Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ションヤンの酒家(みせ)

2013-08-03 | 映画(さ行)

■「ションヤンの酒家(みせ)/生活秀(Life Show)」(2002年・中国)

●2002年上海国際映画祭 最優秀女優賞・作品賞・撮影賞
●2002年金鶏賞 最優秀脚本賞・主演女優賞

監督=フォ・ジェンチイ
主演=タオ・ホン タオ・ザール パン・ユエミン

 「山の郵便配達」のスタッフが撮った新作。前作は普遍的な家族愛が描かれ、地味な生き方だけど地に根ざして頑張っている人々への応援歌のような映画であった。本作の舞台は長江中流に位置する都市チョンチン(重慶)。主人公ションヤンは屋台の女主人。兄夫婦からは子供を押しつけられ、弟は麻薬中毒で施設入り、弟の彼女の面倒をみて、さらに家族のものだった家を取り戻そうと必死。自分は離婚して以来、金勘定と鏡に映る我が身を見て過ごす毎日。やがて彼女に惚れている中年男性と親しくなるのだが・・・。前作と変わって都会の生活を描いているのだが、やはり地味ながら一生懸命に生きる人の姿が心に残る映画だ。

 ションヤンの行動は時にズルいと思えるくらいにしたたか。家を取り戻すために役人に取り入り、その息子の結婚まで面倒みてやる。世話を焼いているようで実は自分の望む方向に導いている。だけどそうでもしないと生き抜けない真剣さを観ていると、次第に彼女を応援している自分に気づく。懸命に取り戻した家に弟は感心を持たないし、ションヤンの名義になったことで兄夫婦は面白くない。しかも身を任せた男は、彼女の気持ちを理解してくれない。弟のいる施設に向かうロープウェイは濁った大河を横切っていく。自分の思いと現実の大きな隔たり。それはその大河のように目前にあり、決してその隔たりを埋めることはない。人生はままならぬもの。それでも頑張ってしまう自分。あきらめと自嘲が混じったようなラストの涙は見終わってしばらく心に残る。タオ・ホンの熱演あっての映画だ。

(2004年筆)

ションヤンの酒家 [DVD]ションヤンの酒家 [DVD]

東宝 2004-09-25
売り上げランキング : 94459

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

少林サッカー

2013-08-02 | 映画(さ行)

■「少林サッカー/Shorin Soccer(少林足球)」(2001年・香港)

●2002年香港電影金像奨 作品賞・監督賞・主演男優賞
助演男優賞・音響効果賞・視覚効果賞・傑出青年監督賞

監督=チャウ・シンチー(周星馳)
主演=チャウ・シンチー ン・マンタ ヴィッキー・チャオ

 「アメリカが生んだオリジナルの文化はジャズとウエスタン映画だ」とはクリント・イーストウッドのお言葉。イーストウッドは、今のハリウッドではやや”ダサい”そうした伝統にこだわり続けている数少ない映画作家である。香港映画にとってのオリジナルとは、やはり功夫映画・武侠映画なんだと思う。でも今の香港映画界では、功夫映画など製作されない。ドンパチやるよなアクション映画か恋愛映画やっているかだ。中国武術は”ダサい”過去のものなのかもしれない。一方で皮肉なことに、そんな功夫アクションにハリウッドが夢中になっている。「少林サッカー」はそんな状況に喝!を入れる映画だ。伝統を異質な形ではあれリスペクトを込めて、徹底したエンターテイメントにしている偉大な映画だ。香港で熱狂的に受け入れられたのも納得がいく。

 タイトル前のおふざけ(地球・坊主頭・サッカーボール)や、ウッ!ハッ!とか聞こえる躍動的な音楽と少林アニメのオープニングから、もうわくわくしてくる。映像表現はVFXをふんだんに盛り込んで、ほとんど「マトリックス」。監督は日本のコミック(ことに「キャプテン翼」!)が好きな人だそうで、”燃ゆる瞳”なんかマジでやっちゃってバカだよなーと思うけど、ベタなギャグはこれだけでは止まらない。その辺はここで読むよりご覧いただくとして。まぁあるがままに楽しむが勝ち。”少林拳最高!”いやー楽しかった。

 サッカー場面もよいのだけれど、饅頭屋の前で、主人公がヴィッキー・チャオに歌うことから、周りの人々が「僕は作曲家になりたかったんです!」(この少年は一度観たら忘れられない!)とか「俺はダンサーになりたかった!」とか秘めた情熱に火をつけられる場面が好きだ。少林仲間もそうなっていくのだが、きっと観客にも火をつけたのではなかろうか。これを観てアメリカ人たちがどういうリアクションしたのか興味あるところだ。

(2002年筆)

少林サッカー [DVD]少林サッカー [DVD]

ジェネオン・ユニバーサル 2012-05-08
売り上げランキング : 13697

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スイミングプール

2013-08-01 | 映画(さ行)

■「スイミング・プール/Swimming Pool」(2003年・フランス)

●2003年ヨーロッパ映画賞 主演女優賞

監督=フランソワ・オゾン
主演=シャーロット・ランプリング リュディヴィーヌ・サニエ チャールズ・ダンス

 アメリカ映画は力ずくで日常を忘れさせてくれるけど、フランス映画は観ている側をいつもと違う気持ちにさせてくれる。だからときどき無性に観たくなるんだ。「まぼろし」「8人の女たち」と秀作が続いたオゾン監督の最新作。フランス映画、プール、殺人・・・と聞いて、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督の「悪魔のような女」を思い浮かべた方もあったのではないだろうか。しかし本作はそんな本格ミステリーじみた設定はどうでもよい。それよりもきっかけは興味と好奇心かもしれないが、その人の裏側にある事実や人間関係、人そのものの方が、はるかにミステリアスでスリリングだ。

 主人公のミステリー小説家サラは、新作の執筆のため、南仏プロバンスにある別荘を訪れる。そこは出版社社長の家。小説家らしく一人でいることを好むサラだが、その家に社長の娘と名乗るジュリーが現れる。若い肉体をもてあますような奔放なジュリーの言動に苛立つサラだったが、次第にジュリーに関心を抱いていく・・・。いつしか観客もサラと共に謎めいた空気の中へと足を踏み込んでいく。淡々と進んでいく物語だが、決して目をそむけられない(サニエのヌードのせい?それも理由のひとつではあるけれどね・笑)。

 オゾン映画に出てくる女優さんはみんな魅力的だ。他のオゾン映画でもヒロインであったランプリングとサニエ共演というだけでも惹かれる。特にランプリングが”嫌な女”から変貌を遂げる様は見事!。オゾン監督はゲイらしいと何かで読んだ記憶がある。それ故か二人の女優を撮る視線が他の映画とは違うのだ。プールサイドで寝そべる二人それぞれの傍らに違う男が立って見つめる場面が出てくる。その対比も面白いのだけど、足先からずーっとなめるように動くカメラが不思議といやらしくないのだ。例えばロジェ・バディムの映画とは全然違う。さらに映画の後半に出てくるシャーロット・ランプリングのヌードの美しさ!。これはサニエよりも頭に残ると思うよ。「まぼろし」の時も書いたけど美しく年齢を重ねるというのはこういうことなのかなぁ。オゾン監督の視線はそれを称えているかのようだ。女性にこそ観て欲しいと思った。結末にエッ?・・・僕はしばらく納得がいかない顔でエンドクレジットを見つめていた。前2作程は満足できなかったりもしたけれど、それでいいのだ。それよりも美しい女性を観る喜び・・・それを満喫させてくれたのだから。ウン。やっぱ僕は女優ぬきに映画を観られない人間のようだ(笑)。

(2004年筆)

スイミング・プール(Blu-ray Disc)スイミング・プール(Blu-ray Disc)

松竹 2012-12-21
売り上げランキング : 18077
Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする