MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

Facebookはこちらです。

ねじ式人形1

2005年06月29日 | 雑想
toraneko285さんが「心に残っている本」の一冊に『ねじ式』を挙げていたので、じゃあこれはどうだ、と自慢してみる。「ねじ式人形」(ミント状態のため、包装のパラフィン紙が反射してしまうが)。夜行塗料が塗ってあって暗闇でぼんやり光る。「ねじ式」で不気味に歩き回る。時折「イシャはどこだ!」と叫んだりする(これはうそ)。

新刊紹介2点ほか

2005年06月28日 | 翻訳研究

頂き物のお礼を兼ねて紹介。

『世界の大学・大学院における通訳翻訳学プログラム』(平成16年度特別研究費II:「日本の国内外大学及び大学院における通訳翻訳教育、トレーニング、研究についての調査・比較研究」報告書(研究代表者 津田守)これは大阪外国語大学の津田先生から。中国(北京と香港)、オーストラリア、ドイツ、フランス、イギリス、ペルー、メキシコ、アメリカの大学、大学院での通訳翻訳プログラムを、実際に訪問調査して詳しく報告しています。

玉井健・西村友美『英語シャドーイング 映画スター編Vol. 2』コスモピア)シャドーイングのシリーズ最新刊。今度は西村さんの「ミス・シャドー」も登場する。ナチュラルスピード(200 wpm)の素材を体系的に配置し、詳しい解説をつけた得難い教材です。

久しぶりにコメントとトラックバックを頂いたのに返事が遅れてすみません。修士論文の指導や授業準備、学会雑務といろいろありまして、ブログはついつい後回しになってしまいます。修士論文のテーマに関連するものは自分も読んでおかないことには話にならないので、それにも時間が割かれます。(おまけにいろいろな理論的枠組みが使われる。)しかし、それはそれで楽しい作業ではあります。いろいろな発見があるのは当然ですが、何よりも面白い。それに日本の翻訳研究の基礎を作るのに少しでも貢献できるという可能性もあります。

 


3つの邦訳

2005年06月22日 | 翻訳研究

これは橋本福夫訳・J.D.サリンガー『危険な年齢』の表紙。著者名、タイトルからはわかりにくいが、サリンジャーのThe Catcher in the Ryeの初の邦訳なのだ。原著は朝鮮戦争のさなか、1951年の発行だが、橋本訳は早くもその翌年に出ている。その13年後の1964年に野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』が出て、名訳としての評価を得て広く読まれた。そして約40年後の2003年に村上春樹訳『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が出版される。橋本訳からは半世紀以上経過しているわけだ。
村上訳についてはAmazonの読者書評でも圧倒的な支持があるようだが、これが果たして翻訳評価につながるかどうかは疑問符をつけたいところがある。支持している読者はただ「村上春樹」を読んでいるだけなんじゃないか、と思うからだ。(それに、なぜ今新訳なのか?という疑問は村上春樹のあちこちでの説明にもかかわらず、残る。)受容する側はそれでいいのだが、それでは翻訳の評価にはならない。翻訳研究の手法で多面的に比較分析する必要があると思う。切り口は、訳語、罵倒語、個人語ideolect、modal particle、ノームなど、いろいろ考えられる。先行研究は、すでにスエーデン語訳やポルトガル語訳などについていくつかある。しかし半世紀にわたって3つの翻訳があるのはおそらく日本語だけだろう。(もちろん古典の翻訳は事情が異なる。)ほんの2ページほどチェックしてみた。見にくいかもしれないが、左が橋本訳、真ん中が野崎訳、右が村上訳だ。

鳥打帽子  ハンチング  ハンティング帽
耳垂れ  耳あて  耳あて
手袋をくすねた  手袋をかっぱらった  手袋をかっぱらった
押入れ  押入れ  クローゼット
おりやそんな物はいらん  おれは用はねえや  そんなもの俺はいらないんだからさ
一撃くれてやるべき  一発くらわす  がつんと一発くらわして
きもつたま  度胸  ガッツ
ぬすつと  ぬすっと  こそ泥
 × この汚らしいゲジゲジ野郎め  この薄汚ねえこそ泥野郎が!
決着させよう  かたをつけようじゃねえか  話をはっきりさせようぜ
愉快なことじゃないよ  イカさないもんさ  愉快なことじゃないんだよ
一向むとんちゃく  あんまり気にしないんだな  そんなに気にしない
カンカンに怒らせた  怒らしたもんさ  逆上させた
かもしれん  かもしれない  かもしれない
やつてのけるべきだ  ぜひそれをやるべきだよ  そうするべきなんだ
グデングデンに酔っぱらった  めちゃくちゃに酔っぱらった  ひどい酔っぱらい


講演会のお知らせ2件

2005年06月16日 | 通訳研究

6月18日、学習院大学で「職業としてのドイツ語通訳」と題して、桑折千恵子さんの講演会があります。詳しくはリンク先を参照して下さい。

もう一件は原不二子さんの講演会です。
日時:6月24日(金)18:30~21:00
場所:上智大学/ソフィアンズクラブ(四谷)
料金:卒業生2,000円学生、500円(軽食付き)
講師:原不二子さん(株式会社デプロマット代表取締役、会議通訳)
テーマ:「通訳ブースから見る世界」 


新しい科研費報告

2005年06月08日 | 通訳研究
神戸市外国語大学の船山さんたちによる新しい研究成果報告書ができた。タイトルは『同時通訳データに基づく言語理解過程のミクロ分析』で、船山仲他「発話理解のミクロモデル」、南津佳広・西村友美「同時通訳におけるリアルタイム訳出の分析-名詞句"NP1 of NP2"とその訳出をめぐって-」、玉井健「外国語単語記銘における語長効果についての検討-Hulme et al.(2004)の疑問をもとに-」の3編の論文に、<資料編>として同時通訳コーパスが付属している。沢山作ったと思いますので、ほしい方は連絡してみるといいかも。

今年も「モントレー国際大学・神戸女学院大学 通訳教授法セミナー2005」が行われるという案内が届いた。8月5日と6日の2日間で、5日にはChuanyun Bao氏の公開講演(無料)もある。セミナー自体は定員20名で通訳経験が5年以上ある人、という制限がある。詳しくはこちらをごらん下さい。

ニックペイカーに正義を

2005年06月07日 | 通訳研究
運び屋にだまされ、不十分な通訳・翻訳もあって、1150日以上拘置されているイギリス人、ニック・ベイカーさんの裁判があさって東京高裁で行われる。知り合いの通訳者が支援しているというので行ってきます。この冤罪事件の詳細は「ニックベイカーに正義を!」のサイトをごらん下さい。傍聴したい方は、6月9日(木)午後3時から、場所は東京高等裁判所第718法廷です。通常は1時間半程度で終わるとのことです。今回は弁護人による被告人質問の続きが予定されています。

「手話の理解も左脳優位」

2005年06月06日 | 通訳研究
木村晴美さんと市田泰弘さんが東大の酒井さんたちと一緒に書いた、Sign and Speech: amodal commonality in left hemisphere dominance for comprehension of sentencesがここで読める。日本語で書いた一般向け資料「手話の理解も左脳優位:脳での文章理解は手話と音声で完全に同じ」は、木村晴美さんのブログからどうぞ。「この(研究の)結果により、手話と音声言語の左脳優位性に関する論争に最終的な決着をつけることができ、脳における言語処理の普遍性が示唆された。ろう者が手話を母語として獲得することの必要性を科学的に裏付けた本研究成果は、ろう教育や医療現場の改善につながることが期待される」とある。とても重要な研究だと思う。どう重要かは「手話の理解も左脳優位」を読んでいただきたい。

講演会+ワークショップ

2005年06月06日 | Weblog
5月28日のLawrence Venuti+Michael Kelly講演会は200人を超える参加者を得て無事終了しました。2人ともスピードとdictionの点で通訳者にとってはほぼ理想的といえるスピーカーでした。翌29日のワークショップも定員いっぱいの50人が参加、活発なやりとりがあり内容的にも充実したものになりました。翻訳研究への関心が高まっているとすれば嬉しいのですが。(写真はワークショップ)