熱帯夜向けに今回は久しぶりの怪談話から。
鉄道絡みの怪談には基本的に以下のパターンがあると思われます。
1)列車の車内、又は駅の構内に「出る」
2)列車の中から「見える」
3)列車そのものが「それ」
この内1)と2)は大抵の怪談本で見かけるほどポピュラーな事例ですが3)となると少ないようです。
私の知る範囲だと声優の白石冬美氏が友人たちと目撃したという「廃線跡の自宅前を深夜2時に走行する真っ青な都電」の話(こちらは先日の「玉電」の幽霊が音もなく走っているのに対して「轟音・振動まで標準装備」していたらしいですが)
上の写真は都電のモデルですがこんな感じだったのでしょうか。
他には郷土書の「いわての怪談・奇談」に掲載のもので確か五能線近辺だったと思いますが「最終列車の後に踏切を通過する幽霊列車(おそらく気動車)」(その際警報機は鳴らなかったそうですが)がある位でしょうか。
この話の異様な所は「そこにいる筈のない物を見る」インパクトが1)2)以上に大きい点にあります。
同様のパターンとして「自動車の幽霊」と言う話もいくつかありますが鉄道ほどの異様さは少ないようです。
さて、列車自体の幽霊を題材にした小説としては丘見丈二郎の「汽車を招く少女」がその嚆矢ではないでしょうか。
少し違いますがTVのウルトラQの「あけてくれ!」に出てくる小田急NSE・東京都電なども幽霊列車に近いインパクトがあります。
最近のホラーには疎い(根が臆病なのでホラー自体あまり読まないのですが)ので良く知りませんが今ならこの題材の小説はいっぱいある気がします。
鉄道がらみの怪談(むしろ奇談と言った方が良いかもしれませんが)で私にとって最近印象に残っているのは宮澤賢治の「化物丁場」です
この話は最近まで存在を知らず、青空文庫に取り上げられて初読しました。
これは田沢湖線から分岐した春木場への支線の建設工事に絡む話ですが「突堤を築いている中で一か所、何度工事をしてもしばらくすると突堤が原因不明の崩壊を繰り返す」
ただそれだけの話を当時の工夫と筆者が岩手径便の車中で語り合う。
のですが、淡々とした語り口に不思議な凄味を感じさせられたのを覚えています。
何度目かの崩壊の後突貫工事で復旧させた後、工夫たちが徹夜で張り番をする部分の寒々とした描写。
何か起きそうな予感だけを感じさせる辺り、不思議な戦慄を覚えました。
本作は宮澤賢治の他の作品にあまり見られない実録風の奇談(そのせいかあまり語られる事の少ない作品でもあります)と言え、その意味でも印象深い物でした。
宮澤賢治には「銀河鉄道の夜」「シグナルとシグナレス」の様に鉄道を題材とした童話はいくつかあるのですがそのどれとも肌触りの異なる不思議な話でした。
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