MITIS 水野通訳翻訳研究所ブログ

Mizuno Institute for Interpreting and Translation Studies

お知らせ

来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。

『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。

『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。

Facebookはこちらです。

ウェブジャーナル『翻訳研究への招待』4号完成

2010年05月31日 | 翻訳研究
お待たせしました。ウェブジャーナル『翻訳研究への招待』4号が完成しましたので公開します。こちらをごらん下さい。ウェブ化の経緯は編集後記をごらん下さい。第5号は秋の刊行を目ざしますので、投稿をよろしくお願いします。

日本ゲーテ協会シンポジウム

2010年05月30日 | 催し
28日に行われた日本ゲーテ協会シンポジウム(「ゲーテ時代の翻訳思想」)に行ってきました。J.G.ハーマン、ヘルダー、シュライアーマハー、シラー、メショニックの翻訳論をめぐる興味深い発表でした。このあたりまでは十分にTranslation Studiesと接点があるなと感じます。

MIIS TIJ 25周年記念シンポジウム プログラム確定など

2010年05月25日 | Weblog

6月20日に六本木国際文化会館講堂で開催される、モントレー国際大学(Monterey Institute of International Studies、MIIS)翻訳通訳大学院日本語(TIJ)プログラムの創設25周年記念シンポジウム「これからの通訳翻訳教育」のプログラムが確定しました。こちらをごらん下さい。

 KSCIのFORUM最新号(Vol.8 No.1, 2010)が届いた。10本の論文を収録している。なお、本日Editorial SecretaryのHyang-Ok Limさんからメールがあり、次の締め切りは8月2日とのこと。日本通訳翻訳学会の会員は投稿できますので、投稿する方は以下の規程を参照して下さい。
The original unpublished article can be written either in English or in French and should be at least 20 pages long. Each article should include two abstracts, one in English and the other in French, five keywords and an author's biosketch which should be no longer than five sentences and include an e-mail address. All references should be cited following the APA style.


『ほっかいどうの通訳者たち』

2010年05月22日 | 



「ほっかいどうの通訳者たち」編集委員会(編著)『ほっかいどうの通訳者たち』(北海道通訳アカデミー)は、四半世紀にわたって北海道の国際化に寄与してきた通訳者たちへのインタビュー集である。草分け的存在である齊藤綾子さんをはじめとして、加島郁子さん、川内裕子さん、大島剛さん、熊谷ユリヤさん、鈴木千鶴子さん、高橋寿一さん、泉園子さんの8人に、ジャーナリストの酒井宏祐さんがインタビューしている。一人あたり約30ページが充てられており、外国語との出会い、通訳の経験、ことばとコミュニケーションに対する思いまで、かなり突っ込んだ内容の詳しいインタビューになっている。中でも、料金下げの圧力に抗しながら、通訳の質をたもつためにがんばっている大島剛さんの話に感銘を受けた。この問題については熊谷さん、高橋さん、泉さんなども触れており、深刻な問題であることがわかる。
 巻末には十数ページにわたって、通訳関連の用語や本書に登場する固有名詞などを解説した用語集がついている。現在、通訳者の体験をまとめて読める本は少ない。通訳者とその仕事に関心のある方にはおすすめの一冊である。書影では見えないが、帯には鶴田さんと篠田さんが推薦の言葉を寄せている。


大正時代の通訳者

2010年05月09日 | 雑想

連休とか関係ない身分になったのだが、いまだに9日までは休みと思い込んでいて困ったものである。そうはいっても息子が帰省してきたり、田舎に帰ったりで結構忙しい。

これ、上海万博に本当に出展されたのだろうか。かつての先行者といい、中国は面白い。

5月22日の例会で前座で発表するので、その準備をしていたら、浦口文治(1927)『グループ メソッド』の中に、通訳者についての記述を発見した。例会では使わないので心覚えを兼ねて以下に掲載しておきます。昭和2年の本ですが、大正時代の話と見ていいでしょう。(以下の文章を読んでいて違和感を覚えるとするなら、その感覚は正しい。浦口は英→日の翻訳に「グループ・メソッド」なるものを適用したため、自分が書く日本語も、「…なのは、…だ」のパターンに汚染されてしまったようなのである。)

「私の一友に博学多才の人がある。外人演説の通訳者として名をなした彼の率直な告白として伝へられた言葉に曰く、「諸君或は余の通訳振りを云々されるであらうが、演者と倶に登壇して満堂の聴衆に面しながら、わが右手の外人が流暢に弁じ去る處を聞取りて、しかも之を忘れないやうに勉めつつ、同時に之を邦語に飜やすべき工夫を重ねながら、一段一段之を片付けて行かねばならぬ其時の心の忙しさを察し得るもの果して幾人あるであらうか。自家の快弁に乗じて弁者が得意になる時、はた其言説に共鳴して聴衆が喝采し来る時、愈よ加はつて来るのは通訳者胸中の苦心である。かくて一席の役目漸く終るとともに、彼の覚ゆるのは人にしられぬ疲労である」と。約三十年前のこと、私もまた少しく積ませられたのは通訳者としての経験であった。それに照らして衷心より同情させられるのは此言である。其才至つて敏活なまた其学かなりに該博な彼にしてなほかつ此仕事の忙しさに辟易させられたとするならば、其力量尋常な語学者がかやうな飛まはり兼逆戻りの訳し方を急速に課せられる時、推察するに余りあるのはいかばかりの心力消費を必要とするかであらう。

(中略)

上に掲げた某友のやうな上手の場合は別として、通訳を通じての演述は聴衆にとつて一般に屡々不得要領に終りやすいとされて居る。加ふるに通訳者心力の失費の甚しい事一般聴衆に知られないにかかはらず事実上述のやうであるならば、問題は通訳者個人別の力量如何といふよりも寧ろ目下普通に慣用されて居る通訳の仕方の可否如何といふ点に自然に移りゆくであらう。初めて日本人通訳者を通じて語る外人弁士等が往々怪ませられるのは演述中自己も用ふる時間と通訳者の要する處のそれとの間に大な差のある事である。彼等が屡々さしはさむ頓智的の戯談に曰く、「此等の通訳者はinterpreters(中だちの通弁)でなくて、寧ろinterrupters(中しきりの邪魔者)であるまいか」と。現在行はれて居る外国語研究法の最高成績の一として何人も公然屈指するを憚らない通訳とは其実かやうなもので、しかもこれ式の力をすら授けられて居る人数が極めて少いとすれば、私等の疑はずに居られないのは現行メソッドの適否如何という点であらう。(中略)愈々明らかになつて来るのは外国語学の研究上何かの新方式が速に案出されなければならぬといふ必要であらう。」(p.23-27)