お知らせ
■来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。
■『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。
■『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。
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Facebookはこちらです。
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■ちょっと評判になっているプログレッシブとかウィズダムクラスのさる辞書を買おうと、久しぶりに神保町に行く。実際に見てみるとそれほどでもなかったので買わず。通訳翻訳関連の棚を見ると、田辺さんと光藤さんの新刊が出ていた。
田辺希久子・光藤京子 (2008)『英日日英 プロが教える基礎からの翻訳スキル』(三修社)である。「英日、日英」の両方をカバーしているのが斬新だ。
■前に紹介したかも知れないが、来年の4月3-4日にカリフォルニアのMIISで、通訳翻訳教育における評価assessmentをテーマとしたFORUM2009という会議が行われる。プロポーザルは12月15日までとのこと。詳しくはこちら。
■今週から後期の授業が始まり、その中身とコンセプトをどうするかでいろいろ考え、時間がかかった。「通訳翻訳特論」と「RW(Research Workshop)通訳翻訳基礎」というふたコマをやるのだが、なかなかやり方が難しいのである。前者は授業のたびに教材をコピーするのが辛気くさいので、あらかじめウェブにアップしておいてそこからダウンロードさせることにした。後者は出たばかりの『通訳論入門』を読んでいく。Pochhackerさんが紙数の制約上十分書けなかったことを解説すると同時に、訳本の不分明なところを指摘してもらって検討するという内容になる。
■John BenjaminsのBook Gazette秋の号によると、翻訳通訳研究の新刊は以下の3点。
Cintas, J.D. (Ed.) (2008) The Didactics of Audiovisual Translation
Chiaro, D. et al. (Eds.) (2008) Between Text and Image: Updating research in screen translation
Rodrigo, E.Y. (Ed.) (2008) Topics in Language Resources for Translation and Localisation
いずれもBenjamins Translation Librayシリーズ。他にJanzen. T. (Ed.) (2005) Topics in Signed Language Interpreting: Theory and Practiceのペーパーバック版が出た。
■画像は小坂さんからの頂き物、小坂貴志(監訳)『チャイナCEO』(バベルプレス)。サブタイトルの「多国籍企業20社のCEOが語る中国体験と助言」でだいたいの内容の見当がつくと思う。翻訳チームの中には西田さんの名前もある。
もう1冊いただいたのが、草柳益和(監修)『プロが教える英語の勉強法』(法学書院)で、英語のプロの体験に根ざした勉強法の紹介とキャリア案内の本だ。全部で7人のプロが書いているが、草柳さんの他、小坂さん、石黒さん、そして木村綾子さんと、知り合いが半分を占める。写真もいろいろあって楽しい本だ。
■絶版本(しかし入手可能)で、宮本昭三郎(1993)『源氏物語に魅せられた男-アーサー・ウェイリー伝』(新潮選書)。これは知らなかった。伝記なのだが、1925年に「源氏物語」の英訳が出た直後の外国と日本での評価に触れており参考になる。その後「源氏」の英訳は3種類ほど出ているはずだから、国文学に強い人は翻訳研究の視点から取り組んでみるのもいいだろう。
■Nyhedsbrev Refsing, Kirsten & Lita Lundquist (2008) Translating Japanese Texts, Museum Tusculanum Press.という本が出るようだ。この版元Museum Tusculanum Pressはコペンハーゲン大学の出版局で、他にも翻訳関連の本を出している。この種の本はきわめて珍しいのではなかろうか。(日本語でならたとえばサイデンステッカーの(ほとんど役に立たない)本をはじめ、いくつかがあるが。)
説明文によると、コンセプトは日本語のテキストを翻訳する際の問題と方略で、対象とする読者は学生、教師、プロ翻訳者となっている。理論的立場は、「テキストは様々なレベルの言語的素材と語用論的・認知的・文化的メカニズムの相互作用によって作られる。したがってすべての翻訳はこうした要因を考慮しなければならない」というものだ。これだけではあたりまえすぎてどの程度の記述になるのか分からないが、著者の一人Lundquistがテキスト言語学と翻訳理論が専門というから、ある程度期待できるかもしれない。日本語と英語のペアを扱い、この二言語の体系的差異に焦点を合わせるが、英語以外の言語への翻訳や翻訳一般の問題にも触れることになっている。現物を入手したらまた報告します。
■こちらにもアップします。下記の要領で例会を開催します。
[日時]10月12日(日)午後1:00―5:30
[場所]青山学院大学総研ビル11階第19会議室
第1部1:00―3:00
[演題] 裁判員制度と通訳人について
[発表者]:大野重國 最高検察庁裁判員公判部検事
[概要] 来年5月から裁判員制度が始まることを受け、多言語が必要となる法廷通訳人の役割と課題について語る。
第2部 3:30―5:30
[演題]「よしもとばななの翻訳」
[発表者]アレッサンドロ・ジェレヴィーニ 早稲田大学客員准教授
[概要] よしもとばななの作品は、イタリアで大変人気を博しているが、それにはイタリア語訳の力も大きい。翻訳としてどういう点が日本語からイタリア語の文学翻訳で難しいか、特に配慮を要したかをはじめ、文学翻訳に必要な心得について語る。
[参加費]会員 無料 非会員:1,000円
会場の行き方:JR山手線、東急線、京王井の頭線「渋谷駅」宮益坂方面の出口より徒歩約10分、地下鉄「表参道駅」B1出口より徒歩約5分
総研ビルは正門を入ってすぐ右側の建物。
http://www.aoyama.ac.jp/other/map/aoyama.html
[参加お申し込み・問い合わせ先]日本通訳学会事務局(水野的)
e-mail:secretariat@jais-org.net FAX:03-3811-9836
■大会の残務や編集委員会の仕事、秋学期の準備などやるべきことが山積しているのだが、この新刊だけは紹介しておきたい。カラスヤサトシ『おのぼり物語』(竹書房)。「漫画家志望のある青年が東京へ来て右往左往する物語」である。カラスヤサトシは『カラスヤサトシ』1-3で少しだけブレークした。こちらは心挫けそうになった若者に、「まだあいつがいる」という慰めを与えてくれる作品だったが、『おのぼり物語』は『三四郎』以降の日本近代のおのぼりさんたちが経験した不安とあこがれ、挫折と夢の形象化の伝統に連なる普遍性をもった見事な作品だと思う。(絵はごらんの通りだが。)後半の・・・のエピソードでは不覚にも涙してしまったのである。(Amazonのレビューでもネタばれを避けていたので伏せ字にしておく。)おのぼりさんはもちろん、そうでない人も買って損はない。
■書影はあえてスキャンした。Amazon他のサイトの書影にはなぜか帯がないからだ。帯も含めてのブックデザインなのだから何とかすべきだろう。(他のサイトは知らないがAmazonの場合は各出版社が自分で画像をアップしている。)『おのぼり物語』では帯の緑色が全体を引き締めている。ところがリンク先の画像の通り、帯を外すと白でしまりがない。ついでにやはりネット上では帯なし画像しかない『カラスヤサトシ』3の帯つきもごらんいただこう。「時代の最後尾を行く!!」というすてきなフレーズがある。
■Mason, Marianne (2008) Courtroom Interpreting (University Press of America) という本が9月末に出版される。ちょっと変わった印象を受けるのは、この本が法廷(司法)通訳者の認知的過負荷cognitive overloadを主題にしていることだ。著者は言語学分野の人だが、この場合の認知的過負荷がどのレベルの話なのかは不明。版元のサイトにある説明を見てもよく分からない。(以下はUniversity Press of Americaのサイトの説明文だが、つながらないのでキャッシュから取った。)
In Courtroom Interpreting, Marianne Mason offers a new perspective in the study of courtroom interpreting through the exploration of cognitive and linguistic barriers that court interpreters face everyday and ultimately result in an interpreter's deviation from original linguistic content. The quality of an interpreter's rendition plays a key role in how well a non-English speaking defendant's legal rights are served. Interpreters are expected to provide a faithful rendition of all semantic, syntactic, and pragmatic content regardless of how difficult the task may be at a cognitive level. From a legal perspective this expectation may be sound as it disregards the cost associated with the interpreter having to account for a great deal of linguistic content. Mason proposes that if the quality of interpreters' renditions is to improve and the rights of non-English speaking minorities is to be better served the issue of cognitive overload needs to be addressed more effectively by the court interpreting community.
■昨日は書けませんでしたが、大会は無事終了しました。今年は会場をコミュニティ通訳関連、会議通訳・通訳教育関連、翻訳研究関連と分野で分けたのにもかかわらず、3会場同時進行でも参加者が極端に少ないセッションは見られなくなりました。(院生コロキアムも24名が参加し、大成功だったという報告がありました。)発表は国際会議でも通用するようなものもあり、全体的にレベルアップしています。また、若い力の台頭を感じました(少なくとも僕が張りついていた会場はそうでした。)あとは翻訳研究をもう一段てこ入れして、早く次の世代にバトンタッチするのみ。写真は使い捨てカメラで撮ったのが何枚かありますので後日アップします。
■今回の学会では学会名を「日本通訳翻訳学会」に変更したことに端的に表れているように、翻訳研究の確立と推進を大きなテーマに掲げたわけだが、「日本フランス語フランス文学会」の今年の春期大会でも「翻訳の社会学」というテーマでワークショップを行っている。ここでは加藤晴久さんが「翻訳学確立のために」の中で、最近話題になったLe Petit PrinceとLe Rouge et le Noirの邦訳を巡る問題を取り上げ、Translation Studiesが「日本の大学の外国語・外国文学関係の学部学科・大学院にとって、生き残りのかかったひとつの可能性を示していると思われる」と書いている。
■Routledge Enclyclopedia of Translation Studiesの第2版が11月末に出版されるようだ。11年ぶりの改訂版ということになる。今回は30ほどエントリーを追加したという。初版は3冊買ったのだが、最近この本のハードカバーが異様に高価だという話を聞いて、確かめてみたら確かにそうだった。(でもこんな表紙ではなかったような。)今度はペーパーバックが出るまで待とう。
■とりあえず報告です。 本日行われた年次大会総会において、学会名称を日本通訳学会から日本通訳翻訳学会に変更する提案が、挙手による採決の結果、満場一致で承認されたことをお知らせします。またFITへの団体加盟の方針も採択されました。第一会場の模擬法廷と司法、医療通訳のセッションにはNHKテレビの取材が入り、参加者も例年を上回る盛況でした。
■書籍販売はみすず書房と大阪教育図書、週刊ST(ジャパンタイムズ)、『通訳翻訳ジャーナル』にアルクの取材とにぎやかでした。約束通り会場となった獨協大学の入り口には電光掲示板による表示がありました。撮影したのですが、直後にカメラが故障し、写真はありません。大会は明日も続きます。
■年次大会まであと4日である。今年は司法通訳の特別プログラムがあった去年にくらべてやや低調かなと思っていたら、今日になって参加者数が去年と同じになった。最終的には去年を若干上回る可能性が大きい。毎日参加者数を集計している身としては大変嬉しい。取材や書籍販売などもあるので結構にぎやかになるかもしれない。参加しようと思っている人はここから申込用紙をダウンロードして送ってください。
■「日本通訳学会」から「日本通訳翻訳学会」への名称変更(と規約改正)も承認されるだろうし、翻訳関連の発表も半分近くあるので、翻訳に関心のある人にとっても入って行きやすい学会になると思う。通訳研究はもちろんのこと、翻訳研究も日本でこれだけのことをやっているところは他にないから、名実共に日本を代表する通訳翻訳研究団体になる。問題は最近通訳研究の方がややパワーダウンしているように感じられることか。確かに翻訳研究にくらべると素材の点で研究しにくい面はあるが、そういう場合は理論的研究でも、少数の事例を使うケーススタディでもいい。方法論や理論的概念が不十分ということはないと思う。その意味では、明日発売になる『通訳学入門』がひとつの指針を提供することになるだろう。大きな書店には並ぶと思いますので、是非手にとってご覧下さい。大会でもみすず書房がブースを出して販売します。