光山鉄道管理局・アーカイブス

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3Dプリンターと鉄道模型に思うことから

2014-12-27 16:21:26 | 思いつくままに・考察
 先日、テレビの旧車のレストアの番組を観ていてクラシックカーのヘッドライトのパーツを復元するのに3Dプリンタを使う場面があり妙に感心しました。

 この間もごくラフな物ながらもN車両の車体に3Dプリンタを使う作例を目にしましたし、コストの問題がクリアされればこの新アイテムが鉄道模型のジャンルでも工作に革命的な変化をもたらすであろう事は容易に想像されます。

 何しろやろうと思えば「実車の設計図面を縮小して設計図通りの模型が作れる」可能性もある訳ですから革命でない訳がありません。

 ですがそれらによって「実物の縮小版」そのものの模型が容易に作れる様になった時、前にも書いた事のある「模型」と「オモチャ」の関係性にも大きな変化が出てくるのではないかと思えています。
 だれでも「実物の縮小版が作れる様になった時、一体どこに模型を作るプライオリティがあるのか」という問題が必ず出てくると思えるからです。

 或いはこれも以前触れた相馬御風の「実物と模型」の一節の様に「魂のない模型は実物に似れば似るほど実物から離れた観る物に不快感を与える怪物になって行く」
 の実現になるかもしれません。

 同じ一文の中に
 「人間の手をじかに型にとった石膏で造り上げた物を見た。しかしどういう訳かそれは少しも生きた感じを与えなかった。却って芸術家の目で観た人間の手の印象を基として作った物の方がより多く私たちに生きた手を感じさせるのである」
 ともあります。
 これが書かれた頃よりはるかに複製の技術が進化しあたかもコピー時代の到来を思わせる現状の中でこれは未だに古さを感じさせない論旨と思います。

 そうなるとこれまで鉄道模型の世界で「オモチャ臭い」の一言のもとに切り捨てられてきていた「省略と誇張」に基づく「印象把握のセンス」と言うのが非常に重要な意味を持ってくるとも言えます。
 これはこれまでにも時折触れて来た「鉄道模型はアートたりうるか」という課題にも重なる部分と思えます。

 少なくとも今後は「実物の縮小コピー」がやりたければそのものずばりに実物のコピーが容易に作れる様になる訳ですからやりたい人やそれが至上と思う人はその通りの物を作ればいい訳です。
 ですが、これは同時にただ細密なだけ、実物どおりなだけのモデルが少しも自慢の対象にならなくなる事をも意味します。

 その一方で実物の縮小コピーに我慢できない人、アートな要素を鉄道模型に求める向きはよりアーティスティックな「模型」造りに進みやすい気がします。

 但し「アーティスティック」であるという事は大なり小なり自分自身の内面が造られる模型に反映される事は覚悟する必要があります。

 これは鉄道模型をひとつの造り手の自己主張をどこに置くかという「アート」と捉えるか否かにかかわる部分でもあります。 何だかこの辺は大昔の「探偵小説芸術論」の鉄道模型版みたいです。

 ですが実車を忠実にまねた車両の工作であっても「印象把握のためのディフォルメ」を加えた物の方が実車の立体写真みたいな細密モデルよりも人の心を打つ事も多いですし。
 ここで一つ興味深い実例を上げますが、この間見たテレビ番組で熊本の「山鹿灯篭」の製作を取り上げた番組があったのですが実在の建物を細密かつ忠実に紙による灯篭に作り上げる過程に息をのみましたがその製作者の一人がこんな事を言っていました。

 実はこれらの建物は意識的に実際の建物より1割か2割縦に引きのばして作っています。「実物通りの比率で作ると実物より貧弱に見えてしまうからです」
 これなどはアートとしての模型の本質を見事に言い当てた一言ではないかと思います。
 これに近い事は特撮美術監督の井上泰幸氏も著書か何かで書いていたと思います。

 人間の眼に映る印象は外的な要因でかなり左右されます。
 この点で眼はある意味相当な嘘つきであるとも言えます。
 良く出来た(と言われる)モデルの大半は一見実物通りに見えても実はどこかしらディフォルメが入っている事で実物並みのリアリティが出ているという事でもあります。

 鉄道模型は「模型」か「アート」か・或いは鉄道模型は「芸術」たりうるか。

 私個人としては実物の正確な縮小版の「模型」たろうとする事は少なくとも「ホビーの対象」としてはあまり正しくないし好ましい方向とも思えません。
 ですがアートの方向にしても余りやり過ぎて前衛芸術まがいになっても困ります(笑)

 もっともこんな寝言も「誰でも鉄道模型が作れるまで3Dプリンタが普及するまでどれくらいかかるのか」という根本的な問題もあるのですが。


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