sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:あの日のように抱きしめて

2015-10-15 | 映画


あるとき外でご飯食べてる最中に、映画をよく見る友達から
これ見て!絶対見て!と、なんだか興奮した感じのメールがきて、
どうやらこの映画を見た直後に興奮して送ってくれたみたいなんだけど、
その友達にそこまで言われたら見ないわけにはいかない。と、見てきた。

本当は。ナチスものは、もうあんまり見たくないんですよね。
今までにすでにたくさん見たし、映画として好きなものもあるけど
やっぱり気が滅入る。気が滅入る映画もかなり見ますが
ナチスものの気の滅入り方にも、飽きたというかうんざりしたというか。
だから、予告見てもなんだかそそられなかったのです。

映画は少しサスペンスっぽく描かれているけど、設定にはかなり無理があります。
それが気にならないくらいにいいところもあるので、
気にしないようにと思ったけど、やっぱりそこは、わたしは気になりましたね。

ナチスのユダヤ人収容所から生還したヒロイン。
暴行?による怪我で、顔がすっかりめちゃくちゃになってしまい。
新しい顔にしてもらうことに。
どんな美女にもできるという医者に、できるだけ元の顔に戻して、と頼むけど
傷はきれいに治っても、元の顔と同じにはならず
別れ別れになった最愛の夫を探したいヒロインは満足できない。

と、ここまででも、戦後すぐの時代に、これだけの傷を傷跡もなく
きれいに作り直せるのかと思うと、気になって気になって。笑

さらに、そのうちに元夫を見つけるんですが、
元夫は彼女の顔が違ってるので彼女だと気づかないで、
死んだと思ってる妻の遺産をだまし取るために妻に化けてくれという。
その後、長い時間一緒に過ごしながら
奥さんになりきる練習をさせるんですけどやっぱり気がつかない。

体型とか動き方の癖とか、声とかしゃべり方、髪の色、質、
収容所体験で色々変わったとしても、わからないはずないと思うけどなぁ。
例えば友達を思い浮かべても、
もし顔が変わっても絶対しばらく一緒にいたら気がつくと思います。

いや、夫は薄々気づいていたのだ、という意見もあったけど
ラストまで見ると、やっぱりそれはないなぁと思う。
と、こういうとにかくありえない設定のことを考えないようにすれば
かなりいい映画なのですけどねぇ。

妻が夫を思う気持ちはすごく強いんだけど
夫の方は妻をどれくらい愛してたのかは、最後までわかりません。
ユダヤ人の妻を妻を騙したのか、ナチスに売ったのか、疑惑を抱くわけだけど、
それに関しては微妙な描き方だけど、ラストの方のパーティで
夫の身内の浮かべる引け目や罪悪感?のある表情や、
事実を知った夫の驚きなどで、ある程度の答えは出ます。
ただ、妻の望む答えは裏切られたかどうか自体より、
では、自分は愛されてなかったのか?というところかなぁと思う。
あまりに愛が深いと、裏切りでさえ許せるかもしれないけど、
愛されていないということの方が耐え難いのではと思う。

わたしとしては、夫は妻を、それなりには愛していたのだと思いたいです。
裏切りや、隠蔽、詐欺とかの中で、愛なんてちっぽけなものに見えそうだけど
保身や欲のために裏切りがあったとしても、
やはりどこかに愛と痛みはあったと思いたいなぁ。

この映画の監督と主演男女は「東ベルリンからきた女」と同じ組み合わせで、
監督はこの俳優たちのことをよくわかってとても上手く使ってる感じがしました。
この女優さん、少し年は取っているけど、すっとして綺麗な人です。
夫役も、なんだか不思議な明るさと暗さのある、どこか魅力のある人で
妻がこの夫をなんでそこまで愛したのか、
さっぱりわからないという風にはなっていません。
愛し合った時期があったのだなと思わせます。
妻には元々財産があったので、そもそも夫は結婚する時点から
財産狙いだったのではという考え方もできないではないけど、
いややっぱりきっと幸せに愛し合った時期があったんだろうと思わせる
陰影のある役を演じていました。

わたしが一番心に残ったエピソードは
ヒロインの友達で、ヒロインを保護し世話をする女性レナの部分。
パレスチナでのユダヤ人国家建設の理想を持って、移住する計画を温めていますが
けっきょく実現せず、悲しい結末になります。
相手が不実でも卑怯でもなんでも愛する対象がいたヒロインと違って、
ユダヤ人の国という理想は、彼女にとって
心の支えにはならなかったのでしょうか。
これから幸せになることもできる時代がくるのに
幸せになることからさえ降りてしまった彼女の、その絶望の深さに
うちのめされました。

あと、最後になったけど、本当は最初から言うべきこと、それは
この映画の音楽です。
クルト・ヴァイルの名曲「スピーク・ロウ」が物語の中でも
とても重要な役目を果たします。
ラスト付近でのストーリー上のその役割とは別に、バックにも何度か流れますが
この音楽と映画が、離れがたく結びついていることで、
この映画は何倍にも素晴らしくなっていますね。
音楽の使い方がものすごくいい映画です。
しばらくこのメロディが頭方離れませんでした。


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