今、淡々と展示の準備を進めている。しかし、細々とした作業、そして決して公にしないで裏方として進めるべき作業の類が多く、ブログに詳細を書くのが難しい。もうちょっと全てがはっきりしたら、詳細を書いていきたい。小出しにしてしまうと、私の中のモチベーションが下がってしまうのだ。展示に関しては、プロフェッショナリズムを貫きたい。
特に今はカタログ製作に関するコピーライトの取得や、ネガからのイメージのデジタル化のスキャン作業、カタログテキストの最終調整などに追われている。こういう作業は、個人でやっていると時間がかかってしまうのが問題。。。しかし、ニューヨークの写真家、そして国立国会図書館から第一級の資料のコピーを製作する許可を頂けたことで、歴史的なカタログが作れそうだ。
今日はそんな中、息抜きにダニエル・シュミット監督のドキュメンタリー映画「トスカの接吻」を見る。映画は、イタリアのカーサ・ベルディが舞台。ヴェルディは死の間際、老人向けの音楽家の憩いの家の製作に力を注いだのだが、その音楽家向けの老人ホーム(?)のドキュメンタリー映画がこの「トスカの接吻」である。
美しい映画だった。二人の老いた元オペラ歌手の男性と女性が、一緒にピアノを前にベルディを歌いながら、感極まってお互い手を握ってしまうシーンなど、本当に神々しいまでだった。これぞ、ドキュメンタリー、すなわち、カメラの前で何が起こるか、ということの面白さの醍醐味である。老いる、ということに対して恐怖がある人は、この映画を見たら考え方が変わると思う。一つ、音楽という文化に身をささげた人間が、いかに素晴らしい人生を全うできるのか、の賛歌であった。こんなドキュメンタリーが取れる人は、今いるのだろうか。または、居たとしても、こんな企画は現代では通らないかも(笑)
また、「トスカの接吻」というタイトルも素晴らしい。(トスカの接吻とは、愛する画家を守るために、女性歌手トスカが持ち出したナイフによる殺害のことである)死という、年配の方々が接するリアリティを、若かりし頃トスカを演じたであろう老女が、老いた男性をナイフを持った身振りの右手で刺し殺す、というカーサ・ベルディの日常。そこには、トスカ、というプッチーニのオペラにおける美と恋愛の美しさに囚われた、音楽に身を捧げた老芸術家の、生のほとばしりがある。老人の生をここまで詩的に美しく捕らえたドキュメンタリーは、私は他にはブエナ・ビスタくらいしか思いつかない。マストロヤンニの後期の映画なんかより、よっぽどよかった。
ダニエル・シュミットには以前から興味があったのだが、今回初めて彼の映画を見た。そして、彼のことを少し調べて、シュミットがダグラス・サークのドキュメンタリーを撮っていると知って、俄然興味が湧いた。ダグラス・サークは隠れた名匠として、私が所属していた早稲田のシネマ研究会時代にメンバーの間でかなり話題になっていたのだが、そんな矢先、イリノイ大学留学中にImitation of Lifeを見て、とても影響を受けた記憶がある。私のよくやる、作品を監督のルーツから考える、という行為も、サークから学んだ部分があるように思う。そして、その辺りから、私のドイツや東欧に対する興味が湧いてきたと思う。そういう接続がないと、例えばベケット的な文学の意味、というのは私には理解不能な様に思う。
それはさておき、どうやらマリア・カラスは「トスカ」を演じたら世界一、ということで知られていたのだが、その映像がyoutubeにアップロードされている。ここにおける凄さは、マリア・カラスの歌唱力のみならず、演技力、そして舞台におけるシンクロのレベルの高さではないか。私も生きているうちに、これくらいの芸術作品の高みを味わってみたいものだ。
特に今はカタログ製作に関するコピーライトの取得や、ネガからのイメージのデジタル化のスキャン作業、カタログテキストの最終調整などに追われている。こういう作業は、個人でやっていると時間がかかってしまうのが問題。。。しかし、ニューヨークの写真家、そして国立国会図書館から第一級の資料のコピーを製作する許可を頂けたことで、歴史的なカタログが作れそうだ。
今日はそんな中、息抜きにダニエル・シュミット監督のドキュメンタリー映画「トスカの接吻」を見る。映画は、イタリアのカーサ・ベルディが舞台。ヴェルディは死の間際、老人向けの音楽家の憩いの家の製作に力を注いだのだが、その音楽家向けの老人ホーム(?)のドキュメンタリー映画がこの「トスカの接吻」である。
美しい映画だった。二人の老いた元オペラ歌手の男性と女性が、一緒にピアノを前にベルディを歌いながら、感極まってお互い手を握ってしまうシーンなど、本当に神々しいまでだった。これぞ、ドキュメンタリー、すなわち、カメラの前で何が起こるか、ということの面白さの醍醐味である。老いる、ということに対して恐怖がある人は、この映画を見たら考え方が変わると思う。一つ、音楽という文化に身をささげた人間が、いかに素晴らしい人生を全うできるのか、の賛歌であった。こんなドキュメンタリーが取れる人は、今いるのだろうか。または、居たとしても、こんな企画は現代では通らないかも(笑)
また、「トスカの接吻」というタイトルも素晴らしい。(トスカの接吻とは、愛する画家を守るために、女性歌手トスカが持ち出したナイフによる殺害のことである)死という、年配の方々が接するリアリティを、若かりし頃トスカを演じたであろう老女が、老いた男性をナイフを持った身振りの右手で刺し殺す、というカーサ・ベルディの日常。そこには、トスカ、というプッチーニのオペラにおける美と恋愛の美しさに囚われた、音楽に身を捧げた老芸術家の、生のほとばしりがある。老人の生をここまで詩的に美しく捕らえたドキュメンタリーは、私は他にはブエナ・ビスタくらいしか思いつかない。マストロヤンニの後期の映画なんかより、よっぽどよかった。
ダニエル・シュミットには以前から興味があったのだが、今回初めて彼の映画を見た。そして、彼のことを少し調べて、シュミットがダグラス・サークのドキュメンタリーを撮っていると知って、俄然興味が湧いた。ダグラス・サークは隠れた名匠として、私が所属していた早稲田のシネマ研究会時代にメンバーの間でかなり話題になっていたのだが、そんな矢先、イリノイ大学留学中にImitation of Lifeを見て、とても影響を受けた記憶がある。私のよくやる、作品を監督のルーツから考える、という行為も、サークから学んだ部分があるように思う。そして、その辺りから、私のドイツや東欧に対する興味が湧いてきたと思う。そういう接続がないと、例えばベケット的な文学の意味、というのは私には理解不能な様に思う。
それはさておき、どうやらマリア・カラスは「トスカ」を演じたら世界一、ということで知られていたのだが、その映像がyoutubeにアップロードされている。ここにおける凄さは、マリア・カラスの歌唱力のみならず、演技力、そして舞台におけるシンクロのレベルの高さではないか。私も生きているうちに、これくらいの芸術作品の高みを味わってみたいものだ。
シネ研時代にはまりました。
『Imitation of life』は傑作だよね。
『All I Wish』 だったかな、『わが望みのすべて』、というのもよかったです。
シュミットによるサークのドキュメンタリーは
『人生の幻影』というタイトルでした。見たけど何も覚えてないのが悔しいです。
『トスカの接吻』も忘れているのでもう1回見たくなりました。
しかし懐かしいです。シュミットとかサークとか。
シュミットはスイスの、物凄く育ちのいい人なんだろうなー。
ダニエル・シュミットの映画はアメリカではほとんど紹介されてないみたいで、Netflixにもほとんど入っていません。残念。「人生の幻影」、見てみたいなぁ。
シュミットに関してですが、本国ではどんな評判なのか、今日スイス人の友人たちと飲み会があるので、ちょっと聞いてきます。