お知らせ
■来月からこのサイトをMITIS(水野通訳翻訳研究所)ブログに変更します。研究所の活動内容は、研究会開催、公開講演会等の開催、出版活動(年報やOccasional Papers等)を予定しています。研究所のウェブサイトは別になります。詳しくは徐々にお知らせしていきます。
■『同時通訳の理論:認知的制約と訳出方略』(朝日出版社)。詳しくはこちらをごらん下さい。
■『日本の翻訳論』(法政大学出版局)。詳しくはこちらをごらん下さい。
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■木村榮一(2012)『翻訳を遊ぶ』(岩波書店)。これはなぜか見逃していた。2005年8月から2011年3月まで神戸市外国語大学の学長というから、船山さんの前の学長か。ラテンアメリカ文学をたくさん紹介・翻訳した人で、神戸市外国語大学イスパニア語科の第一期生だという。面白いのは学部卒業と同時に(つまり大学院を経ずに)助手に採用されていることだ。大学院がなかったのかもしれないし、人材不足だったのかもしれない。父親がなかなかの人で「思惑と越中ふんどしは向こうから外れる」と口癖のように言っていたという。木村さんは「お金はないけど、時間はたっぷりあるよ」という言葉につられて「大学に残った」(この言い方もなつかしい、たしかに当時そういう言い回しがあった)のだが、大学紛争で思惑が外れてしまう。深夜に及ぶ教授会に疲れはて、大学を辞めて自衛隊に入ろうかと思うのである。翻訳と関係ないところが面白い本である。
■10年前のこの記事で、ガセを書いてしまったようなので訂正します。宍戸儀一訳(1937)『象徴主義の文学』の献辞にある石川善助の死因を「泥酔して電車から川に転落して死んだらしい」と書いたのですが、少し違っていて、この記事によると「踏切で電車にあおられて溝に落ち、溺死した」というのが真相らしい。この記事は当時の新聞も引用し、場所も推理している。
■ちなみに死後友人たちが刊行した遺稿集『鴉射亭随筆』(鴉射亭友達会刊)があり、古書価が15万円以上する。私などには無縁の世界だが、復刻版が出ているし、近くの図書館に行けば国会図書館のデジタルライブラリで見ることができる。なお「鴉射亭」とは、愛読していたポーのアッシャー家である。
■ソローのWaldenの日本語訳は、ごく一部だけを訳したものを除くと15種類ぐらいになろうか。(不明のものもあるのでもう少し増えるかもしれない。)そのうち、初期の翻訳として今井嘉雄(訳)(1925 T14)『森の生活』(新潮社)がある。そして戦後になって、今井規清(訳)(1948 S23)『森の生活』(大泉書店)という訳が出ている。これを突き合わせて見ると、本文は一字一句に至るまで同じなのである。今井規清訳の「訳者の言葉」の末尾に「此の譯書は嘗て一度世に出して、幸ひに公表を博したものであるが」とあるが、今井規清名義の訳本の存在は確認できない。また「訳者の言葉」の冒頭も「私の心の中には、いろんな意味に於て、私の尊敬する、古今の人々が住んでゐる」(今井嘉雄)と「私の心の裡には、いろいろの意味で私の尊敬する古今の人々が住んでゐる」(今井規清)となっている。こんなところまで剽窃する奴はいないだろうから、まず同一人物と見てよさそうである。
■まったくの別人の訳がルビを含めて同一という例(Waldenではない)もあるが、これについてはいずれ。
■檜誠司さん(ジャーナリスト、英日翻訳・研究者)がJapan In-depthに「日米繊維交渉“善処します”誤訳伝説」という記事を4回にわたって連載した。先に『通訳翻訳研究への招待』に「「善処します」発言の誤訳問題の一考察」という論文を寄稿しているが、今回は一般向けに、しかし内容は加筆して書いている。「善処します」をめぐる都市伝説を打破する重要な論考であり、写真も豊富で読みやすい。まだ読んでいない人に一読をお薦めする。
(第一回から第三回まではリンクでたどれるが、第四回へのリンクがないので、以下に4回分のURLを書いておきます。)
http://japan-indepth.jp/?p=35492
http://japan-indepth.jp/?p=35649
http://japan-indepth.jp/?p=35775
http://japan-indepth.jp/?p=35887
■佐藤=ロスベアグ・ナナさんの『文化を翻訳する:知里真志保のアイヌ神謡訳における創造』(サッポロ堂書店)(定価2000円+税)を頂いたのでとりあえず内容を紹介します。本書は著者の学位申請論文「知里真志保のアイヌ神謡訳における創造-アイヌ文化とパフォーマンスを翻訳する」(2007)を基に、加筆修正をしたもの。藤井貞和さんによる推薦のことばと目次はこちら。
■知里真志保はアイヌとして初めてアイヌ研究を行った「ネイティブ人類学者」である。著者によれば、本書の主題は「知里真志保が、1950年代から精力的にはじめる、アイヌ神謡の文化的背景をも含みこんだ翻訳」とその周辺であり、既存の真志保研究とは「異なる観点から考究するひとつの冒険的試み」である。
全5章の構成は、「第一章では真志保の伝記的な側面と、真志保とアイヌ語、そしてアイヌ文化との関係、…アイヌの世界観」を論じ、「第二章では、第二次世界大戦後の日本における近代主義再評価の流れの中での、真志保の詩人との関係について、詩人たちの詩論と翻訳論に言及しながら考察する」。「第三章では、(…)彼が想定したアイヌのシャーマニズム(…)、アイヌ神謡の「原作」としての「起源」(…)、真志保と折口信夫との接点(…)、アイヌ神謡からアイヌの歴史を読み解こうとした、真志保の試みにも踏み込む」。「第四章では、真志保の50年代までの翻訳を(…)アピア・クワメ・アンソニーの「厚い翻訳」の概念を用いて考察し、真志保の創造性を織り交ぜた、パフォーマティヴ・トランスレーション」を、そして「第五章では、翻訳者としての真志保の可視性と、彼が行った神謡の文化翻訳が生み出す未来性について検証する」。
■なお、本書は一般書店では購入しにくいかもしれませんので、購入希望の方はサッポロ堂書店まで直接連絡して下さい。メールアドレスは以下の通りです。sapporodo@jeans.ocn.ne.jp
■Yukari F. Meldrumさんの本が出版された。Contemporary Translationese in Japanese Popular Literature: A descriptive Study (Lambert Academic Publishing)である。博士論文をもとにしており、これについては3月3日のエントリーで紹介してあるので詳しくはそちらを参照してください。ただ、版元にもAmazonにも説明文がないので、裏表紙の英文を転載しておこう。
One of the main aims of this research is to examine the translational situation of popular fiction in post-industrial Japan. The goal is to uncover two main aspects surrounding the phenomenon of translationese, the language used in translation. One aspect to be investigated is the characteristic features of Japanese translationese, and the other is readers' attitudes toward translationese. This research is conducted within the framework of Descriptive Translation Studies (Toury, 1995).
日本の翻訳研究にとって重要な文献が公刊されたことを喜びたい。日本のAmazonに注文すると時間がかかるようなので、Amazon.comの方が早いと思う。