sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

「こちらあみ子」

2015-04-13 | 本とか
町田康と穂村弘が文庫本の解説あとがき書いてたので、
何となく買ってみたらすごい小説だった。
お風呂で読んでたら止まらなくてのぼせそうになりました。
いや、すごすぎてくらくらしたのかも。
やばい!この小説やばい!と若い子のようにつぶやきながら読んだ。

物語が面白いというわけではないのです。
基本的に、あみ子のキャラの力ですね。
あみ子は知的障害や発達障害があるようで、他の人たちと違います。
家族やまわりは振り回されて、お母さんもお兄さんも壊れる。
客観的にはかなり悲惨な感じになったりして、
それは全部あみ子に返っていくんだけど、それでもあみ子は不幸じゃない。
本人は全然不幸ではないんです。
幸せと思ってるかどうかわからないけど
もし幸せでなくても幸せでないことを苦にしたりはしない。
というか、そもそもそういう概念がないしそういうことを考えない。
状況もわからないし理由も結果も関係もわからないから平気。
ある意味、純粋の塊なんですね。
すがすがしいほど純粋。
それって大変なことです、良くも悪くも。というか、主に悪い方に。
こう書いていいのかわからないけど、普通の人間側から見ると
化け物、というのに近いかも。
無自覚に無邪気に、まわりをどんどん壊してしまう化け物。
切なすぎる。
そういうあみ子のことを淡々と描いた小説です。
うまく説明できないし、この本は誰にでも薦められるものじゃないけど、
わたしは最近一番すごいと思った小説です。

穂村弘の解説を読むと、どんな話なのかよくわかりますが、
町田康の解説を読むと、どんな話なのかということよりもっと根本的に
一体どういうことなのかが、少しわかります。
町田康の解説、全部引用したいけど長いので、穂村弘の解説を少し。
(町田康の解説だけでも、みんな本屋さんで読むといいよ)
主人公のあみ子には前歯が3本無い。ありえない、と思う。だって、二十一世紀の日本女性は脱毛処理が不完全なだけでNGなんでしょう。あみ子は十年近く片思いをしている相手の苗字を知らなかった。ありえない。私は一度も会ったことのない芸能人の飼い犬の名前を知っている。
あみ子は「ありえない」の塊だ。金魚の墓の横に弟の墓を作ってしまう突き抜け感に「長くつ下のピッピ」を連想する。でも、あれは童話で、ピッピには世界一の怪力という武器があった。あみ子には何もない。………ただ「ありえない」の塊のようなあみ子を見ていると勇気が湧いてくる。逸脱せよ、という幻の声が聞こえる。でも、こわい。(穂村弘)

「ピクニック」と「チズさん」という短編も入っていますが
どちらも壮絶に切ない。いやはや。
この本で三島由紀夫賞をとったそうですが、さもありなん。
「こちらあみこ」今村夏子/ちくま文庫

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