《 大間原発差し止め提訴 》 【 国策の是非問う意味は大きい 】 2014/4/6 地方紙「社説」より
[地方自治体が国の政策に待ったをかける大きな動きである。北海道函館市が、対岸の大間原発(青森県大間町)の建設中止を国や事業者の電源開発(Jパワー)に求め、東京地裁に提訴した。住民や市議会、周辺自治体の指示を受け立ち上がった事実は重い。政府は真摯に受け止めなければならない。
津軽海峡を挟み最短で約23㌔圏に位置する大間原発。函館市は地域防災計画の策定が必要な半径30㌔圏「緊急防護措置区域(UPZ)」にかかる。危険が明らかなのにも関わらず、立地自治体でないという理由で原発の建設や華道の決定に関与できない。この矛盾さを問う意味でも、この訴訟はもっともであり、論議につなぐ必要がある。
東京電力福島第1原発事故の惨状を見れば、住民の不安は想像に余りある。福島の事故の原因もまだ解明されておらず、原発の安全性が確立しているとはいえない。命を守る保証はここにもない。
加えて、大間原発は、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物(МОX)燃料を全炉心に使う世界初の商業炉だ。
МОX燃料は、核分裂を押さえる制御棒の効きがウラン燃料より低下するなど、事故後の制御が難しく危険性が高いとの指摘がある。大量のプルトニウムを内蔵し、事故時には、福島以上の甚大な被害をもたらす恐れが大きい。
世界でも例がない原発である上、Jパワー原発運営の経験を持たない。いざついうときに迅速で的確な対応ができるのか、懸念は拭えない。原発の敷地内には活断層がそんざいし地震を繰り返していた可能性も、研究者らによって指摘されている。
さらには、核のゴミ問題も未解決のままだ。使用済みМОX燃料は放射性物質の量が多く、発熱の期間も長いが、処分場のめどはなく、処分方法も決まっていない。
こうした状況にもかかわらず、政府は、「大間原発は既に原子炉設置許可を受けている」と、福島第1原発事故以前の許可の事実を持ちだし、建設継続を主張する。納得できるはずもない。
無責任な国策を見過ごすことはできない。司法の場で一つ一つ検証する必要がある。
函館市の工藤寿樹市長は、「声を上げないのは原発で何が起きても泣き寝入りすることだ」と語った。住民の命を守るのは自治体の最大の責務だ。市長の言葉は、政府が原発再稼働へ前のめりになっている今、このままでいいのかという各自治体や国民への問いかけでもある。
四国電力伊方原発の今後も含め決して人ごとではいられない。住民自らの問題として真に向き合う機会にしたい。]
[地方自治体が国の政策に待ったをかける大きな動きである。北海道函館市が、対岸の大間原発(青森県大間町)の建設中止を国や事業者の電源開発(Jパワー)に求め、東京地裁に提訴した。住民や市議会、周辺自治体の指示を受け立ち上がった事実は重い。政府は真摯に受け止めなければならない。
津軽海峡を挟み最短で約23㌔圏に位置する大間原発。函館市は地域防災計画の策定が必要な半径30㌔圏「緊急防護措置区域(UPZ)」にかかる。危険が明らかなのにも関わらず、立地自治体でないという理由で原発の建設や華道の決定に関与できない。この矛盾さを問う意味でも、この訴訟はもっともであり、論議につなぐ必要がある。
東京電力福島第1原発事故の惨状を見れば、住民の不安は想像に余りある。福島の事故の原因もまだ解明されておらず、原発の安全性が確立しているとはいえない。命を守る保証はここにもない。
加えて、大間原発は、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物(МОX)燃料を全炉心に使う世界初の商業炉だ。
МОX燃料は、核分裂を押さえる制御棒の効きがウラン燃料より低下するなど、事故後の制御が難しく危険性が高いとの指摘がある。大量のプルトニウムを内蔵し、事故時には、福島以上の甚大な被害をもたらす恐れが大きい。
世界でも例がない原発である上、Jパワー原発運営の経験を持たない。いざついうときに迅速で的確な対応ができるのか、懸念は拭えない。原発の敷地内には活断層がそんざいし地震を繰り返していた可能性も、研究者らによって指摘されている。
さらには、核のゴミ問題も未解決のままだ。使用済みМОX燃料は放射性物質の量が多く、発熱の期間も長いが、処分場のめどはなく、処分方法も決まっていない。
こうした状況にもかかわらず、政府は、「大間原発は既に原子炉設置許可を受けている」と、福島第1原発事故以前の許可の事実を持ちだし、建設継続を主張する。納得できるはずもない。
無責任な国策を見過ごすことはできない。司法の場で一つ一つ検証する必要がある。
函館市の工藤寿樹市長は、「声を上げないのは原発で何が起きても泣き寝入りすることだ」と語った。住民の命を守るのは自治体の最大の責務だ。市長の言葉は、政府が原発再稼働へ前のめりになっている今、このままでいいのかという各自治体や国民への問いかけでもある。
四国電力伊方原発の今後も含め決して人ごとではいられない。住民自らの問題として真に向き合う機会にしたい。]