詳細計算ルートの評価手順です
このブログは一般の消費者の方々が参考にされるのと同時に、専門家も見られているらしいので、省エネ講習会の「おさらい」程度で説明を行いたいと思います。
一般の方は「こういう方法で計算をしている」程度の予備知識でとどめておいてください。実際に計算・評価を行うのは資格のある設計士や評価機関となります。
ここでは、「詳細計算ルート」の手順を説明します。
1.標準モデル
2.外皮性能を計算する
3.UA値の計算と判定
4.日射熱取得量 mC、mHの計算
5.平均日射取得率 ηAC、ηAHの計算と判定
6.一次エネルギー消費量の計算
7.評価方法
以上の流れで評価を行っています。
国交省の省エネルギー説明会で良く使われるプランです。今回はこのモデルを使います。
標準モデル
1階面積 67.90㎡ 2階面積 52.18㎡ 床面積合計 120.08㎡
居室の分類ごとに面積を求めておきます。(分類によって冷暖房の使う時間帯を変えているため。)
部屋面積
居室の分類 | 面積(㎡) |
主たる居室 | 29.81㎡ |
その他の居室 | 51.35㎡ |
非居室 | 38.92㎡ |
主たる居室は、人が昼間と夕方にかけて暮らしている可能性が高い部屋。
その他の居室は、寝室等の夜に使う可能性が高い部屋。
非居室は、1日に何時間も居ない可能性が高い通路や水廻り、納戸など・・
外部に面する壁や屋根、床、サッシの面積と各部位の熱の逃げやすさを計算します。
貫流熱損失qの計算
部位 | 外皮面積A | U | 温度差係数H | 貫流熱損失q | 損失率% |
屋根・天井 | 67.91 | 0.23 | 1 | 15.62 | 6.25% |
外壁 | 140.04 | 0.44 | 1 | 61.62 | 24.62% |
ドア | 3.51 | 4.65 | 1 | 16.32 | 6.53% |
窓 | 28.71 | 4.65 | 1 | 128.68 | 51.49% |
床 | 58.8 | 0.48 | 0.7 | 19.76 | 7.91% |
基礎(外) | 8.65m | 0.44 | 1 | 3.80 | 1.52% |
基礎(内) | 8.65m | 0.67 | 0.7 | 4.05 | 1.62% |
合計 | 308.07 | | | 249.90 | 100% |
q=A×U×Hで計算します
貫流熱損失qは各部位の熱の逃げやすさです。
窓が51.49%ですから、建物全体のほぼ半分がサッシより逃げていることが分かります。サッシの断熱性能を見直すことが省エネ設計の第一のポイントです。
↓ q=A×U×Hの式はここで説明していますU値を補正する 一次エネルギー消費量の計算(2) - べんりや日記
実際の建物では各部位で熱の逃げ方が違います前回は犬小屋を例にU値を求めました。実際の建物の熱の逃げ方は屋根と壁、床で違ってきます。室内では空気の対流が起こり、天井...
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UA(外皮平均熱貫流率)の計算を行い、適合するかを判定します。
UA= q(貫流熱損失の合計) ÷ ΣA(外皮面積の合計)
で求められるので、
UA=249.90(W/K) ÷ 308.07(㎡)=0.82 (W/㎡・K)
東京都は6地域なので、最高UA値は0.87となっているため、
UA=0.82 ≦ 0.87 OK
基準値以下なので、UA値はクリアするのが確かめられました。
次に各部位から太陽光からどのくらい熱を受けるかを示す、「日射熱取得量」を計算します。日射熱取得量は各部位ごとに季節(冬と夏)、方向、角度によって異なるので複雑な計算となります。
mc:(夏の)冷房期の日射熱取得量= 6.33 W/(W/㎡)
mH:(冬の)暖房期の日射熱取得量= 11.82 W/(W/㎡)
が計算で求められます。(別の機会に解説を行いたいと思います。)
平均日射取得率η は日射熱取得量mを外皮面積Aで割った値で、冷房期と暖房期の両方を求めておきます。
ηAC:(夏の)冷房期の平均日射取得率 = mc(冷房期の日射熱取得量) ÷ ΣA(外皮面積の合計)
ηAH:(冬の)暖房期の平均日射取得率 = mH(暖房期の日射熱取得量) ÷ ΣA(外皮面積の合計)
ηAC = 6.33 W/(W/㎡) ÷ 308.07(㎡)= 2.1
ηAH = 11.82 W/(W/㎡) ÷ 308.07(㎡)= 3.8
このうち、 ηACに関しては、6地域において最大値(2.8)が定められていたため、
ηAC = 2.1 ≦ 2.8 OK
基準値以下となるのでクリアできる事が確かめられました。
これで、「外皮性能」は基準を適合することが確認され、次のステップに移る事になります。
ここまでは、電卓を使った手計算よりもEXEL等の表計算プログラムを使えば容易に作業が進みます。
外皮性能の各計算が終わったところで、今度は設備器具を使った時に、どれだけのエネルギー損失となるのかをシュミレーションするのが「一次エネルギーの計算」となります。
詳細計算ルートではWEB上に用意されたプログラムを用いますが、その際に先ほど求めた外皮性能値の他に、実際に使うエアコンや給湯設備、換気扇や照明器具、発電システムも入力の対象となります。
省エネ対応の設備機器を使えば、よりエネルギー効率が良くなるのです。
住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム
↑のサイトを開くと、計算プログラムが出てきます
一次エネルギー計算プログラムの表紙
このプログラム上で、今まで計算した外皮性能の値や一般のエネルギー効率の設備器具を選んで「計算」すると・・
計算結果
上記の結果が出てきます。
この結果を用いて、評価を行います。
省エネルギー基準やZEH水準をクリアするかどうかの評価の方法を解説します。
評価方法
①設計一次エネルギー消費量 ≦ 基準一次エネルギー消費量
②BEIを計算し、
省エネルギー基準 BEI≦1.0(一次エネルギー消費量 等級4)
ZEH水準 BEI≦0.8(一次エネルギー消費量 等級6)
であることを確かめます。
前述の結果の評価は・・・
で、省エネルギー基準はクリアできていますがZEH水準はクリアできていません。
それもそのはずです。一回目は「標準の設備機器」を選んでいたためです。
今度は、設備機器を高効率のものに選び直して再計算します。
今度は、省エネルギー基準もZEH水準もクリアできました。
このように、設備機器の効率を選びながら基準をクリアできるかどうかを入力し、評価を繰り返すことで、基準をクリアする方法を探っていく作業となります。
詳細計算ルートを使うことで、「省エネルギー基準」や「ZEH水準」をクリアしているかどうかを確かめる事ができます。
次回は、「仕様基準ガイドブック」を用いて、「省エネルギー基準編」や「誘導基準編」の仕様内容を確かめてこうと思います。
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