経済界や経済産業省が「働らいた時間と関係なく成果で賃金が決まる制度」を安倍政権が実施する様に主張してきた「新制度」が、成長戦略に盛り込まれる。
人が健康に働き続けるには、1週間で48時間を目途にして、働き過ぎによる過労を防止する「労働時間の規制」を、規制緩和するという狙いだそうだ。
19世紀の過剰な労働時間による「労働者残酷物語」を、20世紀を通じて、適正な労働条件には、労働時間の制限をするのが、正当な人権の保護である。
こうした考え方を、経済成長一辺倒に持っていく、時代逆行型の愚策だ。
何のために「労働時間に関係しない働き方を強要する」制度が必要なのか。
マスメディアでは、【残業代ゼロ制度】と批判的に報じているが、その真の意図が判らないままに、「対象者を年収1000万円以上」に限定する、と決定した。
「正規賃金と残業代、休日出勤手当」で1000万円を超える社員は、どれほどいるのかというと、国税庁の統計では3.8%となっている。
これには、現在の管理職も含めてだから、非管理職で高度の専門能力を持った社員、というのが対象になる。
いまの働き方に対して、【残業無制限、深夜勤務無制限、休日出勤はやり放題】を認めれば、経済成長の力になる、とでも思っているのか。
ここに、旧時代産業界の代表の「経団連企業の老朽経営陣」の考え方が、硬直化していることの証明になる。
それを信じ込んで、またまた【若年世代の晩婚化、非婚化、子育て敬遠】の流れを助長する様な【少子化加速政策】を実施しようと言うのだから呆れかえる。
日本の中堅層を担う優秀な人材の「年収1000万円以上」の働き手から、子育ての時間をさらに奪い取り、今の旧時代経営の産業を守って、何が成長戦略だ。
1990年代から、労働強化を図りながら「賃金デフレ」を拡大して、日本の経済を停滞させたことを、早くも忘れている愚かさだ。
本当に優秀な人が必要で、それを達成するために必要な人材ならば、管理職に登用するか、そこまでいかないならば、残業代でも休日出勤手当でも、相応に報いる報酬を支払うのが、経営の神髄である。
それを、「成果に見合った報酬」などの、美名も元に、今より安い報酬で過労死寸前まで働かせようなどと考える、傲慢な経営者を放置する方が、日本経済のためにならない。
そこまで、労働ダンピングをしなければ勝ち残れない経営者は、退陣が運命だ。