竹細工の仲間の大橋君が家族で遊びに来た。ミラノで一緒に展示会をした仲間である。4歳と1歳半の子供を連れて遣って来た。実に清清しい青年で、奥さんも理知的な可愛い奥さんである。彼の様に前向きに、ひたむきに頑張っている後輩を見ると、本当に応援したくなる。子供に接する姿を見ていても二人とも実に優しい。上のお兄ちゃんは先天的に耳が聞こえなくて、特殊な補聴器をつけ、信号で物音と声の区別を付けているそうだ。大変だとは思うが、この家族には悲壮感は全く無い。此処まで来るには大変な葛藤があったのだろうが、前向きに笑顔で楽しんでいるのだ。
人生の内で小さな子供を抱えて、がむしゃらに遣っている時が一番充実しているような気がする。私なんかも、収入も少なく、安定も無く、貧乏していたが、それでも、何をやっても楽しかったし、前向きに人生を捉えることが出来た。今より、家族で出かけて夜な夜な遊んでいたような気がする。
丁度、私たちの子供が大橋君の所と一緒くらいの時、親しい仲間に声を掛けて「優しい男のピアノコンサート」を企画したことがある。全然、ピアノなど弾いたことの無いお父さんばかり10人ほどが、2ヶ月間かけて1曲だけ練習し発表会をした。第一回目は私の家でやったのだが、出演者が10人の素人お父さん、その後に少しピアノが弾けるお母さんの演奏、また、その後に友人のプロのピアニストの演奏となったのだが、参加する衣装は正装か仮装。タキシードで来る人も居れば、とんでもない仮装でやって来る人もいた。結局、ギャラリーも入れると60人以上の人が家の中に集まっていた。
竹篭を編めと言われれば、1000人の前でも編めるのだが、ピアノを人の前で引くとなると、頭の中が真っ白になり本当に緊張した。因みに、私が演奏したのはプレスリーの「好きにならずに居られない。」であった。
又、懲りずにこんなバカな遊びをしてみようと思う。