穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

北方謙三「逃れの街」

2016-07-28 07:52:02 | ハードボイルド

大分前に北方謙三氏の「檻」のことを書いた。褒めたような記憶があるがはっきりと思い出せない。それで調べたのですが、私としては好意的な書評でした。6年前のことでした。 

日本語のエンタメ(ハードボイルド)業界にこんな文章を書く人がいるんだ、と感心したり驚いたので書評したわけです。小道具の使い方には文句をつけていましたね、すみません、北方殿。

先日不眠症対策でなにかエンタメを買おうと書店をぶらついていた時に書棚から引っこ抜いたのが北方謙三氏の「逃れの街」でした。解説が北上次郎氏。彼は経験上解説の信頼出来る数少ない人です。少なくとも方向性では(つまり良い悪い)。ただ気に入ると手放しの絶賛調になりますが、そこは割り引いて考えれば良い。

それで購入して、とぎれとぎれに最後まで読みました。「檻」と同水準のようです。やはり才能のある人のようです。小道具はいろいろありますが、捨て子のヒロシとの交情は読ませますね。パーカーの「初冬」だったか、同じような逃亡者と身寄りのない小児との共同の逃避行があったのを思い出した。雪に閉じ込められた別荘が舞台だったのも似た設定です(記憶による)。初冬を読んだのは随分古い話でよく記憶していないが「逃れの街」のほうが印象的です。

北方氏は調べてみると無茶苦茶な多作家のようで、ハードボイルドを数冊書いた後では支那の歴史小説に転じたようですが、こちらの方は読んでいません。

文章はいいが、道具立てには凝る暇がなかったのでしょう。もっとも後で書かれた「逃れの街」では大分よくなっています。

 

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