安倍政権が発足当初から「最優先課題は経済再生」であると、言い続けていながら未だに経済成長率は「年率でマイナスに転落」するような体たらくである。
このような不成功の原因には、働く人の収入増加を、上から徐々に浸透させていく考え方の「トリクルダウン効果」に依存したのが、間違いの根源だ。
本来なら、下からの給与増額が始まりで、それに押し上げられる力が最大になる潮流を作り出せば、国民全体の消費購買力の増加につながる。
国内の消費が上向きになればこの機会を逃さずに「商機を捉える企業」が続出して、新規の投資が活発化するのである。
この機運が生まれて初めて、日銀の「超金融緩和政策」の効果が生まれるのだ。
安倍政権のやっている経済政策は、始まりのところを「避けて進もうとした」ので、効果が生まれずに円安誘導だけが引き起こされた。
弊害としての輸入物価の上昇によって、消費購買力はさらに減少して、アベノミクスの経済成長の成果は、的はずれであることを証明した。
「下からの押上げ効果」をなぜ避けたのか、理解できない状況だが、「賃金の引き上げに政府が干渉する」のは、やってはいけない、との固定観念が邪魔したのだ。
先進国では、最低賃金の引上げ政策には、積極的に政治が介入している。
このブログでは、2015年7月31日、8月1日に、欧州各国とアメリカの「最低賃金の引上げ政策」の実情を紹介したが、日本がもっとも低い実績である。
この時は、【格差拡大社会】の問題点の具体的な数値としたが、格差問題よりも、デフレ経済の解決策の入り口として論じる段階になってきた。
日本が現状の「798円/時」で低迷している状況から、欧米の「1160から1310円/時」に最低賃金の引上げを実行に移せば、消費購買力の増加は顕著になる。
通常よりも勤務条件がきつい職種では、その金額にさらに上乗せする必然性があるので、当然の帰結として「底辺の給与全体」は押し上げられるのだ。
ここまでは、政治が介入して賃金の引上げが、実現可能な政策である。
問題とするべきは、民間企業の「従業員の賃金」の水準に、政府や自治体の力で上昇効果をうみだせるのか、未知の領域の話になっていく。
安倍政権が遅ればせながらも、取組を宣言した「同一労働・同一賃金」の実現へ向けての政策であるが、「国民会議」で議論を始める、言い出している。
何を今更、新人政治家のような「幼い議論」を始めて、時間を浪費するのか。
だれがみても、「非正規雇用社員」と「正規社員」の待遇違いと賃金格差は、理不尽であることは明確なデータが出ているのだ。
正規社員に比較して「非正規雇用社員」の給与は、6割程度の低賃金に抑え込まれている現実を直視すれば、実行すべきことは、明らかである。
安倍首相の本気度を測るには、この「非正規雇用」の縮小にかかっている。(続)