2010年夏・アニメ最終回の感想文その5

2010-09-09 19:02:31 | 2010年春アニメ関連

 ここぞとばかりに次々と視聴しています。そんな中面白い作品ほど優先して視聴してしまうのはやはり仕方のないところ。そういうわけで今回は30分枠から1時間に拡大されたフジテレビ深夜アニメ枠「ノイタミナ」の2作品「さらい屋 五葉」「四畳半神話大系」の最終回を視聴したのでそちらの感想を書いてみたいと思います。

Saraiya5 Saraiya6 「さらい屋 五葉」…月刊IKKIで連載されているオノ・ナツメの漫画「さらい屋 五葉」のアニメ化作品で、アニメ制作はマングローブです。オノ・ナツメ原作のアニメ化は「リストランテ・パラディーゾ」以来2番目で前作が良くできていたため個人的に少々期待してたこの作品、1話から個性的な人物達と共に音楽も作品に合っていて面白かったです。

2話以降は主人公の秋津政之助が誘拐集団「五葉」の首領弥一に何かと世話になりつつも、行きずりで五葉の手伝いをしていくことになりますが…この作品、とにかく雰囲気が素晴らしい!

Saraiya8 Saraiya9 動きこそ少ないですが、江戸時代のスローライフな雰囲気や一触即発の緊張感を煽るMOKA作曲の音楽の使い方が非常にうまくて思わず感心してしまいました。この独特の雰囲気は一見の価値有りです。

それに加えキャラクターも個性派が揃っていて、五葉の一味達の過去についても語られる回も多く1クールアニメにありがちな名前と顔が一致しない現象がほとんど起きなかったのはさすがでした。五葉の誘拐業がメインではなく、どちらかというと五葉一味達の人情話といったかんじで毎回面白かったです。

Saraiya10 Saraiya11 後半ではいよいよ弥一の過去が明らかになってきて五葉を作った理由や弥一の元上司が登場してきて一気に話が進み、ちょっと展開が早すぎて良く理解できなかったところもありましたがちゃんと一連の出来事にケジメをつけて終わらせて、ラストシーンは1話の最初のシーンとシンクロさせるという粋な演出込みで小気味よく終わったのでなかなか良い終わり方だったと思います。個人的にはもうちょっとやってほしかったぐらいだけどこのぐらいが丁度良かったかもしれません。

総評

Saraiya7 全体的な感想としては、オノ・ナツメ作品特有のこの独特な絵柄だけで判断して視聴しなかった人がいるならば、もったいないのでとりあえず何話か見て欲しいと思うほどの良作で、作画も終始安定していて特に背景が素晴らしく音楽も絶妙で雰囲気が非常に良く表現されていました。

この作品の個人的評価は1話の時点ではとりあえず視聴継続のBランクでしたが2話以降一気にこの作品の雰囲気に魅せられAランクにまで上がり、そのまま安定した面白さをキープし続けたまま終わったため個人的評価はAランクでした。オノ・ナツメ作品のファンなら十分楽しめたんではないでしょうか。

ただこの作品、ノイタミナ枠の栄光復活の兆しを見せつつもやはりこの独特の絵柄が視聴者を選んだのか、話題性が無かったのが悪かったのかBD・DVD売り上げは500枚以下で測定不能となり2010年春アニメでBD・DVD売り上げワースト1位になってしまいました。作品の面白さではかなり上位に食い込んでいただけに結果が出なかったのは非常に悔しくて残念です。

続いてはこちら

Yojouhan5 Yojouhan6 「四畳半神話大系」…角川文庫から刊行されている森見登美彦の小説「四畳半神話大系」のアニメ化作品で、アニメ制作はマッドハウスです。「Paradise Kiss」以来4年ぶりとなる久々のマッドハウス制作ノイタミナ枠作品、1話はシャフト作品を思い出すような実写込みの演出がありつつも主人公「私」の語りが非常に多く、明石さん萌えな印象を受けつつ最後は川にダイブして終わっていました。

続いて2話になると、今度は1話とは冒頭以外全く違う話の展開になり少々困惑しました。

Yojouhan7 Yojouhan8 1話ではテニスサークルだったのに2話では映画サークル、そして3話は自転車サークル…といったかんじで、主人公「私」が大学一回生のときにどのような道を選んだかによって話の展開が全く違う物になるのでゲームの~ルートのような感じの作品でした。

6話以降はサークルのルートだけでなく、そこからさらにどの女性を選ぶかにまで分岐していましたが全てのルートに絡む悪友小津がかなり良い味を出していて面白かったです。

Yojouhan9 Yojouhan10 この作品、実写込みの演出や主人公の語りなどが目立ちますがキャラクターの見せ方も非常にうまく、メインキャラ全てが何らかの形で物語に絡んでいたため印象が強く残っていました。絵柄こそ質素でしたが歯科衛生士羽貫の歯科医マッサージとかエロかったし、メインヒロイン明石さんも個性が強く良いキャラでした。

Yojouhan11 Yojouhan12 そして絵柄が気にならなくなるほど秀逸なのがシナリオの構成で、終盤にアホなりに大学生活をエンジョイしていた小津に気づいた後に来た四畳半世界の話で、ついに1話から続いていた一連の話と繋がりだしたときに一気に盛り上がってきて、最終回では特殊な演出から始まり最後を見事にまとめて終わらせたので中途半端な感じが全くしなく良い終わり方でした。

10話とか声優1人!という奇怪とも言える思い切った構成や、スタッフロールに挨拶を入れたりする意表を突いた演出も目立ちましたが、ストーリーに一本筋が通っていて最後にちゃんと伏線を回収して締める…という王道をキチンと踏まえた素晴らしい良作です。ただ結構クセが強いのと、最初から最後まで一貫して見ないと良さが分からないので視聴するのならば全話腰を据えて視聴するのをオススメします。

総評

Yojouhan13 Yojouhan14 全体的な感想としては、終始非常にクセの強い作品でしたが最後に伏線を一気に回収してうまくまとめて終わらせたため評価はかなり高く、一部では近年まれに見る大激戦区だった2010年春アニメの中でもナンバー1作品に挙げる紳士すら現れるほどの作品でした。

序盤こそ良く分からない内容でしたが終盤になると全ての話がつながってくるため、いきなり最終回近くを見ると全く分からないと思います。そういう意味も含めてこの作品は無駄な話が1つも無かったように感じられました。1話から最終回まで見た後にもう一度1話から見直すと隠れた伏線が再発見できるので、シュールな絵とは裏腹に奥深い作品になっていました。

実写込みの演出や、主人公の語りなどはシャフト演出に近いものを感じましたが良くも悪くもシャフト作品のようにワンパターンや投げっぱなしでは無かったため、一部では「シャフトの上位互換作品」とまで言われてちょっと涙目。

個人的評価としては、1話は様子見のBランクで、後半もずっとBランクでしたが終盤で話がつながりだしたら一気に面白くなりAランクでした。この見れば見るほど味が出てくる作風がツボにハマったのか、1巻のBD・DVD売り上げは7000枚で2010年春アニメの中で7位とノイタミナ枠の作品では「モノノ怪」以来のヒット作のようでした。

2010年春アニメは近年まれに見る当たりでしたが、その象徴の一つがこの1時間に拡大されたフジテレビ深夜アニメ枠「ノイタミナ」の2作品で、どちらも地味ながら非常に面白かったです。