有川 浩著『海の底』 メディアワークス発行 2005.6.30第1刷 1,600円+tax
オススメ度★★★★☆
深海に棲むザリガニに似たエビが何らかの理由で突然巨大化し、横須賀港を襲う。この日たまたま見学に来ていた市内の小中学生を主体にしたグループが逃げ遅れ、自衛隊の潜水艦の中に避難した。この子供たちを二人の若き海上自衛官が守り抜こうと奮闘するのだが・・・。
といったようなとんでもない?SF小説となっている。
だが、登場するのがエビであれ、カニであれ、あるいは他の何であれどうでも良いのである。しょせん何が登場してもあり得ないシチュエーションと思われる。
要は描きたいところは、有事におけるこの国の対応の仕方であって、その際当然にも直ちに出動出来ない自衛隊のジレンマと、到底こんな事態に対処しえない警察の戸惑い、更に両組織の確執について楽しく?語られるわけだ。
これだけでも日本の歪な治安、防衛政策が分かろうというものだ。
神奈川県警本部警備課の古参警部と本庁の異色キャリアとの絡みに加え、ネットの軍事オタクたちとの絡みあまた一段と味を添える。
この作家、ライトノベル作家出身などと揶揄されるが、こと軍事関係についてはなかなか“オタク”ぶりを発揮して面白い。
それと、本作以前に上梓された「空の中」でもそうであったが、こうしたとんでもない事態を発生させる傍ら、描かれるテーマは見事な?“恋愛小説”なのである。
今回登場する男女の主役は、男性は二人の若き自衛官。方や女性は、まだ大人に成りきっていない女子高生である。
二人の凸凹自衛官のコンビのキャラが実に良い。いかにも優男タイプで、女性や子供にそつなく対処できる冬原と、片や口下手で無骨一辺倒なタイプの夏木。
この無骨な夏木と、ちょっとワケあり風の女子高生の間のやりとりが、何とも絶妙で、時に胸キュンとなり、時にイライラ、そして甘く切ないものに展開されてゆく。
女性作家ならではの女性の心理描写には感心するのであるが、一方、男性心理の描写についても実に見事であると思う。
この作者(女性)特有の恋愛の展開が実は僕は大好きなのである。さて、これで長らく読むことを躊躇していた「図書館戦争」シリーズに取り掛かろうかな。
オススメ度★★★★☆
深海に棲むザリガニに似たエビが何らかの理由で突然巨大化し、横須賀港を襲う。この日たまたま見学に来ていた市内の小中学生を主体にしたグループが逃げ遅れ、自衛隊の潜水艦の中に避難した。この子供たちを二人の若き海上自衛官が守り抜こうと奮闘するのだが・・・。
といったようなとんでもない?SF小説となっている。
だが、登場するのがエビであれ、カニであれ、あるいは他の何であれどうでも良いのである。しょせん何が登場してもあり得ないシチュエーションと思われる。
要は描きたいところは、有事におけるこの国の対応の仕方であって、その際当然にも直ちに出動出来ない自衛隊のジレンマと、到底こんな事態に対処しえない警察の戸惑い、更に両組織の確執について楽しく?語られるわけだ。
これだけでも日本の歪な治安、防衛政策が分かろうというものだ。
神奈川県警本部警備課の古参警部と本庁の異色キャリアとの絡みに加え、ネットの軍事オタクたちとの絡みあまた一段と味を添える。
この作家、ライトノベル作家出身などと揶揄されるが、こと軍事関係についてはなかなか“オタク”ぶりを発揮して面白い。
それと、本作以前に上梓された「空の中」でもそうであったが、こうしたとんでもない事態を発生させる傍ら、描かれるテーマは見事な?“恋愛小説”なのである。
今回登場する男女の主役は、男性は二人の若き自衛官。方や女性は、まだ大人に成りきっていない女子高生である。
二人の凸凹自衛官のコンビのキャラが実に良い。いかにも優男タイプで、女性や子供にそつなく対処できる冬原と、片や口下手で無骨一辺倒なタイプの夏木。
この無骨な夏木と、ちょっとワケあり風の女子高生の間のやりとりが、何とも絶妙で、時に胸キュンとなり、時にイライラ、そして甘く切ないものに展開されてゆく。
女性作家ならではの女性の心理描写には感心するのであるが、一方、男性心理の描写についても実に見事であると思う。
この作者(女性)特有の恋愛の展開が実は僕は大好きなのである。さて、これで長らく読むことを躊躇していた「図書館戦争」シリーズに取り掛かろうかな。
図書館シリーズはラヴコメの面ばかりがもてはやされていますけれど、「表現の自由」とか、差別問題に取組み、個人対組織の葛藤なども描いて、いやもう大した筆力です。