sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:野良猫

2013-12-06 | 映画
森繁久彌と乙羽信子主演の古い映画。
1958年の黒白映画。

この映画は宝塚で撮られたもので
二人が線路自殺をしようとするシーンのために
阪急から枕木などを借りてスタジオに線路を敷き詰め、
このセットを見た森繁を「会社を潰す気かいな」と仰天させたとか。
今回の宝塚映画は、近藤司さんと言う美術監督の特集で
素晴らしい仕事をされた方だったようです。
この時代の映画は、今では難しいような
セットにも注目してみてみたいですね。

遊郭から逃げ出してきた乙羽信子。
なんとか仕事を見つけようとするけど
男たちにいいように騙されて
え?え?ええー?と驚くほど簡単に弄ばれて放り出される、
それが1日のうちに何回もですよ。
体がもたんわ、と同情しつつあきれつつ見てると、
彼女は疲れながらもしぶとく飄々としてて、
そういうことさえ、たいしたことじゃないくらいの
ひどい人生を歩んできたんだなぁとわかる。
そうしている間に、昔いた遊郭の主人だった森繁と出会って
森繁も、ろくに働かず猫を捕まえて売っては
何とかしのいでいるような極貧暮らしで、
いっそ一緒に死のうと言う話に。
あれは痛い、あれは難しいということで
結局線路で電車に轢かれることに決めるけど、
タイミングが合わなかったりなんだで、中々死ねず・・・という話。

極貧の暮らしが描かれるこういう映画は
今からは中々想像もできないくらいの本当の極貧なのに
やっぱりどこか呑気なのは、大阪だからなのかこの時代の空気なのか。
これ以上ないくらいの悲惨さなのに、絶望の中にも
なんだかユーモアがあるんですよねぇ。
なんだろうこれ。
去年見た映画でも同じようなことを書いたけど。
何も持たない絶望というのは、案外強いものなのかな。
絶望が溢れかえってた時代だから
それに慣れていたのかな。
とにかく、興味深いことです。

そして、もうね、森繁久彌の出てる古い映画は
彼のダメさを楽しむだけで、もう全部いいです。
彼の若い頃のダメ男役のうまさは尋常じゃない。

昨日の桂春団治の感想で書いたように
役そのままの人であったようですが、それにしても、
この映画では、ダメ男ながらも、なんだか気持ちのやさしい
ユーモラスな人物で、そういうユーモアを醸し出す間の取り方がもう
天才ですね。
去年見た森繁映画「雨情」の感想


乙羽信子もいいですねぇ。
まん丸な顔で、少し崩れた汚れ役をやってて
こんな汚れ役、宝塚の娘役出身でもするんだ!と驚きつつ
上品でない大阪弁の言い回しの
ふてぶてしさ、しぶとさ、愛嬌などを
堪能しました。いや、これもいい映画。


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