sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

他人事って・・・

2017-08-16 | 本とか
数年前に処女作の→「こちらあみ子」にものすごく衝撃を受けて、ずっと気になってて
最近も2冊ほど読んですごいなぁと思ってる今村夏子さんが
今回、再びノミネートされていた芥川賞。
今村さんは惜しくも逃しましたが、まだまだ期待したい作家です。
それはそれとして、ある審査員の選評がネット上では随分騒がれていました。
台湾生まれの在日台湾人?の作者の作品に対してのもので、
それは民族や言葉とアイデンティティの問題に揺れる主人公の話のようですが、
その選評がこれ。
「これは当事者たちには深刻なアイデンティティと向き合うテーマかもしれないが、日本人の読み手にとっては対岸の火事であって、同調しにくい。なるほど、そういう問題も起こるのであろうという程度で、他人事を延々と読まされて退屈だった」
(宮本輝・芥川賞選評『文藝春秋』2017年9月号)

詳しくはこちら。→「在日外国人の問題は対岸の火事」
          平然と差別発言を垂れ流した芥川賞選考委員の文学性

この作品の作者も、自分の小説に対する小説としての批判なら
耳を傾ける覚悟はあるというようなことを、ツイッターでつぶやいている。
小説として退屈な小説だった、ならそれは作者の技量不足とか他の問題だけど
日本人には関係ない(関係ないのか!?)問題だから退屈、と言うのには
二重の問題がありますね。
まず、同じ国に住む人の話でもマイノリティの問題は他人事という考え方。
自分のすぐ近くで起こっている日本に深い関わりのあることでも、
自分を含むマジョリティの問題でなければ対岸の火事、
マイノリティが何を悩もうが苦しもうがそれをどう考え書こうが他人事、としか
読めない意見で、差別につながる当事者意識の欠如ですね。
そもそも、人は世界のすべての問題に関わることはできないけど
どんな問題も本来他人事ではないはずだとわたしは思っています。
実際には自分から近い問題と遠い問題というのがあるのは理解するけど、
ここでそれを堂々と日本の人には関係ないと言うのか、と驚きあきれる。

もうひとつは、他人事を書いた小説は退屈という偏狭な考え方。
宮本輝は、ものを作る人でありながらどこまで怠惰な想像力の持ち主なんだろう。
それでは、住んだことのない外国や月や宇宙の物語を読んだことがないのだろうか。
トルストイも、シェイクスピアも遠い昔の遠くの国の物語だから退屈なんだろうか。
他人事がそんなに退屈なら、小説なんかに関わるのはやめて
ひたすら地元の広報誌でも読んでたらいいのに。
自分ちの前の道路をどうするかとか書いてあるし、ゴミ焼却場問題とか、
人口の推移とか、無料検診とか、全部地元のことだから面白いんじゃない?

あ、でもうちの自治体の広報誌、最近頑張っててデザインも中身も
10年前とは別物のようによくなってるのよ。
広報誌をばかにしているわけではありません。笑

現実の世界に学ぶこと以上に、
知らない場所や知らない人や知らないことを、わたしは本や映画で知ったし
良質の作品は本当に最高の先生だったし。喜びだった。
それらが、どれだけわたしの想像力をのばしてくれただろう。

賞に興味がないので、芥川賞でも直木賞でも受賞したからといって
いつも、特に読んだりもしないんだけど、
芥川賞の選考委員には、わたしの大好きな堀江敏幸さんや小川洋子さん
川上弘美さん、山田詠美姉御などがいます。
みんな宮本輝さんのこの意見にはあきれてくれてますように。

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