何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

星野リゾートの事件簿

2009-12-14 21:23:24 | Book Reviews
星野リゾートの事件簿 なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか? 中沢康彦・著、日経BP社、2009年6月22日

p.5-6 星野は、再生を実現するためには、社員のモチベーションアップが不可欠だと考えている。だから社員の自由なコミュニケーションを重視する。
 星野リゾートでは、若いスタッフが上司に向かって、遠慮することなく「自分はこう考える」と主張する姿を目にする。星野は、「誰の主張か」ではなく、「どんな主張か」が重要だと考える。

 どんな意見でも上司の意見は尊重する、たとえ現実にそぐわなくても、賛同が得られなくても、としたら、誰が建設的な意見を述べるというのか。地位のある者の考えは、常に正しいのか、尊重されなければいけないのか、判断能力があるといえるのか。

p.14 星野はスタッフに直接、「リゾート運営の達人を目指す」「コンセプトを明確に定め、顧客満足度を上げよう」「全員が自由に意見を出そう」と自分の考えを明快に語りかけた。

 自由に意見が出せて、主体的に取り組める環境が与えられたスタッフは、動きたくて仕方がない、働きたくて仕方がない。

p.33 基本的な方向が定まると、具体的なサービスの中身はスタッフに任せる。それが星野のやり方だ。「現場を知るスタッフが、『お客様に喜んでいただきたい』と思うようになったとき、大きな力が生まれる。その力にはどんな専門家も勝てない」と考えるからだ。

p.40 星野リゾートには「言いたいことは、言いたい人が、言いたいときに言う」という文化がある。青森屋のスタッフが星野リゾート流に慣れるには時間が必要だった。

p.43 「青森屋のスタッフが、自分たちの取り組みに自信を持ってほしいと思った。企業にとって目標達成は大事だが、それにこだわりすぎないほうがいいときがある。今回はプロセスを重視し、『ここまで来たのだから、出そう』と決めた」

p.59 星野は「同じリゾートに再び訪れてもらうのは、それだけ難しい。だからこそ、リピートしてもらえるように顧客満足度を高めることが必要だ。それだけ顧客満足度を上げるのは大切なことだ」と語った。

p.100 「WHAT(=何をするか)を決めたら、HOW TO(=どう実現するか)は現場に任せる。そんな星野リゾートのやり方を実感した」と松沢は振り返る。

p.141 「旧経営陣のときは、上から命令され、それに従うだけだった。仕事はやりがいのないものだった。それが星野リゾートになった途端、『自分たちでコンセプトを作ろう』と、大きく変わった。何だか面白そうだと思った。だから20代だった自分も迷わず参加した」

p.205 社員が辞める最大の理由は「組織に対する不満」だった。星野はトップダウンで改革を進めたが、社員は命じられて動くことに疲れていた。社員は不満を募らせていたが、自分の意見を主張する場がなかった。

p.208 「社員の気持ちや都合に会社が応えていないところにこそ、問題があるのではないか。会社の仕組みに辞める原因があるに違いない」「社員に『あるべき姿』を強要することが、退職につながっている」
 考え続けていくうちに、星野は会社の制度を社員のニーズに合わせるべきではないか、と気づいた。

 会社の仕組みに社員をあてはめるのではない。社員ひとりひとりの事情にあわせた仕組みを用意すればいいじゃないか。個々のニーズなんて聞いていられない、それが誤りの始まりだ。

p.212-3 星野リゾートは、社員一人ひとりの希望に応じて、多様な働き方を実現する仕組みを用意している。会社の都合で社員に押しつけたりしない。

p.214 星野は「社員が定着してこそ、一人ひとりが業務の習熟度を上げることができる。それがサービスの質を高め、顧客満足度の向上につながる」と解説する。
 仕事に対する社員の多様な姿勢を認めることで、会社と社員は結ばれる。

p.218-220 私は星野リゾートで発生するこうしたコンフリクトを「事件」と呼んでいる。
 事件が起きた時には、何よりも解決に向かって動き出すことが大切である。ただし、私にとってそれは「その場が収まればそれで良い」という意味ではない。
 事件が発生するのは、何らかの原因があるからである。そこには、スタッフが気がついていなかった「何か」がある。
 その「何か」をつかむために、星野リゾートでは事件をその場限りにしない。事件を通して、しっかり考え抜くことで、新しい発想が生まれ、スタッフが成長する。つまり、事件こそが新しいサクセスストーリーを生むのである。

p.221 私は社内向けのブログや研修を通じて、これまでに起きた事件のあらましと対応を紹介している。過去に社内で起きた事件を知っていれば、似た出来事が周囲で起きたとき、事件化を防ぐ対応を取ることができる。万が一、事件に発展してしまったとしても、正しい判断をするポイントを過去の事例から知り、最善の策を打つことができる。
 事件への対応は、手間がかかるが、それによって得られるリターンは大きい。だから、私は事件をうやむやにしない。私はある意味で、楽しみながら事件に対応している。事件が起きて、のたうちまわっている社員の姿を見ると、私は楽しくなってくる。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする