東京都が築地市場の移転先を「土壌汚染のもっどもひどい豊洲の用地」に決めてしまったのが、問題の発端である。
そのあとフォローとしては、「土壌汚染対策は盛り土方式」と、専門家会議の提言を受けて、東京都の正式方針として決定した。
その基本方針を受けて実務者は、「安全対策として疑問」を持ったとしても当然である。
しかし、「専門家会議」と「都庁の正式決定」には、異論を挟むことは、内部会議で問題としても、変更は簡単なことではない。
ここで、唯々諾々と、「お説ごもっとも」として、設計方針通りに決めていけば、今回の豊洲問題は起きなかったと、言えるのだろうか。
問題は、国の方針で進めていた「土壌汚染対策法の改正」が影響して、市場の関係者が「将来的な土壌汚染に不測の事態が見つかった場合」の懸念であった。
つまり、社会の環境に対する意識が高まり、国の方針も厳しくなく傾向を意識していたのである。
もし【汚染土壌が見つかり、国から対応を求められた事態】を想定すると、「全面を盛り土」にしたから、OKと承認されるはずは無い。
その場合に備えて、「重機を搬入できて対策工事のできるモニタリング空間」が必要になると判断したのは、正しい技術的な判断であった。
さらに、2011年3月の大震災の被害で、【埋め立て地周辺では土壌の液状化】が著しいことが判明した。
豊洲の用地は、液状化の被害が想定されるのは当然であり、その被害が生じても、対策工事が可能になる「地下のモニタリング空間の設置」は、想定される将来に向けてのベストの選択であるとの認識になったのだ。
新市場の整備部長が「地下にモニタリング空間を作らないとダメだ」といって、部の方針として内部会議で確認した、のは、今からみても、正しい選択であった。
しかし、その方針変更を、上司や技術会議に報告して説明をしなかったのは、不可解な判断である。
最善の策は、盛り土をした上に「モニタリングとメンテナンス用の地下空間を設置するのが、技術上での最良の選択であろう。
ここで、当時の状況を推定すると、費用の増加に神経を尖らしていた、「当時の石原都知事」の意向に逆らうことは、役人の本質上はできない。
そこで4.5mの盛り土をやめ、その部分だけを「モニタリング空間に変更」する設計方針にすれば、建設コストも削減できる上に、将来的に責任を最小にできる。
一石二鳥の妙案に、部課長会議のメンバーは満足したであろう。
2011年8月には、「基本方針に反して部としてモニタリング空間設置」に、実務的に決定した。ここで、上司や技術会議の了承を取り付ける責務があったのだ。(続)