(前回からの続き)
(本稿のタイトルに「円安:」を付けました)
とりわけ、日商・三村会長の「適切な円安の議論をしないといけないレベルだ。(円安により)原材料価格が上がる」とのコメントには個人的に共感を覚えます。こちらの記事を含めて、本ブログでも同じような見方を何度か綴ってきたからです。「アベノミクス」をけん引する首脳陣―――麻生財務大臣や日銀・黒田総裁といった方々は、現状の為替レートについて「行き過ぎた円高の是正の過程にある」といった見解を示すことが多いわけですが・・・実際は三村会長がまさに指摘されるような状況にあります。つまり、いまは円高修正どころか「行き過ぎた円安を憂慮すべき事態」にあるということです。
以前から書いていることの繰り返しとなりますが、「適切な」為替レートがどれくらいなのかを判断する場合は、「1ドル105円」などといった名目上のレートではなく、比較する通貨国の物価とかインフレ率などの違いを反映させた購買力平価説をふまえたレートをチェックすることが大切だと考えています。
この場合、よく引き合いに出されるのが「ビッグマック指数」です。同指数の定義はこちらの記事などに書きましたのでここでは省きますが、2013年の同指数データによると、アメリカのビックマックの価格は4.37ドルであるのに対して日本では320円。これを為替レートに換算すると1ドル約73円となります。足元では同105円(1月10日)ですから、何と40%あまりもの「超円安」ということに・・・。アメリカのビッグマックが日本円で約460円! これではハワイ旅行は当面見送ったほうがよさそうですね・・・。
まあさすがにビッグマックの価格だけで適切な為替レートを断ずるのはいかがなものか、と思います。やはり重要なのは、これも三村会長が言及されている原材料価格、とくに石油価格とレートの関係でしょう。
そこで、わが国において「この値段ならば何とか耐えられるかな・・・」というくらいの石油価格となるドル円レートが現在、どれくらいなのか、を以下に試算してみたいと思います。ここで比較の対象とするのは2007年のデータ。なぜそうするのかといえば、2007年と現在のアメリカとわが国の経済情勢が似ているから。当時、アメリカは不動産バブル末期で個人消費が好調、そして日本は外需主導により景気が良いとされていました(もっとも「実感なき景気回復」などと言われていましたが・・・)。そして当時の金融市場はリスクオンの円安モード(円キャリートレード等によるもの)でした。
で、そんな2007年の石油価格ですが、年間平均で72ドル(バーレル/トン当たり)くらい。これに同年の平均為替レート1ドル約118ドルを乗じると、円建ての石油価格は8496円(同)となります。これに対して現在の石油価格は同98ドルほど(2013年の平均価格)になります。この値で8496円を割ると、1ドル86~87円―――このあたりの為替レートが現状での円建て石油価格の許容上限ライン―――個人的にはそう考えています。
で、直近では1ドル105円・・・三村会長のご懸念はもっともだ、と思うわけです・・・。
(続く)
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