とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

もう一本いかがです?

2011-12-21 23:16:15 | 日記
もう一本いかがです?



 ゴトン、ゴトン、という音がして、私が出てきたものを取り出すと、「もう一本いかがです?」という声が聞こえた。私は慌ててボタンを押した。するとまた、ゴトン、ゴトン、という音がした。取り出すと、「ありがとうございます。」という爽やかな女性の声か流れてきた。
 自販機で追加サービスを当てたのは初めてだった。私は子どものように嬉しくなった。「もう一本いかがです?」。素晴らしくいい響きの声。私は内蔵された自販機の女性の音声に癒されて至福の気分を味わった。機械に癒される?!。まことに寂しい話であるが、肉声より数段心の奥に染みこんだのである。バーチャルなものに癒されるということは、それだけ孤独の度合いが深化しているということか。いや、また難しい話になりそうなので止めるが、ここのところ滅入っていた私が元気になったことは事実である。



 例えばこのような絵を見ても大変癒される。これはだれでもそうだろう。
 誰の絵?? モネ??
 いやいや、フランス印象派のモリゾ(1841-1895)である。ブールジュ出身の女流画家。マネの弟ウジェーヌと結婚し、しばしばマネの作品のモデルにもなっている。
 そんなことを考えていたら例の長柄さんから電話があった。

 例の空き家の活用について名案は、・・・いやね、これは向こうの家族には話していないんだけど、何かあそこで活動をすればどういうリアクションがあるだろうかと思いましてね。

 えっ、活動ですか。

 そうです。

 すると私は、つまり、追い出されるんですか。

 いやいや、一緒にやりましょう。

 貴方の気持ちがよく分かりませんが。

 古民家の活用ということが今流行ってますね。

 ええ、それはそうですが。

 だからね。貴方と彼女の共通の趣味である絵画に関したことでも、・・・。

 ・・・。

 アトリエとして使ってもらい、絵の展示スペースとして活用するとか。

 アトリエ!!

 ええ、例えばです。私は長柄さんのこの前の「試す」という言葉の意味が少しずつ分かりかけてきたような気がした。

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