min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

日輪の遺産

2006-12-12 22:13:53 | 「ア行」の作家
浅田次郎著『日輪の遺産』講談社文庫 752円+tax

マッカーサーがフィリピン独立のために蓄えた時価2百兆円という金塊を奪った日本軍部は密かに大蔵省に一時預けた。敗戦の色が濃くなりいよいよポツダム宣言受諾がなされる寸前5人の将軍たちは2人の軍人に命じて大蔵省からある場所に秘匿するよう命じた。この財宝は後に日本の復興のための財産であることを意味した。

破産寸前の不動産屋である丹羽は持ち金すべてを賭けて競馬場に臨んだ。大穴狙いである。
馬券を購入しようとした時ひとりの老人と出会い彼のモタつきのせいで自らの馬券を買いそびれてしまう。そんな丹羽に対し老人は責任を果たすといい居酒屋に誘う。
老人はあびるように飲み始め制止したにもかかわらず一冊の黒い手帳を残したまま急死してしまった。
死体安置所にまで付き合うはめになった丹羽であるが彼の元へ市のヴォランティアと称する海老沢と老人が住んでいた家主だという金原という老人が加わる。
残された黒い手帳を読み出した丹羽はそこに書かれた内容に驚愕した。なんと死んだ老人はマッカーサーの財宝を秘匿した元軍人のひとりであり、詳細をびっしりと手帳に書き込んでいたのだ。この事実はどうもココへやってきた海老沢と金原も知っているらしい。
ここから丹羽と海老沢そして金原との膨大な財宝の行方をめぐる攻防が始まるのであった。

浅田次郎特有の途方も無い物語であるのだがそこは浅田ワールド、読者をどんどんその世界に引きずり込む。その力量は他の作家の及ぶところではない。
特にこの財宝をある場所で最終的に運び込むことを手伝わされた35人の女学校の生徒たちの結末はどうなるのか。その驚愕の結末がわかるまで読者は気を抜けなくなる。
最後は浅田節で泣かされるのはいつもの通りだ。わかっていても泣かされる浅田氏には脱帽する。

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1 コメント

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Unknown (ディック)
2007-05-15 17:36:14
手帳を途中まで読んできたとき、あの不動産屋が、読者の代弁をするかのように、「おい、まさかやっちまったんじゃないよなあ」と口走るところがあります。この何ページか前から、読んでいるほうはそれが気になって仕方がない。それを引っ張りながらこの台詞が出てくる。
読者の心の動きを操っているんですから、すごい腕前ですね。
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