込んだ議論もなく、すぐに「気づき」noticingに話の中心が移ってしまう。わりと定評のある本のようだが、何だかなあ。まあ8年前の本ということで。

Moya, Virgilio (2004) La Selva de la Traduccion: Teorias Traductologicas Contemporaneas. Madrid: Catedra.
たしかAmazonで英語のタイトルもついていたので買ってみたら全編スペイン語であった。副題から読み取れるように「現代翻訳理論」の本。Vinay and Darbelnetから始めて、Catford, Nida, 次になぜかSeleskovitch & Lederer, その後は穏当にSkopos理論、Even-Zohar, Toury, Lefevere, Deconstruction, Feminism and Translationという構成。Seleskovitch & Ledererの章を別の内容に差し替えればバランスの取れた入門書になったろうに。

『決定版三島由紀夫全集第41巻』(新潮社)
普通こんな本は買いませんが、この巻、実は「音声」を集めたものでCDが7枚ついている(というか、CDに30ページほどの小冊子がついているもの)。そのうちの一枚が「私はいかにして日本の作家となったか」という1966年の英語の講演。なので一応買ってみた。聞いてみたら音質はよくないし、英語はうまくないのに早口でいいところなし。あとは戯曲の本読みとか日本語の講演、盾の会の歌、映画「からっ風野郎」の主題歌(笑)などが収録されている。