20年以上に渡って経済界の要求ばかりを優先して、働く人たちの給与改善を後回しにしてきたツケが、「賃金デフレ」となって経済活動を停滞させた。
民主党政権に交代した時期に、人への投資を掲げた目標で「同一労働同一賃金」、「最低保証賃金1000円/時」を目指すとしたが、実行力はほぼゼロであった。
デフレ脱却を最優先した安倍自民党内閣では、円安誘導による生産力への優遇を図るのは良いとしても、輸入品の価格上昇に対して、「配慮がゼロ」であった。
企業を儲けさせれば、働く人への配分が当然増えると期待した「自民党政権の甘い幻想」は、3年間での実績が「実質賃金のマイナス」に転落した有り様だ。
現在の経済不況の根源は、大企業や富裕層にお金を儲けさせても、働く人への配分は最小限度になる「資本主義の仕組み」に起因している。
インフレターゲット論では、物価上昇率目標を掲げて、将来は確実に諸物価の価格上昇が起きる、と大多数の人に浸透させることが必要という。
物価が上がることで「お金の名目価値が下がる」と信じさせれば、お金を貯めこむのではなく、【物価上昇前に消費に回すはずだ】との理屈に立っている。
しかし、物価上昇率以上に「賃金水準が確実に上がっていく」と、信じなければ日本のような節約志向の高い国民性では、将来に備えて貯蓄を優先する。
このことがわかっていない「米国の経済学者」には、「アベノミクスの欠落」が見えていなかったようだ。
しかし「インフレターゲット論」を提唱しているアメリカの経済学者は、日銀総裁が「物価上昇率目標2%達成」する、と打ち出したがそれではダメだ、と言う。
実際に2%達成をしたいのなら「物価上昇率目標を4%」と言うのが良い。
実際の政策が実行されるのに当たって「臆病の罠」のリスクが必ず浮かんでくる。
つまり必要な目標数値が低めに設定されて、「政策が妥当でも成果は中途半端」になってしまうことで、政治的にも経済的にも裏目に出るリスクがある。
日銀総裁の目標値は、反インフレ派の人たちが反発しすぎない低めに設定した、妥協点の数値であろう、と推測する。
その結果として「インフレ率は1%」以上には上がらない。
後付けの説明だが、アベノミクスの物価上昇率は1%程度であり、国民、消費者の認識では、インフレが起きるとは思わないない現状である。
これでは、誰でも「アベノミクスの超金融緩和政策」は信ぴょう性が失われて、倹約意識が増加するだけで「貯蓄志向」を助長してしまう。
日本国民の倹約意識が高いことを知っている企業経営者は、消費がそうは簡単には増えないと見てしまうので、設備投資の計画は先送りするだろう。
アメリカ人よりも節約志向の強い日本人には、「臆病の罠」を乗り越える「高い物価上昇率目標」が必要だと提唱している。
日本で「デフレ脱却」を目指す対策には、4%物価上昇率を目指す政策が良い。(続)