高江雅人  竹工芸職人の独り言  竹工房オンセ

高江雅人  竹工芸を初めて37年、徒然なる出来事をアップしています。

ミラノ通信4

2007年11月18日 17時54分43秒 | 海外事業展開グループ

1117日  朝早く起きて、前日、前前日と遅くまでクタクタになっていたためブログの記事をまとめる事が出来なかった。やっと、今日、オープニングからの2日間を整理している。目の前には昨日フェラーリのショウルームで買った熊が私に話しかけている。じーと見つめる顔が愛らしい。

今日の実演当番は油布さん、サブ担当が私、毛利さんと大橋君はフリーである。11時オープンから、ポツリポツリとお客様が入ってくる。1115_223 通訳は楓ちゃん、現地の村山さんが出てくるのはいつも3時過ぎなので、それまでは楓ちゃん一人だ。お客様が来る度に引っ張り出される。今回はボランティアで参加してくれている。毎日ほとんど、あっちだ、こっちだと引っ張りまわされ、自由な時間はほとんど無い。しかし、彼女が居ない事には、私達言葉が話せない者にとっては頼みの綱である。お父さんである私の親友「恵文さん」より「厳しく言って下さい!」と言われて来たが、本当に彼女のお陰で助かっている。小回りが聞くので買い物など、右へ左へと動き回ってくれている。20歳くらいで、おっさんやおばさんの中に入って、それなりに気を使っているだろうが、そんな事をおくびにも出さず、「ハイッ!」「ハイッ、判りました!」「何でも言って下さい。」などと、きっと日本に返ってからどっと疲れが出るだろうな!

1117_013 ギャラリーでは今までミラノできれいな人を沢山見ているが、その中でも「この人は絶対モデルさんだ!」と思うような背が高くて、知性的な美人がやって来た。インターネットで今回の催しを知って来たそうだ。本人もアクセサリーなどを作るアーティストの様だ。油布さんが奇麗な人を見ると、顔は強張っているが、サービスをすること、すること。お箸に始まり、端置き、菓子楊枝まで作って差し上げている。世界何処に行っても美人は得だね!

夕方まではそれほど忙しくなくゆっくりとしていた。ところが17時過ぎからどんどんお客様が入ってきだした。あっという間にギャラリーは人で埋まっていく。ミラノのギャラリーは平日より土、日の方が人の入りが多いようだ。

1117_015 お客様のリクエストもあり、急遽、竹篭作りに教室をすることになった。3組の親子が挑戦、6人ほどに教えるのが目も届き、一番やり易い。前日の経験があるので、私もイタリア語、英語を交えて教えていく。子供達も目を輝かせて大喜び、それより、お母さん達が感動して、東洋の不思議を噛み締めているようだ。作り終わった後も一緒に写真を取らせて欲しいと顔を赤らめ言って来た。

結局この日も夕方からの2時間だけでも50人以上のお客様が入っている。私の作品にも、油布さん大橋君の作品にも注文が入っている。特に油布さんの作品で60万くらいの作品が売れそうである。毛利さんも「ワインのラベルのデザインをして欲しい」と注文が入っているようだ。私は思っていた通り、波網代のポシェットタイプにイタリア人が凄い反応をして問い合わせが多い。やはりパーティーにお洒落な自分だけのバッグを持ちたいのだ。そして、作品的には、無理に迎合するのでなく、自分の持ち味を追求していった方が世界に充分通じると確信できたことが大きかった。

1117_020 ギャラリー閉店後、この日は男ばかり8人で「トプカピ」というピザレストランへ、ありがたかったのはメニューの下にボールペンで日本語表記してあったことだ。料理の内容が判って注文できたこと。ミラノでは野菜サラダがあまり出てこない。やはり、肉食人種なのか?今までホテルの朝食でも、夜のレストランでもほとんど生野菜が出てこない。やっとこの店でサラダを注文したが肉料理よりサラダの方が高かった。ワインを飲みながらそれぞれに楽しんだ。ホテルに戻り、先に返っていた悦子の顔を見たとたんに、もう寝付いてしまった。

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ミラノ通信3

2007年11月18日 17時52分30秒 | 海外事業展開グループ

1116

前日くたくたになり、疲れていたため今日は6時くらいまでぐっすり寝ていた。今日は8時半には日本人学校の先生が来るのだ。ミラノに住む日本人の子供が70人ほど通っている学校だ。そこへ出前で「竹細工教室」をするためだ。私と油布さん、大橋君、悦子、テレビスタッフの6人で出発。一見、ババロッティのようなイタリア人が迎えに来た。日本人の様に流ちょうな日本語を話す。イタリアに長いこと住んでいると風貌もイタリア人の様になるのだろうか?等とバカな事を考える。学校に着くまでにその事を聞いてみると、「24年ミラノに住んでいます。しかし、長く住んでいてこういう顔になったのではなく、イタリア人とのハーフだからです。」と言われた、当たり前だよね。 20分ほどでミラノ郊外の日本人学校にやって来た。向かえはユダヤ教の学校だそうだが、テロから身を守るため学校の回りはバリケードで囲まれ、ミラノ機動隊が常駐しているそうだ。

1116_002 「竹細工教室」は一番先輩である油布さんが指導して、私と大橋君がサポートに回ることにした。さてさて、竹細工教室の始まりである。学年が違う25人の子供に教える事は中々難しい事である。油布さんが前置きの話をするのだが、子供達にとってイタリア語よりも聞き慣れない大分弁で話すので、何処まで理解しているのか?疑問である。「四海波」花篭の作り方を説明し出したが、作り方を知っている私達が聞いても、「難しいだろうな」と思う説明がどんどん先へ先へと進んで行く。案の定子供達はチンプンカンプン‥‥?1116cimg0011 <personname></personname>

油布さんが「こっちとこっちを持ってきびるんじゃ!(きびると言うのは大分弁で結ぶことだ)」「こげんするんじゃ!」とか言うが本人は判っているが子供達はどれがこっちでどうするのか?サッパリ判らない。 さすがにこれではいけないと思い油布さんに、大橋君と私とで 回りの7~8人づつ教えて行くので少し間ってくれ!とお願い。どうにか全体のペースを油布さんに追いつく所までフォローして何とか全員が作り上げる事が出来た。取材のOBSスタッフも2度笑いしている。

1116cimg0016 しかし、考えてみるとここに居る子供達は日本に帰れば帰国子女として、きっとエリートサラリーマンの子供達で今までチヤホヤ育てられて来ている子供達がほとんどだろう。しかし、今回の竹細工教室で、世の中の不条理というか?理不尽な、傍若無人な一方的な場面に出くわした事はある意味、大変良い経験になったと思う。今まで、判らない事があると回りのフォローが入り、手助けしてくれるのが当たり前、決して本人を攻めたりしない環境で育ってきたのだ。<personname></personname>

油布さんの教えは、本人は50年以上も竹細工をやってきているので、一般の人が全然判らない事でも 本人は無意識の内に出来てしまっているので、そんな事は気付くはずも無く、解らないのだ。  「お前が間違がっちょる!お前が約束どおりせんからじゃ!」などと言われたら子供達は目を白黒させている。今までお前呼ばわりされたことなど無いだろうに!「判らんかったら、もっと真剣に聞け!」「これくらいできんでどうすんじゃ!」油布さんの作品どおり(「やたら編み」を得意とするのだが、やたら編みとは不規則なやたらめったらヒゴを差込み感性で作り上げていく作風なのだ)。説明もやたらめったら話が飛んで行く、途中 説明が足らなくてもお構いなし、もう油布ワールド、油布マジックだ。でも、形どおり同じ物を作ることが正しい様な教育を受けて来た私達から見るとびっくりする事であるが、本来教育なんて規則もなくその子の感性で作り上げて物なのだ。全員が出来上がらなくても良いし、「お前」呼ばわりされて たまげる事も教育で、こんな人が世の中には居るのだ?と感じることが教育だ。油布さんの教え方には形はないが、その後には豊かな人間性と優しさがあるので、どんな教え方をしても子供達には伝わっていると思う。竹篭を作らせる事より、学校の先生とは違う種類の人間が居る事を知ることが一番の授業だったりするのだ。

冷や汗物の竹細工教室も何とか終わり、タクシーでギャラリーへ11時半くらいに戻って来た。本日の実演当番は毛利さん、サブ担当が油布さん。私と大橋君はフリーの日で5時までにギャラリーに戻ってくれば良いとの事で、それぞれに市内観光へ、私達夫婦に毛利さんの子供が二人(タクト、ハヤト)がくっついて来た。二人とも今時の若者には珍しく素直な青年達だ。見ていて気持ちの良い兄弟である。まず、モンテナポリオーネ通り、ミラノの高級ブランド店が並ぶ通りをウィンドウショッピング、右1116_072を見ても、左を見ても色鮮やかなお店が連なる。どんどん歩いて来ると街の中心のドォーモまでやって来た。一目見るなり、釘付けになる雄大なゴシック建築、ヨーロッパ随一の大きさを誇る教会である。 ドォーモの近くの路上レストランでピザとパスタとリゾットなどの昼食を取り、その後、「最後の晩餐」のあるグラツェ教会を見て、レオナルド・ダ・ヴィンチの作った物が沢山展示してある、国立科学技術博物館を見学。途中の道で見つけたイタリアンジェラートを頬張りながら半日歩き続けて万歩計を見てみると13キロも歩いている。

1116_113 17時にギャラリーに帰って来るとギャラリーではオーナーの親戚の子供達が竹細工教室を受けるために待っていた。13人の子供達に日本人学校で教えたのと同じ「四海波花篭」を作らせた。今度は油布さんでなく、私が先生になって!私の場合は最初に「説明より先に進まないように!」と通訳に言って貰う。初めての子供達にとって、早い人がどんどん進み、隣を見てみると自分と違った事をやっているととても不安になるからだ。早い子供を抑えながら、ゆっくり、ゆっくり進めていく。全員が30分ほどで完成、みんな大喜びだ。でも、油布さんの様にハプニングがあった方が面白いかも?

ギャラリーのお客様は平日だったので、昨日の様にごった返す様なことは無く落ち着いた一日だったようだ。閉店後、10月末に日本にやって来た「リッチ」さんの事務所で夕食会の招待を受けていたので、全員で出かけて行った。リッチさんの手作りの料理と彼のワイナリーで作ったというシャンパンでおもてなし、通訳の楓子が酔っ払ってノックダウン。私達夫婦は途中で抜け出して、タクシーで楓ちゃんをミラノの友人宅まで送りホテルに戻って来た。この日も「トウェンティーフォー」の様な長い一日であった。

竹工房オンセ

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ミラノ通信2

2007年11月18日 17時49分50秒 | 海外事業展開グループ

1115日   昨日の疲れが抜けきらないうちに朝起きた。前日、夜遅くまで食べ過ぎ、飲み過ぎの反省から朝食は軽めに取った。カプチーノに生ハム、小さなパンを1個、ヨーグルトにフルーツ、それでも結構食べているか? ブログをホテルの電話を使ってアップしてみる。大変時間がかかる、これではとても写真をアップすることはあきらめよう、その日、その日の事を文章で上げ、写真は後日アップすることにした。その日のベストショット1枚に限定してアップできれば?

1115_053 9時半にホテルロビーに集合、メトロにて会場へ、昨日準備できなかったことを入念な打ち合わせしなくてはならない、レセプションに向けて、人の動線、時間的な流れを考えて着々と準備を進めていく、オープニングパーティーの時のテーブルの製作から、箸、紙皿、プラコップなど、ゴミが出たときの分別ゴミ箱まで作って行く。でも、1115_068 みんなでワイワイガヤガヤしながら、特に女性陣が居るとたわいの無い事で笑いあったりすると場が和む。一人、全体の指揮官を任せられた浜名さんだけが責任感と刻一刻と迫ってくるオープニングセレモニーへの重圧で強張っている。看板関係や全体のレイアウトもほぼ落ち着いた所で昼食休憩、今日は買出しに悦子と楓ちゃんがスーパーへ。フランスパンと生ハムを数種類、スライスチーズ、各自が自分でサンドを作って昼ごはん。マヨラーの由布さんが「マヨネーズは?」と聞くとケチンボの楓ちゃんが「もったいないので買いませんでした!」と。食後、私は大橋君とレセプションの出し物の一つである「四海波花篭」の製作の予行演習をしてみた。1115_1561115_1853  お客様の見る位置を想定して、動きや声を丹念に打ち合わせた。こういった細かい下準備が成功への第一歩なのだろう。お花も飾り付けられ、ギャラリーの外にも竹灯りの竹筒が100本ならべられる。今回の飾りつけなどのレイアウト担当は毛利さんだ。彼の指示で会場全体を作っていく。時たま、飾り付け途中にも時間を間違えたお客様が入り込んでくるが、丁重に後日来て頂く様お断りをして!

さて、いよいよ時間になった。16時~1830分がプレス対応の時間、19時よりオープニングレセプションの予定になっている。さて、本当にお客様が来てくれるのか?一人も来なかったらどうしよう?  以前、ミラノに在住していた日本食のシェフ新江氏に相談していた時、「アントニオ猪木のレセプションに料理を頼まれて作ったのだが、イタリア人プロデューサーは200人くらいお客が来るからと言っていたが、実際、始まってみたらお客様が5人だけしか来なかった。急遽、私達も呼び出されて全員で8人、料理は200人分、猪木が「元気だー!」とやっても元気が出ませんよネ」と脅されていた。本当にお客様は来てくれるの?せっかく大分からテレビ局も来ているのに、全然お客様が来なかったらシャレにならないよネ。16時~17時全然人が来ない!ますます、不安が募ってくる。17時くらいから、ポツリ、ポツリと記者やライター、雑誌の編集者などがやって来るようになった。だんだんと知り合いの人も入ってくる。以前から知り合っている波多野さんや彼が声を掛けてくれた友人たち、オーナーの招待客など少しずつ会場に活気が出てきた。やはり、イタリア時間だ。日本のように何時からスタートと言うとそれに合わせてみんなが集まってくるなんて事は無い。ダラダラと自分勝手に集まってくる。外の看板を見て面白そうだからと飛び込みで来ているイタリア人も居る。「良し、良しこれで何とかテレビ局が撮っても最低限の絵にはなる。」1830分、料理も届き、ワイン、お酒なども出され お客さんもどんどん入ってくる。私達作家4人もお客様の質問や対応に追われている。

1115_206  私の作品も現地の女性達から「これはいくらなの?」「売ってくれないの?」「素晴らしい!」「とても軽いわ!」「触ってみて滑らかさにびっくり!」「‥‥‥」「‥‥」次から次へと質問攻めだ。日本で個展をする時よりはっきりとした反応が返ってくる。嬉しい悲鳴だ!会場には何十人と動き回れないほど人が入っている。「ヤッター!」もうテレビ局どころではない。1115_2131915分くらいから毛利さんの出し物で1畳ほどの和紙に「絆」と書き込みが始まった。その後が私と大橋君とで大きな「四海波花篭」の製作、その花篭に油布さんが篭に手を付け、花を活ける。油布さんはお客さんが来ると言葉が通じないのでシドロモドロでウロウロするが竹ヒゴを持つと実に堂々と落ち着く。手に竹を持っていると普段の自分を取り戻すのだろう。まるで、コンセントを入れるとシャキッとなり、抜くとフニャとなるような感じだ。

1115_214 実に威風堂々と現地の花を活けこみ「私はこのギャラリーの木を切って、活け込む事で記念に残したい」などと油布さん独特のスピーチなどもはじめている。4人の作家の実演の後、ミラノ総領事がイタリア語で挨拶、その後、会を代表して大橋君が通訳を交えて挨拶した。しかし、会場は人、人、人で少し離れた所の人には声も届かなかったし、聞いてもいない!でも、そんな事どうでも良いくらい人が入ってくれて大成功である。ジェトロのミラノ支店の人たちも来てくれたが「今までジェトロが関わってこんなに人が入った催しはありません!」と本当に驚いていた。21時までごった返すような会場の賑わいが続いたが、2130分で閉場、やっと終った。「大成功」である。「万歳!ヤッター!」私も喉がからからで水を飲むことが出来たのも21時半、料理を見てみると一つも残っていない。それもそのはず、何人来るか?判らないので、立食式で50人分の料理しか注文していない。(日本で考えるほど沢山の量ではない)ワインを30本、日本酒3升、ソフトドリンク、あられなどの乾き物など‥‥。これでも多いのか?少ないのか?判らなかったのだが。結局、この日の来場者の数は180人を越えていた。日系人関係が30%くらい、現地のイタリア人が70%くらい、日本でもこんなに人が集まるレセプションは無いだろう。それほど、ミラノでは日本への感心が高いのと、現地スタッフである村山さんの事前広報活動、ジェトロミラノ事務所の協力などこれまでの下準備の結果である。本当にみなさんありがとうございました。

会場をある程度片付けホテルにぐったりとして返って来た。軽くシャワーを浴び、私はまだ興奮が冷め遣らないのか一人でワインを1本飲み干してしまった。心地良いまどろみを楽しみたいのだ!此処まで来るまでの2年半の積み重ねが走馬灯の様に次から次へと頭をよぎって行く。

竹工房オンセ

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