min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

有川浩著『図書館危機』

2010-09-22 11:38:39 | 「ア行」の作家
有川浩著『図書館危機』アスキー・メディアワークス発行 2007.3.5 初版 
オススメ度:★★★★☆

シリーズ第三作目の主な内容は郁と手塚の昇任試験を巡るエピソードと「週間新世相」が取り上げた記事で発生した「差別言葉」の問題、更に茨城県図書館で開催される予定の美術展に関る良化委員会との攻防だ。

図書館特殊部隊員である新人二人の昇任試験のエピソードは割愛させていただくとして、今回良化委員会が目を付けたのは図書の内容ではなく、書籍の中で使用される“コトバ”そのものであった。
今回の事例は「床屋」という言葉を取り上げていて、何故これが差別用語であるか読者はあまりピンとこないのであるが、それはそれで別に置くとしても、こんにち我々の日常周囲でも不気味にこの“差別用語”なる規制が急増していることに思い当たる読者も多いことであろう。
規制される言葉の中には、どうして?と首を傾げる事例も多いのであるが、何かこれは意図があって政府が規制してくるのであろうか?
政府そのものではなくとも、“団体”や“業界”なるものから「自主規制」と称していろんな言葉や用語が使われなくなっている。
時に文学的価値すら損ねかねない規制があったりして、どのような基準でもって規制してくるのか訳が分からない場合もある。
「自主規制」と称して何らかの影のコントロールがあると思われる点が不気味だ。

茨城県図書館を巡る紛争は直接的には図書というのではなく、その展示物に係わる紛争である。出版物への検閲にとどまらず絵画や美術の領域まで表現の自由を規制しようというものだ。
“自由”と題するその作品(第一位の作品となった)が良化委員会と想われる制服に穴をうがった向うに側に青空が見える構図を用いて“自由”を希求する作品であることから、良化委員会が黙認するわけがない。
良化委員会は総力を挙げて当該作品の没収に動くものと思われた。茨城県の図書防衛隊の力は完全に今無力化され、攻撃に耐えうる状況ではないことから特殊部隊に応援要請を行った模様だ。
かくして良化委員会と図書館特殊部隊との大規模戦闘が展開されるわけであるが、初めて大規模戦を経験する郁の胸中は戦いそのものへの恐怖や不安ではなく、場所が故郷の街であること、自分の任務がひょっとして両親にばれてしまうのではないか、という恐怖であった。
さて、この激しい攻防戦に突入する郁の運命は?
そして気になるお二人の恋の行方は?ということで読者を大いにハラハラドキドキさせてくれる作品となっている。

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