刻みが終了してから、建て方まで時間が空く事がありますが、その間に木材のあの乾燥が進み、木が狂ってしまいます。
そうすると、せっかく加工した材料を、また加工しなおさなければならなくなります。
木が狂う方向を見定めて、あらかじめ対応する措置をしておけば、建て方で調整することが少なく済みます。
木材が開こうとする
木材は、基本的に木表(きおもて=木で立っている時の表側)が縮み、反ってきますが、それを押えるようにPPバンドを巻いて締めておけば、開きません。
この開こうとする木の性質を利用すれば、柱に差して、それが開こうとする力がかかるので、お互いがガッチリと噛み合うのです。
柱と桁がお互いに噛み合う
伝統構法はこうした木の特性を上手く取り入れています。
特に「越後杉」は「狂い易い」という悪評がありますが、逆に言えば狂うことでお互いががっちりと噛み合う要素が強いワケです。
実際の通し柱と桁の収まり・・
シャチ栓が差し込まれて、彫り込まれた部分は見えません。
何気ない所に知恵は生きています。
今回紹介しているのが、全てではありません。伝統構法の継ぎ手、仕口は無数にあり、それぞれが木を活かす工夫のかたまりです。皆、意味がある。何度も何度も繰り返し刻んでいくうちに、その意味を読み解くことが出来るようになりました。
それを適材適所、あるいは自分で工夫して新しい継ぎ手等を開発していく・・それが伝統構法を駆使する我々の技術です。
そういった事を絶えず考えているからこそアイディアが浮かんでくるのです。
加工した部分をPPバンドで巻く・・
それは、誰から教わったことでもありません。自然と考えが出てきただけです。
とよく言われますが、山に生えている木は一本一本個性を持っています。乾燥の良し悪しもそれぞれ違います。均一な工業生産品ではなく、乾燥と共に変形してくる。
その特性を理解したうえで利用すれば、耐久性のある強い建物になります。
200年、300年と建ち続けてきた古民家がその耐久性を証明しています。
最近の住宅政策の目玉である「長期優良住宅」の目指すべきものは、こういった高耐久の伝統建築物でしょう・・
「古臭い」というイメージが先行していますが、現代のデザインに合わせる事は十分可能です。色々な形が作れる可能性を秘めていて、しかも高耐久・・
西洋を手本にした近代的な「在来工法」では金物に頼るだけなので、「噛み合う」という特性は活かせません。むしろ、「空く」ことで弱くなっていきます。金物が錆びたり緩んでしまえば、そこで耐久性が決まります。
伝統構法を使って、新潟の山の木を最大限に活かしきる・・そういった面白さがあるのです。
そして、地元の木を使えば、省エネルギーで環境負荷も最小で済みます。山の手入れもされ、水もきれいになる・・経済も地元で廻すことができる・・
まさに一石二鳥とも三鳥、四鳥にもなる。
でも、クセのある越後杉です。一朝一夕の技術では使いきれません。
「越後杉」を構造材に使うときは、その特性を十分に理解し、仕口や継ぎ手について、検討する必要があるのです。木と向き合うのに生半可な心意気では負けてしまいます。
という意気込みでしょう。
伝統構法の特徴へ・・