Eur-Asia

西洋と東洋の融合をテーマとした美術展「ユーラシア(Eur-Asia)」の開催を夢見る、キュレーター渡辺真也によるブログ。

渡辺真也ロング・インタビュー+日本的イスラーム研究+ネグリ来日中止に思う

2008-03-23 05:49:58 | Weblog
私のロング・インタビュー記事が、Japan Focusに掲載されました。

Into the Atomic Sunshine: Shinya Watanabe’s New York Exhibition on Post-War Art Under Article 9
Shinya Watanabe talks with Jean Downey


記者のジーン・ダウニーさんとコーネル大学のマーク・セルデン教授にはお世話になりました。ありがとうございました。

最近、とても忙しくしている。いろいろな仕事を片付けながら、友人・知人たちが主催しているNYでのイベントにも顔を出している。今週はNYにてアジアン・コンテンポラリ・アートウィークのイベントか多く開催されており、私も関連イベントに顔を出してくる。

先日、MoMAで開催されたレバノン人アーティスト、Akram Zaatariのビデオ・プレゼンテーションを見た後に、MoMAのキュレーターであるバーバラ・ロンドンさんに招かれ、MoMAのバーでアーティストや関係者と食事をしてきた。

その際、私のすぐ隣にいる男性の方と話をした所、その男性がたまたま日本人で、現在大川周明のドキュメンタリーを製作していると伺う。この方は、父の死後、父が大川塾の学生であったことに衝撃を受け、その当時の様子をドキュメンタリーという形で製作したい、と考えたそうだ。

たまたまアジアン・コンテンポラリー・アート・ウィークのディレクターを務めているアフガニスタン人のキュレーター、リーザ・アフマディが近くに居たので、彼女を捕まえて、大川周明という、日本初のコーラン翻訳者であり、戦後A級戦犯となった人物がいるのだけれど、彼はその人のドキュメンタリーを作っているそうだ、と伝えると、とても興味深い話となった。何故コーラン翻訳をしている人がA級戦犯なの?と聞かれ一生懸命説明するが、どうしても歴史背景をかなり知らないと理解が難しいエリアなので、いろいろと困難があった。その隣で、韓国人のキュレーターが興味深そうに話を聞いていたのが印象的であった。

私は、大川周明の弟子である井筒俊彦の仕事に以前興味があり、学部時代に読んだことがあるのだが、井筒氏の主張がどれくらい的を得ているのか、イスラーム圏外の人間として分からない箇所があり、丁度良いタイミングなのでリーザに聞いてみた。

井筒氏はスンニ派とシーア派の違いの一つである、律法学者のであるウラマーとウラファーの話を展開している。コーラン解釈ができるウラファーを擁する文化であったシーア派は、コーラン解釈を禁じたスンニ派とは異なっていて、結果、スンニ派は敏感な点を沢山持っているにも関わらず、それは点としてしか成立しておらず、ウラファーを擁したシーア派は、その点と点を接続する線を作り上げることができ、その地域において芸術や文学が発達することが出来た、そんな話であったと思う。

私はイランで映画があれだけ発達したのは、このシーア派ウラファーの影響があるのではないか、と感じていた。しかし、アメリカではイラン映画を見る機会が非常に少ないのと、アメリカでは世界史と芸術双方に通じている人を見つけることが難しく、話題を共有できなかった。

「私は何故イランがあれだけ上質な映画を作ることができたのか、と考えた際、このウラファーの文学性みたいなものが大きく影響していると思う」、とリーザに言ってみた。すると、「それは面白い。そんなことは考えたこともないし、聞いたこともなり。面白い発見だ」と言ってもらえた。井筒氏の述べている日本的イスラーム研究というのは、もしかしたら凄いものなのかもしれない。

また、スンニ派ウラマーもシーア派ウラファーも律法学者であるから、この話は日本国憲法の話をする上でも有効ではないだろうか。以前話したヴーランヴィリエのフランク帝国の話やイングランドのコモン・ローの話、プロテスタンティズムの話などをまとめれば、何か面白いものになるかもしれない。

そして、その直後に知った、アントニオ・ネグリ来日中止の件、とても残念だ。

私のお世話になっている芸大の木幡和枝さんや池田剛介が頑張っていて、私もレクチャーに関連した英文構成などでお手伝いしたのだが、本当にガックリである。どうして、ビザが出ないのか?危険人物だからか?逮捕歴があるからか?はっきりして欲しいし、その決断をした外務省の責任者は、自身の名前を公表して、公式声明を述べるべきた。これでは、ネグリに対する勘違いをさらに助長させ、「国家反逆罪」という当時のイタリア政府側による発表を鵜呑みにしているだけに過ぎない。同じく、「国家反逆罪」を通告され、死にまで追い込まれたソクラテスを思い出してしまうのは、私だけではあるまい。

その後、リンダ・ホーグランドさんの映画「Wings of Defeat」のプレミア上映会に行ったり、友人のボンがオープンしたGana Artの新しいスペースのオープニングに顔を出したり、昨日はNYUにて開催された砂入博史さんと照屋勇賢さんのトークイベントに参加してくる。イベント漬けの日々であった。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。