安倍政権の経済政策の行きつまりは、お金の流れる量を増やすことで「需要不足経済」が活性化すると想定したが、思惑ハズレであった。
超金融緩和をしても国内投資は増えず、富裕層や大企業を儲けさせても、周辺の人が少し恩恵のおこぼれに預かるだけで、全国には浸透していかない。
資本主義の原則は「資本収益率の高いところにお金が集中する」ということを、安倍首相は改めて知らしめさせられたのであろう。
そこで、政府が介入できる賃金増加によって、直接的に消費者の懐を満たすことに方針を転換せざるを得なくなった。
新自由主義の最大の欠点である「資源の適正な配分が出来ない」ことを知って、自由主義から政府介入を深めることにしたのだ。
資本主義を突き詰めると。収入格差の拡大が社会不安を引き起こすレベルに達した段階で、戦争や暴動などの暴力的な破壊する方向に世論が沸騰して、資本主義経済の徹底的なダメージを与える段階に進んでしまう。
いまや、世界は新自由主義の悪影響が顕著となり、破壊活動が多発する不安定な社会に進みつつある・
日本はそこまで破壊的ではないが、人々は将来不安が増えて、日本では【子育ての不安ばかりを誘う】ので、人口減少は慢性的な流れで長期的には衰退する。
日本は長期的な衰退する傾向に対して、ついに「予防的な政策」として、『人への投資を可能な限り最大化』する方向に転じなければならない。
安倍政権はスローガンとして「一億総活躍社会」を目指すと掲げた。
その一段目とし、保育士、介護士の給与アップと「同一労働同一賃金」の目標を掲げて「収入格差の拡大防止」を政策の前面に押し出してきた。
それに抵抗する勢力範囲は、広い層に存在しているが、自由市場主義の限界が見えているので、政府の役割が一層重くなっている。
資本主義を信奉する経営者たちは、政府が賃金水準の決定に介入するのに、抵抗する姿勢だが、国民の代表であるから「文句を言うのを抑え込む」はずである。
日本が長期的な衰退に向かっているのに、世界で自由に経済活動をしたい「多国籍企業の経営者」の要求を、優先的に聞いてきたことが、そもそもの誤りだ。
国の役割は持続的に繁栄を続けられる制度を作り、国民の生活を豊かに保つことが「最大の役目」である。
世界中で好き勝手に活動できる多国籍企業の利益を優先する理由は、その国にとっての富をもたらす企業であるから、優遇して利益追求の自由を与えるのだ。
しかし、ブラック企業とまではいかなくても、政府が要請するレベルの賃金水準を提供できない企業経営者を、保護する必要はない。
必要な賃金水準で黒字経営ができないならば、企業責任で経営者を交代させることで、要求どうりの賃金で利益を上げられる経営に転換するだろう。(続)