何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

経営戦略を問いなおす

2008-08-01 22:59:26 | 薬局経営
「経営戦略を問いなおす」 三品和広・著、ちくま新書、2006年9月10日

p.21 それなりに頭の良い人が、推論の過程を途中で間違えることは滅多にありません。間違えるとしたら、推論の前提となる仮定のほうです。

p.24 秋も深まってくると判で押したように「そろそろ来季の事業計画を考えないと・・・・・」と幹部陣が動きだします。これは、よくよく考えてみると、実に不思議な話です。戦略がカレンダーに連動して、定期的に策定されることになっているのです。

p.24-5 計画と戦略は別物です。計画の前に戦略ありき、そういう状態を作らないといけないのですが、コンセンサスを重視する日本の会社の中で、組織を動かすのは計画になっています。それがまずいのです。機を見るに敏という表現がありますが、計画の世界には、「機」の概念がありません。

p.34-5 売上は顧客なしでは成り立ちません。自社のプロダクトやサービスを、自由意思を持つ顧客が受け入れてくれて初めて売上が上がるのです。そのプロセスでは、他社のプロダクトやサービスも検討対象に入るでしょうし、支出をしないという選択肢もあります。そういう顧客を前にして売上目標を語るとは、何ともおかしな話です。顧客に向かって、購入目標を持てとでも言うのでしょうか。

p.46-7 (実質売上高における実質営業利益が経年で伸びている企業には)共通する特徴があります。手を伸ばせば届くはずの売上に、敢えて手をつけていないのです。言い換えれば、売上は伸ばすものではなく、選ぶものという意識がどこかにあるのでしょう。それらの企業に一貫性があるのは、経営体制に基礎があるのです。
 他方、(実質売上高における実質営業利益が経年で伸びていない企業には)創業者がそれなりの照準を持っていても、二代目以降、またはサラリーマン経営者が、拡大路線に走りやすいのかもしれません。
 いずれにせよ、規模を拡大したほうが負けという図式が成り立つことは、意外だと思いませんか。成長を「目的」とする愚が、これで少しは伝わるのではないでしょうか。売上は伸ばすより選ぶことが肝心なのです。また、そういう節操を保つことが、経営の奥義と知るべきでしょう。

p.65 経営戦略における「立地」、それは地勢上のそれではなく、社会におけるポジショニング、存在の意味をあらわす。社会の中で、どのような位置に存在するのか、どのような部分で機能や役割を果たしていくのか、社会の中での「立地」である。

 薬局は医薬分業推進により経済的には社会の中で大きな位置を占めるようになってきたかもしれないが、それは国民に処方せんによる調剤を医薬品の交付の側面で支えてきたものである。医療法改正や薬事法等改正で示されたように、これからは安全確保、適正使用のための服薬管理が要請される時代である。業務や行動の外観は似ていても、薬局が活動する社会の中で機能する「立地」は明らかに変わったと受け止めるべきではないか。同じ薬局であっても似て非なるものだ。そこに理念が転換できるかどうかが重要ではないだろうか。

p.105 押しつけられた仕事にのめり込む人はいませんが、自分で発案する仕事はやみつきになるのです。自分の創意工夫で組み立てて、やった仕事の結果が目に見える。そうなれば、仕事はもはや麻薬と同じです。面白くて面白くて、やめられるものではありません。

p.107 会社を辞める人間の大半は、やりたい仕事ができないがゆえに自ら去っていくのです。
 給料が安いと文句を垂れながらも会社人間になり、定年まで同じ会社にとどまる人がいるとすれば、打ち込める仕事があるからに他なりません。あくまでの人材第一主義という会社の成り立ちが先にあって、その結果として「終身勤務」が実現するに過ぎないのです。

p.109 良かれと思って出した企画なのに、上から正面否定されるという傷を負った社員は、二度と自分の頭を使わなくなってしまうおそれがあるのです。自分が良いと思うかどうかと無関係に、鶴の一声で物事が決まる場に遭遇すれば、最初から鶴の意向を確かめに行くのが合理的な適応行動になってしまいます。みんなが鶴の顔色を窺うようになると、上の人間の目が届く範囲でしか会社は仕事ができなくなってしまいます。その限界を超えて何かをしようとすれば、結果はガタガタ。

p.117 答えは立場間ギャップにあります。経営者が考える戦略は、会社をどうしたいです。ところが「戦略がない・・・・・」とつぶやく社員が探し求めるのは、自分が担当する事業をどうしたいのかという会社側の意思表示です。表面上の差は小さいように見えますが、ここには超えがたいギャップが横たわっています。

p.131 ビジョンの第二の意味は「未来像」となっていますが、これがあてはまるのは、ビジョンを言葉にした経営者の在任期間だけでしょう。

p.131-2 ビジョンが継承されないのはどうしてでしょうか。理由は大きく分けて二つあります。一つは、世の中が刻々と変わるからです。ビジョンを掲げた時の時代背景が関わっている。ビジョンを言葉にした瞬間、ビジョンの陳腐化が始まることは避けられません。
 もう一つの理由は、人の自我にあります。着任した以上は前任者との違いを打ち出そう。そう考えるのが、人のサガなのです。「前任者の路線を継承し・・・・・」と言うのは口だけで、内心は自己を打ち出すことに強烈な意欲を燃やします。

p.172 経営は何をもってするものなのでしょうか。答えは事業観です。事業観の形成には、観察が必要なので、全くの異業種から“落下傘”で降りてくる人に経営ができるかと言えば、難しいと思います。

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