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特許法126条2項 (18.5.26)

2006-05-26 11:27:11 | Weblog
特許法126条

第2項

 2項は、訂正審判の請求の時期について規定しています。

・本文

 訂正審判は、特許無効審判が特許庁に係属した時からその審決が確定するまでの間は、請求することができません。
 特許無効審判が請求されたときは、特許無効審判において訂正の請求をすることができますので、訂正審判の請求を認める必要がありません。特許無効審判の審理と訂正の審理とが別個独立にされることの不都合を回避するためです。

 特許無効審判が特許庁に係属するのは、一般には、特許無効審判請求書が特許庁長官に提出された時です。しかし、2項では、特許権者が特許無効審判の請求を知った時を基準とします。したがって、2項でいう「特許無効審判が特許庁に係属した時」とは、特許無効審判請求書の副本の送達があった時を意味します。
 特許無効審判請求書が特許庁長官に提出された後、特許無効審判請求書の副本の送達がされる時までに、訂正審判を請求した場合は、適法な請求であることになります。

 特許無効審判の審決が確定するのは、不服申立ての手段がつきた時です。
 審決取消訴訟を提起しなかった場合には、審決の謄本の送達の日から30日を経過した時に審決が確定します。
 審決取消訴訟を提起した場合には、請求棄却判決の確定により審決が確定します。請求認容判決が確定した時は、審決は確定せず、特許無効審判において審理が開始されることになります。

・ただし書

 特許無効審判が特許庁に係属した後、その審決が確定する前であっても、特許無効審判の審決に対する訴えの提起があった日から起算して90日の期間内は、訂正審判を請求することができます。
 この場合にも訂正審判の請求を遮断したのでは、特許権者の防御手段がなくなり、酷となるからです。
 なお、複数の特許無効審判が請求されている場合において、一の特許無効審判の審決がされ、その審決取消訴訟を提起したときは、他の特許無効審判が特許庁に係属しているときであっても、前記90日以内であれば、訂正審判の請求をすることができます。
 90の計算は、初日から起算しますので、訴えを提起した日(初日)が含まれます。
 90日としたのは、訂正審判の準備期間を確保すること、訂正審判の請求の期間内に差戻し決定(181条2項)が確定すること、の2点を考慮したためです。

 審決取消訴訟を提起することが条件となります。審決取消訴訟は、審決の謄本の送達があった日から30日以内に提起しなければなりません。

 ただし、当該事件について181条1項の規定による審決の取消しの判決又は同条2項の規定による審決の取消しの決定があった場合においては、その判決又は決定の確定後の期間を除かれます。特許無効審判において審理が再開され、その中で訂正の請求の機会が付与されることになりますので、訂正審判の請求を遮断することとしました。

特126条1項 (18.5.26)

2006-05-26 07:20:23 | Weblog
(訂正審判)
第126条

 訂正審判は、特許無効審判に対する特許権者の防御手段として位置付けられるものです。
 ただし、特許無効審判が請求された後は、無効審判の中で訂正の請求ができ、訂正審判の請求は遮断されることになりますので、一般的には、訂正審判は、特許無効審判が請求される前の防御手段であるといえます。

第1項

・請求人
 訂正審判の請求人は、特許権者です。専用実施権者や通常実施権者は、訂正審判を請求することはできません。
 特許権者以外の者による訂正審判の請求は、不適法な請求であって、その補正をすることができないものであるとして、訂正審判の請求は、審決をもって却下されることになります(135条)。

・訂正の対象
 訂正の対象となる書類は、明細書、特許請求の範囲、図面です。
 要約書については、訂正を認める実益がありませんので、対象となりません。

・訂正の目的
 訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限られています。

・1号 特許請求の範囲の減縮

・特許請求の範囲の減縮に該当しない例
①直列的に記載された発明特定事項の一部の削除
②択一的に記載された発明特定事項の追加
③請求項を増加する訂正(下記⑤及び⑥のような場合を除く)

・特許請求の範囲の減縮に該当する具体例
①択一的に記載された発明特定事項の一部の削除
②発明特定事項の直列的付加
③上位概念から下位概念への変更
④請求項の削除
⑤多数項引用形式請求項の引用請求項の減少
 特許請求の範囲の記載「A機構を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエアコン装置」を「A機構を有する請求項1又は請求項2に記載のエアコン装置」とする訂正。
⑥n項引用している1の請求項をn―1以下の独立請求項に変更
 特許請求の範囲の一つの請求項の記載「A機構を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエアコン装置」を「A機構を有する請求項1記載のエアコン装置」と「A機構を有する請求項2記載のエアコン装置」の二つの請求項に変更する訂正。
⑦下位の複数の従属請求項をリンクする上位の独立請求項を削除する訂正を行う結果、もとの従属請求項のみで訂正後の発明を記載することが困難又は不明瞭となることから請求項数を増やして表現せざるをえない場合。・当初の特許請求の範囲
 1.A機構とB機構を含むエアコン装置
 2.さらにC機構を含む1項記載のエアコン装置
 3.さらにD機構を含む1又は2項記載のエアコン装置
 4.さらにE機構を含む1、2又は3項記載のエアコン装置
・訂正後の特許請求の範囲(もとの請求項1削除)
 1.A機構とB機構とC機構からなるエアコン装置
 2.A機構とB機構とD機構からなるエアコン装置
 3.A機構とB機構とC機構とD機構からなるエアコン装置
 4.A機構とB機構とE機構からなるエアコン装置
 5.A機構とB機構とC機構とE機構からなるエアコン装置
 6.A機構とB機構とC機構とD機構とE機構からなるエアコン装置

・2号 誤記又は誤訳の訂正
 「誤記の訂正」とは、本来その意であることが明細書又は図面の記載などから明かな内容の字句や語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。「て、に、を、は」についても、訂正の目的を明らかにする必要がある。
 ただし、「および」を「及び」とする程度の訂正については、他の訂正に付随するものであるときには、訂正の目的が示されていなくても良いこととする。
 「誤訳の訂正」とは、外国語書面出願(36条の2)に係る特許明細書等について外国語書面の誤訳を適正な日本語訳に訂正すること、及び、外国語特許出願(184条の4第1項)に係る特許明細書等について、国際出願日における外国語国際特許出願の明細書等の誤訳を適正な日本語訳に訂正することをいう。

・3号 明りようでない記載の釈明
 「明りょうでない記載」の文理上の意味は、それ自体意味の明らかでない記載など、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載に不備を生じさせている記載のことである。
 また、「釈明」とは、それ本来の意味内容を明らかにすることである。
「明りょうでない記載の釈明」に該当する具体例
・それ自体記載内容が明らかでない記載を正す場合。
・それ自体の記載内容が他の記載との関係において不合理を生じている記載を正す場合。