また一つ歴史に残るアニメが最終回を迎えました。今回は「ハートキャッチプリキュア!」の最終回を視聴したのでそちらの感想を書いてみたいと思います。
「ハートキャッチプリキュア!」…東映アニメーション制作のプリキュアシリーズ第7作目で、アニメ制作は東映アニメーションです。今までのプリキュアシリーズと明らかにデザインが変わったため前評判がそれほど良くなかったこの作品、第1話はいきなり「キャシャーンsins」を思い出させる戦闘から始まりキュアブロッサムが変身したところで終わっていました。
自分はこの「ハートキャッチプリキュア!」から初めてプリキュアシリーズを最初から視聴しましたが…いやはや、予想を上回る面白さに衝撃を受けました。
子供向けだから甘く見ていましたが実に良く作り込まれていて、まず真っ先に目に付くのが戦闘シーンでしたが非常に良く動いていて下手なバトルアニメよりよっぽど良かったです。キュアムーンライトが復活したときとか、カットインが3回入っていたりして演出も可愛いというよりカッコイイと思わせる描写も多くまるで少年漫画のようでした。声優も今人気が高い若手声優がほとんど出演していなく、高山みなみや皆口裕子などのベテランで構成されているのが印象的でした。
そしてまたキャラクターも魅力的で、主人公のキュアブロッサムこと花咲つぼみは引っ込み思案で最初は最弱のプリキュアなどとも言われていましたが、回を追うごとに次第に成長していき最後は最強のプリキュアとまで名乗りめざましい成長を遂げていました。中でも最後の試練での自分との対話シーンは印象深かったです。声を担当した水樹奈々もノリノリで非常に合っていました。時と場合によってメガネをかけたり外したりしているのもポイントが高いです。
しかし今作である意味至高だったのはキュアマリンこと来海えりかでした。1話のときはただのウザキャラのような印象でしたが次第にこのウザさがクセになり、そしてあの顔芸の数々!この作品で最も生き生きとしていたキャラクターで、良い意味で今までのプリキュアにいなかった強烈な個性を持った面白いキャラクターでした。この青目当てで視聴していた人も多かったようです。
キュアサンシャインの明堂院いつきも、最初は真面目な生徒会長といったかんじでしたが次第にレギュラーキャラとして何度も登場してきているうちに少しずつ本当の自分を見せてきて、ついに23話で変身したときは演出のうまさと変身シーンの緻密さに思わず心が震えました。あの盛り上げ方はこの作品の中で一番です。
最後に復活したキュアムーンライトの月影ゆりは、後半までプリキュアに変身しなかったし暗い雰囲気を出し続けていたため通称辛気くさいさんとまで言われていましたが変身後は次第に明るくなり、妖精の消滅や父親の死などに立ち会っても周囲の説得によって立ち直っていく様は辛気くさいキャラながら非常に良く描かれていました。史上初の女子高生プリキュアで声がベテランの久川綾なところも個性的です。
そしてなんといっても良い作品には良い悪役…というわけで悪役も個性的かつ魅力的な人物が揃っていて、中でもお約束となる三幹部、クモジャキー、コブラージャ、サソリーナの3人はお互いを認め合いつつかなり終盤まで戦い続け、最終話にも登場していて後日談も補完されていたので良かったです。1話からの因縁だったダークプリキュアも悲しい運命を背負いつつ最後は笑顔で消えていったし救われたのではないでしょうか。ラスボスのデューンは強さは申し分無かったんですが、終盤にひょっこり現れていきなりラスボスになってしまったのでその辺りもう少し詳しく説明して欲しかったですね…あの憎しみの正体は結局分からずでした。
キャラクターが魅力的なのも良い作品の条件だと思いますが肝心のシナリオも重要…しかしプリキュアシリーズに至っては杞憂のようです。「変わりたい自分」がテーマに据えられてシナリオが描かれているし、子供向けというのもあり視聴していて思わず考えさせられるところも多かったです。数週間したら存在すら忘れる深夜アニメばかり見ていた分衝撃も強く印象に残りました。
1年間放映される4クールアニメの宿命か、中盤は1話完結で話が進まないパターンが多くその中には印象に残らない話もいくつかあったためどうしても間延びしてしまうのは仕方がないかもしれません。ただしそんな回でも視聴し続けていればいつかは花開く…と言わんばかりに36話の学園祭では今までに登場してきた脇役のほとんどが登場するという心憎い演出と共に軽音部とファッション部の合同ファッションショーの演出は非常に素晴らしかったです。
最後のほうになるとほとんどがバトルとなり、女の子向け作品とはとても思えない演出の数々は完全に少年向けと化していた気がしますが、細かいことは気にしないことにしておきます。ダークプリキュアとの最終戦やデューン戦での挿入歌つきのバトルは深夜アニメでも滅多に見られない圧巻の動きでした。そして星も巻き込んだ最終決戦でついに登場したプリキュア無限シルエットによるプリキュア・こぶしパンチは思いっきり殴るのではなく愛を与えるための優しい一撃だったのが愛で戦うプリキュアらしくて印象的でした。
オリジナル作品かつ2期が無いプリキュアらしく最後は見事に完結して締めていましたが、やはりこう完全に完結させるのは良いですね。現在は2期を匂わせる中途半端な終わり方をするアニメが多いので、良い最終回だったと思わせる作品は貴重でした。
作画は非常に良好で文句無し。最後までほとんど崩れることなく安定していたのは、やはり資金力が豊富なのかスタッフが多いからなのか。その中でもキャラクターデザインの馬越嘉彦氏が総作画監督を務めた回はさらに良かったです。作中のBGMも格好良く、キュアサンシャインとキュアムーンライトが初めて変身するときの音楽とか演出と相まって絶妙で素晴らしかったです。主題歌も歴代プリキュアらしく専用歌で、エンディングの振り付けも相変わらずでした。
総評
全体的な感想としては…予想を上回る面白さに感服でした。放映前はこのキャラデザは無いわーとか水樹奈々が主役を演じるアニメはコケるとか散々言われて、こころの種のシーンがどう見てもウ○コにしか見えず雰囲気ぶち壊しのため苦情が来たりとかありましたが、終わってみればそんな噂はどこへやら。歴代プリキュア作品屈指の傑作とまで言われていました。自分はプリキュアシリーズを真面目に視聴したのはこの作品が最初でしたが非常に安定した作画に加えバトルシーンも良く、キャラクターも生き生きとして魅力的だったしストーリーも面白く見事に完結させたため素晴らしい作品でした。子供向け作品ですが大人でも十分楽しめます。
個人的評価としては全体的に非常に完成度が高く、さらに子供向け作品らしく「変わりたい自分」というテーマがあるためシナリオも筋が通っていて面白さの中に想いも込められていたため個人的にはSランクです。例の企画でBD版が出るなら買います。
2000年代を代表する美少女戦士ものとして定着したプリキュアシリーズ、久々に4クールアニメで面白いと感じる歴史に残る傑作でした。今度青に会えるのは劇場版ですか…。